試合レポート

北大津vs滋賀学園

2014.05.06

敬遠?それとも勝負?

北大津vs滋賀学園 | 高校野球ドットコム 

完封した松田勝造(北大津)

 8回裏に挙げたわずか1点で勝利した北大津。試合後の宮崎裕也監督の第一声は、「貧打線ですね」だった。
確かに宮崎監督の言葉の通りの展開ではあった。お互いにチャンスがありながら、あと一本が出ない。

 ただ、『貧打線』の裏側は『投手戦』である。
先発した岡田勝造(2年)は、相手の滋賀学園山下奨莉(3年)と、我慢比べの投手戦を演じていた。「味方が点を取ってくれるまでは」と自分に言い聞かせていたという岡田。

 その願いがかなったのは、8回裏のことだった。ここが勝負のポイントである。
北大津は先頭の9番川本大貴(3年)が、相手ショートのエラーという形で出塁した。この試合で先頭打者が出塁したのは、3回目。そのうち2回は送りバント、残りの1回はバスターでダブルプレーに終わっている。次の1番神田龍也(3年)と、どう対するのか。滋賀学園サイドは様子を伺った。

 ただ、神田に対して3球連続でボール。これで北大津の宮崎監督は、「3ボールから走れ」という策に出る。3ボール0ストライクからの4球目、川本はスタート。投球がストライクゾーンにきたため、神田は手を出し、ショートへと飛ぶ。走者がスタートをきったため、ポジショニングを変えていたことが幸いし、内野安打となった。


北大津vs滋賀学園 | 高校野球ドットコム 

笑顔でベンチに戻る山田快(北大津)

 一、二塁となって、続く2番松川健太が送りバントを決める。これで一死二、三塁。打席には3番山田快(3年)が入った。

 ここで守る滋賀学園サイドは思案をする。キャッチャーの中村迅斗(3年)がマウンドへ向かい、山下と打ち合わせをおこなった。4番の杉原竜希(2年)はこの試合2安打と当たっている。そしてカウントによってはスクイズも考えられる

 『山田を歩かせて塁を埋めるのか、勝負をするのか???』

 1球目、バッテリーはスクイズ警戒のピッチドアウトではなく、敬遠を示唆するウエストボールだった。
しかし2球目、一転してスライダーを投げてストライクを取る。これを見て、打席の山田は、「勝負をしてくると思った」という。

 そして3球目、打席の山田に来た球はチェンジアップだった。「ストレートを待っていたので、崩されました」という山田の打球はショートゴロ。しかし抜群のスタートをきっていた川本が本塁を陥れ、内野ゴロの間という北大津にとってはラッキーな形で、ついに1点が入った。

 ベンチに戻って、チームメートから祝福を受けた山田。「岡田が頑張って投げてくれていたので、何とか1点を取りたかった」と笑顔を見せた。

 逆に滋賀学園バッテリーは、相手を考えさせようと1球敬遠のようなウエストボールを投げて、一転して勝負。狙いは良かったが、このイニングでミスとポジショニング変更の間に内野安打を許したショートに飛んだことは、勝負の場面でのツキがなかったのかもしれない。さらにカウントが1ボール1ストライク。歩かさずに勝負をすると決めたからには、やはりストライクがほしいカウントだった。

 ただ、強かに攻めるという観点では、もう1球、“敬遠を示唆するウエストボール”を投げていれば、打者心理は変わっていたかもしれない。そう考えることもできた、山田との勝負であったように思う。

 この1点に勇気をもらった北大津の岡田は完封。準々決勝で近江を完封した左腕の大村涼兼(3年)に続いた。
大村の完封を「刺激になった」という岡田。特に9回は、さらに気合がこもり、「2アウトから四球を出そうものなら、ピッチャー交代を考えた」という宮崎監督をだまさせる見事なピッチングを見せた。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.28

【大分】佐伯鶴城は4戦3勝、杵築は4戦で1勝<強化試合>

2024.05.28

春の福岡地区を制した沖学園(福岡)、勝利のカギは異例の「決勝直前沖縄合宿」だった

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】錦江湾が1点差勝利!出水工の追い上げ、あと1点及ばず

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】川内商工が2試合連続逆転サヨナラ勝ち!雨のため2試合が継続試合

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商