Interview

東海大学付属市原望洋高等学校 島 孝明投手「プロでは何事も継続できる投手でありたい」

2016.10.25

 今春の千葉県大会で153キロを記録し、一躍、ドラフト戦線に名乗りを挙げた島 孝明投手。東海大市原望洋ではどのように3年間を過ごしてきたのだろうか。

何の根拠もなかったけど、150キロを投げられるものだと思っていた

東海大学付属市原望洋高等学校 島 孝明投手「プロでは何事も継続できる投手でありたい」 | 高校野球ドットコム

島 孝明投手(東海大学付属市原望洋高等学校)

 高校入学時から「何も根拠はなかったんですけれど、150キロは投げられるものだと思っていました」と話す島投手。彼が東海大市原望洋の門を叩いたのは、中学時代に所属していた佐倉シニアの監督から勧められたからだった。
「進路をどうしようかと悩んでいたんですが、その時に『東海大市原望洋は育成が上手だ』と聞いて、進学することを決めたんです」

 入部当初は環境の変化に戸惑った。
「シニアとは違って、毎日、練習があったのでキツかったです。練習は16時から18時半くらいまでなんですが、通学に1時間半かかるので、そちらも大変でした」

 そんな状況下でも、早くから頭角を現していた島投手は1年生ながら夏の甲子園出場を果たしたチームの一員としてベンチ入り。登板はなかったものの、大舞台の空気を味わった。また、球速はMAXで139キロを記録。ただ、これでも本人的には「球速は伸び悩んだ」のだという。そして、1年冬からウエイトトレーニングに取り組むこととなったのだが、「中学時代は走るだけで、ウエイトはやっていませんでした。高校1年の冬から本格的に始めることになったのですが、ウエイトは好きじゃなかったですし、当時はまだ効果があるのか半信半疑なところがありました」

 こうして中途半端な心境のまま、練習に打ち込めずに2年生になってしまうと、昨年はケガに悩まされることも多くなり、満足なシーズンを送ることができなかった。それでも2年秋には148キロまで球速は上がったが「ストレートはただ速いだけのボールでした」と振り返る。そして、2度目のオフシーズンを迎えたところで、ケガの予防も意識して積極的にウエイトトレーニングに取り組み始めた島投手。これが翌春の飛躍につながった。

「チーム全体でスクワットやベンチプレスをやっていたんですが、この時、ダンベルの方が鍛えたい部分を集中的に鍛えられるような感覚があったので、自分はバーベルよりもダンベルを使う事の方が多かったです。それで、背筋やハムストリングを中心に鍛えてトレーニングをしていました」

 また、2月頃に左足首を捻挫したことでトレーニングの比重はさらに高まった。
「1年の時は投げ込みもしたのですが、それもできなくなったので、とにかくウエイトと体幹トレーニングに励みました。体幹トレーニングでは足にボールを挟んで腹筋、背筋を100回。あと、体をねじった状態にして1分間キープするのを5セットとか、いろいろやっていました」

[page_break:春で大ブレイク 防御率0.00で終えた夏]

 同時に体調管理にも気を遣った。「睡眠はなるべくたくさんとるようにしていましたが、それよりも大切だと思っているのがストレッチ。寝る前には必ず毎日30~40分かけて、全身くまなくやっています。それから、食事面では親が栄養士の資格を取って協力してくれていて、五大栄養素をバランス良く摂るように意識しました。元々、苦手だった野菜も工夫してメニューに取り入れてくれて食べられるようになったので、とても感謝しています」

春で大ブレイク 防御率0.00で終えた夏

東海大学付属市原望洋高等学校 島 孝明投手「プロでは何事も継続できる投手でありたい」 | 高校野球ドットコム

島 孝明投手(東海大学付属市原望洋高等学校)

 ひと冬を越えて体重は77kgから82kgになり、服のサイズも変わっていたという島投手。一回り大きくなった体で春季千葉大会の3回戦・市船橋戦に登板すると、この試合で自己最速の153キロを計測。入学時、なんとなく出るだろうと思っていた150キロ超えは現実のものとなった。
「実際に150キロを超えた時は、やっぱり嬉しかったです。それに球速はもちろんですが、ボールのキレがまったく違っていたので、春はバットに当てさせないつもりで投げていました」

 東海大市原望洋春の千葉県大会優勝関東大会でもベスト8まで勝ち上がった。
「春は調子が良かったと思います。ケガの影響で投げ込みはできていませんでしたが、元々、コントロールには自信がありますし、変化球はスライダーとたまにカーブを投げるくらいでしたが、ストレートだけでも十分、抑えられるという手応えがありました」

