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運命の日を待つ「最速151キロ銀行マン」

2018.10.24

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第19回ではいよいよ10月25日(木)の開催が目前に迫った「2018年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」四国地区ドラフト候補右腕をご紹介。「最速151キロ銀行マン」菊池 大樹投手(四国銀行)の直前情報や本人の想いなどを記していきます。

Honda破った「最速151キロ銀行マン」2018年ラスト登板

運命の日を待つ「最速151キロ銀行マン」 | 高校野球ドットコム
ブルペンで威圧感のあるストレートを投ずる四国銀行・菊池 大樹投手

 10月20日(土)午後、香川県善通寺市にある四国学院大学第二グラウンド。日差しはまだ強いですが隣のグラウンドでは全国高校サッカー選手権香川県大会の熱戦が展開されるなど秋の深まりを感じる中、今年で25回を数える「JABA四国地区連盟会長杯(社会人・大学交流戦)」四国地区大学連盟選抜vs四国銀行戦は終盤戦を迎えようとしていました。

 そんな中、8回表・四国銀行の3番手マウンドに立ったのは、背番号18の「D.KIKUCHI」。すると双方向からこんな声が聞こえてきました。

 「あれが、都市対抗でHondaを抑えたピッチャーだよな」「ボールえぐいな」「スライダー。あんなん打てないぞ」

 その正体は愛媛県八幡浜市出身。八幡浜高~龍谷大を経て、今季入行3年目で大きな飛躍を遂げた菊池 大樹(きくち だいき・投手・右投右打・178センチ85キロ)です。ギャラリーの皆さんがおっしゃった通り、今年の都市対抗ではJR四国の補強選手としてHonda戦に先発すると最速148キロのストレートとフォークを要所で駆使して8回無死まで5安打4奪三振1失点。5回でマウンドを降りた今年のドラフト上位候補・齋藤 友貴哉に投げ勝って、JR四国19年ぶりの大会勝利、大金星獲得に大きく貢献しました。

 平日は週2回フル勤務、残る3日も午後から営業職に従事する「銀行マン」にして9月の社会人日本選手権では自己最速となる151キロをマークするなど、明確にプロ入りを志し、自分と向き合っての体重増加・筋力トレーニングなどの成果を数字で表した菊池投手。同大会で惜敗し、これが1ヶ月ぶりの2018年公式戦ラスト登板となったマウンドでも「ボールは来ていない」(最速141キロ)ながら、スライダー・フォークを中心にカーブ・カットボール・チェンジアップも使って3三振を奪った辺りは「さすが」と思わせるものがありました。ただ、菊池投手は現状を決して良しとはしていません。

[page_break: 収穫の2018年終え「あとは待つのみ」]

収穫の2018年終え「あとは待つのみ」

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第25回JABA四国地区連盟会長杯(社会人・大学交流戦)で登板した四国銀行・菊池 大樹投手

 「強いチームに対して実力を出せた一年でしたが、2ストライクで追い込んだ後の決め球には課題が残ったシーズンでした」。試合後、菊池投手の振り返りで出たのは真っ先に課題の部分。「変化球ではスライダーとフォーク」という方向性は強豪社会人や2月に対戦した阪神タイガース2軍とのオープン戦で出ているだけに、あとはその精度をいかに高めるかが2019年シーズンの成功を握ることになるでしょう。

 その2019年、菊池 大樹はどんなユニフォームを着ることになるのか?最近は地元マスコミの密着取材に追われていた中、この日は高校時代から彼を知る私とマンツーマンということもあってか「2週間前までは選ばれたい気持ちが2割、8割が不安でしたが、今は気持ちは五分五分です」と偽らざる心境を語ってくれた菊池投手。1993年5月21日生で来年は26歳を迎える彼にとって、そこには「これが最大のチャンス」という想いが見え隠れしました。

 ちなみに10月21日現在でNPB球団から届いた調査書は1球団のみ。ただ、2015年にはJR四国・南川 忠亮投手が埼玉西武ライオンズのみ調査書で見事、5位指名を得た例もあります。

 と考えると1971年ドラフト3位でロッテオリオンズ(現:千葉ロッテマリーンズ)に指名され、ロッテオリオンズ、阪神タイガースで計1506安打。後に侍ジャパン外野守備走塁コーチや四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグス監督など指導者としても一流ぶりを発揮した弘田 澄男さん以来、47年ぶりとなる四国銀行からのドラフト指名選手輩出の可能性は十二分にあると言っていいでしょう。

 「あとは待つのみです」。四国銀行・宗武 秀幸監督の言う通り。私も「運命の日」当日の10月25日は四国某所で取材をしつつ吉報が来ることを待ちたいと思います。

 

(文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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