田中兄弟をプロに輩出した相模ボーイズの「負けたら良し」の精神
広島東洋カープの田中 広輔選手(東海大相模出身)や、その弟の横浜DeNAベイスターズの田中 俊太選手(東海大相模出身)、東北楽天ゴールデンイーグルスの横尾 俊建選手(日大三出身)などをこれまで輩出したのが、厚木市三田の専用グランドで練習を行っている相模ボーイズだ。
今年の選抜甲子園大会では、東海大相模の小島 大河選手も決勝戦でサヨナラタイムリーを放つなど活躍を見せ、その他にも日大三で活躍した金成 麗生選手(トヨタ自動車)や東海大学を主将として引っ張る門馬 大選手(東海大相模出身)など、多くの選手が相模ボーイズから巣立っていった。
試合に勝てればいいし、負けたらさらに良し
相模ボーイズの練習の様子
中津川大橋のすぐ下にある中三田グラウンドは、橋が雨よけになるスペースもあり雨の日でも練習することができ、また真夏でも日陰になるため「練習環境はとても良いです」とグラウンドを紹介する岩永一志監督。元々は神奈川工科大学のサブグラウンドを使用していたが、グラウンドの閉鎖に伴い10年前に新たに練習グラウンドを開設。
輩出したプロ野球選手として紹介される田中 広輔選手、田中 俊太選手、横尾 俊建選手の「特大ボード」に見守られながら選手たちは練習に打ち込んでいる。
チームを率いる岩永監督は今年で就任3年目。精神的にも肉体的にも、高校野球への準備ができることを心掛けており、まずはしっかりと練習量をこなせるようにしていると方針を語る。
「まずは心身共に鍛えてあげようというのが一番です。技術的なものは高校に入って体が出来てからついてくるので、まずは基礎体力や基本技術まで身に付けることができればと考えています。
それで試合に勝てればいいし、負けたらさらに良しです。勝ったらただ良かったねとなりますが、負ければ我々の言葉も響きますので」
また中学生は、同じ学年でも体格差や技術差がまだ大きな年齢だ。
体格面の成長や技術の習得スピードに合わせて、選手ごとに練習メニューを変えることも指導者の仕事の一つだと岩永監督は語る。
「中学生の中にも、小学生に近い中学生と高校に近い中学生がどうしても出てきます。全体のペースは基本的には厳しくやっているつもりですが、選手によってレベルを合わせてあげて、逆にレベルの高い選手は少しランクを上げたりなど、考えながら指導を行っています」
[page_break:今年のチームは谷亀、阿部、奥村の3人が軸]今年のチームは谷亀、阿部、奥村の3人が軸
エースとしてチームを引っ張る左腕・谷亀 和希投手
そんな相模ボーイズだが、今年は3人の中心選手を軸に上位進出を狙っている。
そしてエースとしてチームを引っ張るのが、左腕の谷亀 和希投手だ。
小学校時代はベイスターズジュニアに選出され、打っても3番打者に座る谷亀投手。伸びのあるボールが一番の持ち味で、ラプソードを使ってボールの質を見てみると、球速は123キロ、回転数は1951、中学生としてはまずまずの数値を計測した。
また、ボールの質もさることながら、コーナーへのコントロールやカーブなど緩急を駆使した投球術など総合力の高さが光り、この夏も獅子奮迅の投球が期待される。
打線では攻撃的2番バッターの阿部 広聖選手、そして4番・捕手の奥村 颯太選手が中心だ。
阿部選手はボールへのコンタクト力が非常に優れており、また守備でも遊撃手として軽快な動きを見せる。中学1年時には、カル・リプケンU-12世界少年野球大会日本代表に選出されるなど、経験値の高さも光る。
また奥村選手はパンチ力が魅力の強打の捕手だ。
身長167cm・体重74kgとがっちりした体格から長打を連発し、また捕手としても軽快なフットワークと強肩を武器に扇の要を担っている。また奥村選手は主将も務めており、リーダーシップにも期待が懸かる。
彼らを中心に、夏はどんな戦いを見せるか。奥村主将は、夏への強い意気込みを口にする。
「今年のチームはバッテリーを中心に、粘り強い守って攻撃へのリズムを作っていくチームです。これまで目指してきた全国大会出場の目標に向かって、湘南ボーイズや横浜緑ボーイズに負けないように頑張りたいです」
この夏の戦い、そして今後はどんな選手を輩出するのか。相模ボーイズの今後にも目が離せない。
(取材=栗崎 祐太朗 )