 また、関東大会が終わってからは夏に備えて走り込み、スタミナアップに励んだ。
「ポール間を30本、全力で走ったりしていました。それから、暑さに弱いタイプなんですが、首の筋力を鍛えると暑さに耐えられるようになると聞いて、トレーニングコーチにメニューを組んでもらい、首を回したり、肩にくっつけるように傾けたりするトレーニングを始めて、それは今も続けています」

 そして、「最後の大会なので、悔いが残らないように楽しくやろう」と思って臨んだ夏の千葉大会。最初の登板となった4回戦日大習志野戦は、先発して5回を投げて2安打無失点。9奪三振無四球の好投を見せた。

「その頃は周囲からかなり注目されていましたし、3年生のエースとしての責任も感じていました。だから、すごく緊張した記憶がありますし、もしかしたらこれまでの人生で一番だったかもしれません。内容に関しては、高めの変化球を打たれてしまったので、きちんとストライクからボールになるように投げなければいけないという課題は残りましたが、ストレートは悪くなかったと思います」

 続く5回戦の流通経済大柏戦は救援で1イニングを投げてきっちり0に抑えると、準々決勝では優勝候補筆頭の木更津総合と対戦。出番が回ってきたのは7回途中からだった。
「1点リードされていたのですが、『まだ、いける』という気持ちだったので、やるべきことをしっかりやろうと思ってマウンドに上がりました」

[page_break:目指すは低めに伸びるストレート]

 一死二塁の場面での継投だったが後続を打ち取ってピンチを切り抜けると、2回2/3を投げてノーヒットに抑えるピッチング。球速もこの夏初めての150キロをマークしたが、チームはそのまま0対1で敗れてしまった。
「9回表のマウンドに立った時、『これで終わるのかな』と少しさみしい思いがしました。でも、150キロが出ましたし、自分の力は出し切れたかなと……。負けた瞬間は、意外とすっきりとした気分だったのですが、ベンチ裏に下がってチームメートみんなの顔を見た時に涙がこみあげてきました」

目指すは低めに伸びるストレート

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島 孝明投手(東海大学付属市原望洋高等学校)

 結局、防御率0.00のままで敗退となったが、「投球回数がそれほど多くなかったですけれど、無失点は自信になりました」。こうして高校最後の夏が終わった島投手だったが、彼の夏には思いもよらない続きがあった。U-18アジア選手権に出場する侍ジャパンU-18代表に選出されたのだ。
「甲子園に出場できませんでしたから、選ばれるとは予想もしていなかったので本当に驚きました。日本代表のユニフォームを着るなんて夢のようでしたし、自分でいいのかなと思っていました」

 アジア選手権では1次ラウンドの香港戦に登板し、2回を投げて5奪三振のパーフェクトピッチング。
「夏よりも良い状態で、ストレートを投げた時、ボールに力が伝わっている感覚がありました。国際大会は独特な雰囲気がありましたが、あまりプレッシャーを感じずに、自分の世界で投げることができたと思います」

 東海大市原望洋で貴重な経験をしてきた島投手。3年間を振り返って、成長したところとしては「中学時代は闇雲に練習していただけでしたが、高校に入ってトレーニングコーチに指導してもらってからは、こういう練習をしたらこういう効果があるんだと理屈を踏まえて練習に取り組むことができるようになりました。いろんな知識も増えたので、それまでとは違った視点で野球を考えるようになったと思います」という点を挙げた。

 そして、先日行われたドラフト会議では千葉ロッテマリーンズから3位で指名。
「春に153キロを出してからメディアにも取り上げていただくようになり、『もしかしたら行けるんじゃないかな』とプロを意識するようになりました。自分のセールスポイントはストレートですが、スピードばかりが速くても打たれてしまっては意味がないので、これからも質を高めていって低めでも伸びていくようなストレートを投げていきたいです。そして、高校では先発を任されることが多かったのですが、上のレベルでプレーするうえでは、どれだけ活躍できるかという勝負になるので、先発でも救援でも与えられた場所でしっかりと投げられたらと思っています」

 インタビュー終了後、色紙に好きな言葉を書いてもらったのだが、彼が書き記した言葉は「継続は力なり」だった。

「何事も継続してやっていくのは難しいですが、それでも続けられるかどうかで差が生まれていくのだと思います」

 これから長く続いていく島投手の野球人生には、自らを戒めるこの言葉が常にその傍らにあるのだろう。

(文=大平 明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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