試合レポート

嘉手納vs興南

2016.07.10

嘉手納が昨年秋のリベンジを果たし2年振り7度目のベスト8

嘉手納の大黒柱仲地玖礼は、1点を先制された8回といい、あわやというところまで追い上げられた9回といい最後の最後まで冷静沈着だった。

■試合を押し気味に進めた興南

 試合は興南が押し気味に進めた。無得点に終わったが1回、吉澤誠矢のヒットと具志堅大輝の四球で一・二塁とすると、4回にも四球と犠打で二塁へ進める。

 惜しかったのは5回。高那峻〔たかな・しゅん)がライト線を破る二塁打を放ったが、送りバントがベースの上で跳ねてしまい、キャッチャーからサードへ送られタッグアウトになってしまった。嘉手納は1,2回にヒット1本ずつ出るも3回から6回までは三者凡退に終わるなど、低めを丁寧につく比屋根雅也の前に4割近かった自慢の打線は沈黙したままだった。

■ついに破れる均衡!興南先制

 8回表のボードにもゼロが刻まれ延長も予想されたその裏、ついに均衡が破れる。

 興南先頭打者として打席に立ったフルスイングが身上の上原麗男の打球がレフト線を襲う。二塁を陥れたあと具志堅大輝のライトフライの間に悠々と三塁へ達した。名将我喜屋優監督が、スクイズのサインを出すのかどうかに注目が集まる中、道租土琉一(さいど・りゅういち)が決めて喉から手が出るほど欲しかった1点が入った。

 あとは8回まで僅か3安打に抑え、二塁と三塁を踏ませたのが僅か1イニングしか無い見事なピッチングを見せていた比屋根に任せるだけのはずだった。


■回り込む練習の成果が発揮される

 ところが9回表、誰もが予想しなかったことが起きる。先頭打者をショートゴロに斬った比屋根だが、これが悪送球となり一塁に走者が残った(代走松田幸太)。だが、嘉手納ベンチは送りバントのサインを出さず4番の一振りに賭けた。

 振り切った知花拓哉の打球がレフトの頭上を襲う!快速を飛ばした松田は三塁を蹴って本塁へ。しかしこれは明らかな暴走であった。完全なアウトのタイミングのはずだったが、様々な要因が重なることで起こるはずの無いことが起こってしまった。

■悔し涙で比屋根の夏が終わった

 少し整理してみよう。無死一塁からレフトへ長打が生まれたので三塁塁審は外野へ走り主審は三塁へ走らねばならない。一塁塁審は打者走者の空過を確認し本塁へ向かうため、三塁側のファール地域に回り込むことは中々出来ず、結果キャッチャーの背後方にてジャッジせねばならなかった。

 加えて、中継の送球を捕球したのは捕手の宮里大湖ではなく、彼の前にいた比屋根だった。闘志を前面に出す彼だからこそ、歴戦をくぐり抜けてきた彼だからこそ、体が勝手に動いてしまったのか。

 カットした比屋根は走者の前に立ち塞がったが、走者は練習で培った技術とその身体能力の高さを見せてかいくぐる。両手でタッグに行く比屋根。ジャッジは「セーフ」。だが比屋根は納得のいかない顔を見せた。高校野球では好ましく無い態度だったかも知れないが、確信に満ちた者だけが見せる「何故?」という、高校生の純粋な意思表示だった。

 これで試合は一旦中断するも、ジャッジは覆らない。その後、切り替えて投球する比屋根だったが、それが通じるほど高校野球は甘い世界ではなかった。

 二死一・三塁と変わって嘉手納の8番大城堅斗が、逆らわない見事なバッティングを見せる。ライト前へ弾む間に三塁走者が生還し嘉手納が見事な集中力で土壇場で逆転したのだ。

 その裏、興南も粘りを見せ二死二・三塁として先ほどの打席で二塁打を放っている上原へ回す。これ以上ないボルテージを上げるスタンドにあって、マウンドの仲地だけは別世界にいるかも思うほど冷静さを保っていた。

 内野フライに打ち取りゲームセット!昨年秋の県大会準決勝で敗れた興南に見事リベンジを果たした嘉手納が、2年振り7度目の準々決勝進出を果たした。

 一年生中央大会で優勝したナイン。ここまできたら頂点しか見えない!嘉手納が初の準決勝、決勝への進出と頂点を目指す!

(文=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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