Column

田中兄弟をプロに輩出した相模ボーイズの「負けたら良し」の精神

2021.06.09

 広島東洋カープの田中 広輔選手(東海大相模出身)や、その弟の横浜DeNAベイスターズの田中 俊太選手(東海大相模出身)、東北楽天ゴールデンイーグルスの横尾 俊建選手(日大三出身)などをこれまで輩出したのが、厚木市三田の専用グランドで練習を行っている相模ボーイズだ。

 今年の選抜甲子園大会では、東海大相模小島 大河選手も決勝戦でサヨナラタイムリーを放つなど活躍を見せ、その他にも日大三で活躍した金成 麗生選手(トヨタ自動車)や東海大学を主将として引っ張る門馬 大選手(東海大相模出身)など、多くの選手が相模ボーイズから巣立っていった。

試合に勝てればいいし、負けたらさらに良し

田中兄弟をプロに輩出した相模ボーイズの「負けたら良し」の精神 | 高校野球ドットコム
相模ボーイズの練習の様子

 中津川大橋のすぐ下にある中三田グラウンドは、橋が雨よけになるスペースもあり雨の日でも練習することができ、また真夏でも日陰になるため「練習環境はとても良いです」とグラウンドを紹介する岩永一志監督。元々は神奈川工科大学のサブグラウンドを使用していたが、グラウンドの閉鎖に伴い10年前に新たに練習グラウンドを開設。

 輩出したプロ野球選手として紹介される田中 広輔選手、田中 俊太選手、横尾 俊建選手の「特大ボード」に見守られながら選手たちは練習に打ち込んでいる。

 チームを率いる岩永監督は今年で就任3年目。精神的にも肉体的にも、高校野球への準備ができることを心掛けており、まずはしっかりと練習量をこなせるようにしていると方針を語る。

 「まずは心身共に鍛えてあげようというのが一番です。技術的なものは高校に入って体が出来てからついてくるので、まずは基礎体力や基本技術まで身に付けることができればと考えています。
 それで試合に勝てればいいし、負けたらさらに良しです。勝ったらただ良かったねとなりますが、負ければ我々の言葉も響きますので」

 また中学生は、同じ学年でも体格差や技術差がまだ大きな年齢だ。
 体格面の成長や技術の習得スピードに合わせて、選手ごとに練習メニューを変えることも指導者の仕事の一つだと岩永監督は語る。

 「中学生の中にも、小学生に近い中学生と高校に近い中学生がどうしても出てきます。全体のペースは基本的には厳しくやっているつもりですが、選手によってレベルを合わせてあげて、逆にレベルの高い選手は少しランクを上げたりなど、考えながら指導を行っています」

[page_break:今年のチームは谷亀、阿部、奥村の3人が軸]

今年のチームは谷亀、阿部、奥村の3人が軸

 

田中兄弟をプロに輩出した相模ボーイズの「負けたら良し」の精神 | 高校野球ドットコム
エースとしてチームを引っ張る左腕・谷亀 和希投手

 そんな相模ボーイズだが、今年は3人の中心選手を軸に上位進出を狙っている。
 そしてエースとしてチームを引っ張るのが、左腕の谷亀 和希投手だ。
 小学校時代はベイスターズジュニアに選出され、打っても3番打者に座る谷亀投手。伸びのあるボールが一番の持ち味で、ラプソードを使ってボールの質を見てみると、球速は123キロ、回転数は1951、中学生としてはまずまずの数値を計測した。
 また、ボールの質もさることながら、コーナーへのコントロールやカーブなど緩急を駆使した投球術など総合力の高さが光り、この夏も獅子奮迅の投球が期待される。

 打線では攻撃的2番バッターの阿部 広聖選手、そして4番・捕手の奥村 颯太選手が中心だ。
 阿部選手はボールへのコンタクト力が非常に優れており、また守備でも遊撃手として軽快な動きを見せる。中学1年時には、カル・リプケンU-12世界少年野球大会日本代表に選出されるなど、経験値の高さも光る。

 また奥村選手はパンチ力が魅力の強打の捕手だ。
 身長167cm・体重74kgとがっちりした体格から長打を連発し、また捕手としても軽快なフットワークと強肩を武器に扇の要を担っている。また奥村選手は主将も務めており、リーダーシップにも期待が懸かる。

 彼らを中心に、夏はどんな戦いを見せるか。奥村主将は、夏への強い意気込みを口にする。
 「今年のチームはバッテリーを中心に、粘り強い守って攻撃へのリズムを作っていくチームです。これまで目指してきた全国大会出場の目標に向かって、湘南ボーイズや横浜緑ボーイズに負けないように頑張りたいです」

 この夏の戦い、そして今後はどんな選手を輩出するのか。相模ボーイズの今後にも目が離せない。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.23

春季関東大会でデビューしたスーパー1年生一覧!名将絶賛の専大松戸の強打者、侍ジャパンU-15代表右腕など14人がベンチ入り!

2024.05.22

【宮城】仙台育英は逆転勝ち、聖和学園が接戦を制して4強入り<春季県大会>

2024.05.22

【北信越】帝京長岡の右腕・茨木に注目!優勝候補は星稜、23日に抽選会

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?