試合レポート

26人もの新入生が入部した都立杉並は夏の台風の目になるか!? OBの母校訪問で部員不足の都立高の未来に一石

2024.06.03


アップする都立杉並の選手たち

<交流試合:都立小岩2-1都立杉並(5回打ち切り)、都立杉並20-6都立小岩>◇1日◇都立杉並グラウンド

近年、多くの公立校野球部にとって、部員確保はとても大事な要素となっている。多くの場合は2ケタ、10人以上の新入部員を得られれば、まずは「良かった」ということになる。もちろん、それは1学年だけでチームとして試合をすることが可能になるという意味もある。

ここ10年くらいで、全国的な傾向として高校野球部員の減少が進んでいる。その理由の1つとしては少子化ということもあるだろう。また、社会的にも言われることとして「子どもの野球離れ」ということもあるかもしれない。そんな社会状況の中でも、各校の指導者は、部員確保に対してあの手この手で、様々な努力、創意工夫をしてきている。

この春、都立杉並には新入部員が26人も入った。小林 研一郎監督が可能な範囲で尽力した結果でもあった。もちろん、その要素の1つとしては、昨夏の西東京大会で東農大一を下すなど、ベスト16に進出できたということも大きいのは確かだ。

「やはり、チームとして実績を挙げていくということは最大のアピールになる」

そんな思いは強い。それだけに、この春に都大会進出を逃したのはちょっと痛かった、ということにもなる。

実は、それ以上に、新入部員増加の要因として挙げられることがある。入部した現役部員たちへ向けて、積極的に母校の中学校へ現状報告として「母校訪問」を奨励していたのだ。小林監督が異動して今年で4年目というが、赴任してきた当初から、この制度に積極的に取り組んできたという。

卒業生が母校へ行った際に、今の都立杉並での明るく活動的に振舞えている今を報告していくことで、中学時代の恩師たちは教え子の成長を感じるであろう。その際に、都立杉並野球部の資料なども配布し、中学生たちに広く意識をさせる努力もしている。そんな話を聞く後輩たちは「それならば、自分も杉並で野球をやってみよう」というモチベーションにはなるだろう。

また、小林監督は、「この学校の雰囲気と、地域性もあって、集まりやすいのではないのかなと思います。それに、卒業生が母校に行って話してくれることで、より杉並のイメージがよくなっているのではないかと思います。また、学業成績での入試のハードルも、そんなに高いわけではありませんから、生徒たちは来やすいと思います」というように分析している。

そんなこともあり、現在は3年生12人、2年生14人、そして1年生が26人という部員が集まっているのだ。都立校としては選手52人にマネージャー7人という部員数は、かなりの大所帯と言っていい。

小林監督は、「当初はそうでもなかったかもしれませんが、今年の1年生は、ある程度野球目的で杉並を選んできてくれています」とも言う。必然と、選手の質も高くなってきている。そんな中で競争することでチームも底上げされていくということになるのだ。都立杉並には、いい循環が起きていきそうである。

また、小林監督の都立昭和時代の後輩にあたる金子 大樹助監督も、「都心の都立校としては、ある程度の広さのあるグラウンドもありますし、周囲からの苦情もありません。環境としては恵まれているということもあるのではないかと思います」とも言う。それに、吹奏楽部が都立校としては都内有数のトップレベルでもあり、夏の大会などを観戦に来た中学生などは、その演奏の迫力にも気持ちを動かされて「ここでやってみよう」という気持ちが強くなるのではないかとも見ている。

そうした環境整備が進んでいきつつある都立杉並には、この夏、さらにはその先の新チームへの期待は高まる。

さて、この日行った練習試合の相手となった都立小岩の茶川 剛史監督は、小林監督と同世代で、都立城東の主将だった2001年夏に東東京代表として2度目の甲子園出場を果たしている。都立小岩のある東京下町には、都立城東をはじめとして、都立江戸川都立紅葉川都立葛飾野都立篠崎など、熱心に野球部活動に取り組んでいる「中堅都立校」は多い。中学生たちにとっては選択肢が多いということになるが、そんな中で今年も10人を確保するなど、今の時代で公立校としては健闘している方ともいえる。

今春も都大会進出を果たし、1回戦で豊南には敗れたものの延長タイブレークまで粘った。ある程度の力はあるチームという印象はあった。

しかし、この日はメインとして戦った2試合目で、投手陣の制球が崩れ、5人で20四死球。さすがにこれでは、手の施しようがなかった。「反省材料だらけですよ」と、茶川監督は夏の本番へ向けて、もう1度引き締め直す覚悟である。

5イニングで区切った1試合目で、都立杉並は7人の1年生を起用した。ミスもあったが、それぞれがいいプレーも見せていた。続く2試合目では、それに刺激を受けた上級生が大量点を奪って大勝という形になった。

戦力的には、高杉 柊太内野手(2年)と上野 翼内野手(2年)の三遊間がしっかりしている。ともに2年生だが、チームの中軸を打てる。また、昨夏のベスト16のメンバーで、この日7イニングを投げた渡邉 涼投手も経験値の高さを示す落ち着いた投球を見せた。春季大会の本大会出場はないものの、夏の台風の目になれる可能性も十分に秘めていそうだ。

この記事の執筆者: 手束 仁

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