Column

3年生座談会 市立川越高等学校(埼玉) 「史上最弱のチームからの脱却」 【前編】

2016.09.12

 この夏、浦和学院に1対0と競り勝った市立川越。ベスト8まで進出したが、新チームはスタート当初から、なかなか結果が出せないでいた。
「このチームは、新チームが出来て以来、新人戦も含めて公式戦初勝利が春の地区ブロック戦までなかったチームでしたからね。それも次の試合で負けているから、春秋県大会出場実績もなしでした。これは、私がここ(市立川越)へ異動してきて以来初めてじゃないかなぁ。だから、とてもじゃないけど浦和学院に勝つどころか、まともな試合ができるようなチームじゃなかったですよ」と、市立川越新井 清司監督は言う。

 そんなチームが、この夏、4回戦浦和学院を下してベスト8にまで進出した。そのプロセスを3年生たちに回顧してもらった。

<出席者>
中祖 昂也(狭山市立入間野中 出身)二塁手
石井 光(所沢市立東中 出身)遊撃手
早川 郁也(嵐山町立玉ノ岡中)投手
新井 陽太(ふじみ野市立大井中)捕手
佐藤 史哉(入間市立金子中)外野手
横田 冬馬(ふじみ野市立大井西中)外野手

敗戦後の本音・・・「引退したくなかった」

中祖 昂也君(市立川越高等学校)

――高校野球の選手を引退して1カ月ほど経過しました。その間は、どんな気持ちでどのように過ごしていましたか。

中祖:引退するまでは、野球しかないという状況でしたから、終わってしばらくはすることもなく、ボーっとしていました。まあ、7月中というか、実際はボーっとしていたのは1日くらいでした…。その後はやはり、大学野球をやりたいという気持ちになりましたから…。8月になって練習にも顔を出すようになりました。

石井:終わった後は、野球は、ほとんど見なくて、埼玉県の高校野球なんかもその後はほとんど見ていません。野球から遠ざかっていました。

――遠ざかって何をしていたの…、勉強していた?

石井:いや、勉強はあまりしていないです。するふりをしていました(笑)。何もしていなかったですね。

早川:夏休みは、暇でした。今まで、そんな暇な夏休みはなかったですから。何していたんだろう…。

新井:現役の時というか、高校野球をやっていた時は朝早く起きていたのですが、これでフツーの人に近づいたというか(笑)、ゆっくり起きて、普通の高校生の生活になりました。一応勉強もしようかなと、思っています。

佐藤:ボクは、ずっと高校野球の他の試合も見ていました。球場へも行きましたし、西東京の決勝も行きました。いいなぁと思いました。

――へぇ~~、将来の野球オヤジ候補だね。

佐藤:見ていたら、もうちょっと勝ちたかったなとも思いました。西東京は、中学時代からの友達がいたものですから、その関係もありましたけど…。友達は、八王子にいました。

――向こうは、甲子園に行きましたね。

佐藤:はい、ちょっと嫉妬しましたね、やっぱり…。

横田:ボクは、引退した日というか、負けた日は、その日1日が終わってほしくなくて、なかなか寝られませんでした。

――それは、悔しかったから…?

横田:というよりも、明日になってしまったら、本当に引退になってしまいますから、引退したくなかったんだと思います。負けたことよりも、ここから離れていくということが寂しかったんだと思います。

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[page_break:秋も春も地区予選で敗退した新チーム]

秋も春も地区予選で敗退した新チーム

横田 冬馬君(市立川越高等学校)

――このチームが去年の夏にスタートして、こうして1年が経過したんだけれど、どちらかというと主力に2年生の方が多かったチームでした。このチームがスタートした時はどんな感じでしたか。

横田:実際、最初にメンバーを組んだ時は、同級生では中祖しか入っていなくて、他は全員下級生でしたから…。

新井:最初から、「この代は弱い」ということは言われていました。

――主将としてはどうでした。実際、新チームとしては結果も出てなかったわけなんだけれども…。主将としての焦りとか、そんなところはありましたか。

中祖:夏の新人戦も、秋も勝てなくて…。春にブロックで一つ勝ったのが公式戦初勝利でした。それでも、次に負けて県大会には出られなくて…。だから、県大会は夏が初めてでした。

横田:新井先生が市立川越に来られてから、「秋も春も県大会に出られなかったのは初めてだ」なんて言われていました。

――それは、周囲からも厳しく言われたんじゃないの…?

横田:それはもう、大変でした。史上最弱ということは、言われました。

中祖:世間の誰からも言われましたよ。来る人来る人、みんなから言われました。「今年は弱い」って…。

新井:3年がダメ……、みたいなことをみんなから言われました。

――それは、悔しいよね。3年生は全部で27人いるんだけれども、それだけいて、そんな言われ方をすると、当事者としては辛いですね。そんなチームを夏までに、どのようにして立て直していったんでしょうか。

佐藤:ミーティングが多くなりました。これは、春のブロックで負けた後に(コーチの)甲原(史朗)先生にも言われたことなんですけれども、それから全員でのミーティングを増やしていきました。

中祖:やっぱり、3年生としての必死さと、どこかに「来年があるからいいや」いとう2年生の必死さとでは、必死さが違うと思いました。だから、そのことは徹底して言いましたね。そして、一発ではまとまらないなという気もしていましたから、何度もミーティングを繰り返しました。

横田:やっぱり、ボクらの代としては(試合に出ている)2年生に対して不満はありました。それをボクらもしっかりと2年生に伝えていかないといけないと思っていました。何が不満なのかということですね。

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[page_break:夏の組み合わせ抽選会でのハプニング?!]

夏の組み合わせ抽選会でのハプニング?!

佐藤 史哉君(市立川越高等学校)

佐藤:とくに、試合に出ていない3年生が2年生に対しての不満というのはありました。

中祖:最初は、そいつのメンタルがボロボロになるまで言い合うこともありました。だけど、それでまとまったということがあったと思います。思っている方向性が違うということはありましたから、それが本当に分かり合えるまで話しました。

横田:それ以来、3年生が2年生の練習を見ていきながら、いろいろ本音で言うようになっていきました。

――ミーティングの後に、自分たちで具体的に示したこととしては何があったの?

新井:春の大会の後は夏まで、毎日3年生が全員早く朝練に集合するようにしました。まずは、そういうところから示していこうということになりました。朝は7時頃には全員いて、自主練習を始めていました。

佐藤:これは、春負けてからすぐ始めました。

石井:それ以来、練習試合でも勝てるようになってきて、どこかモチベーションとしても違ってきたかなという感じがしました。

――一番気持ちが動いてきたなと感じたのはどのあたりだったでしょうか。

横田:6月の最初の週、桐生第一との練習試合ですね。あれで競り合って勝てたのは大きかったと思います。練習試合でも、9回に2度も伝令が出ましたから、あそこで最後、ダブルプレーで切り抜けられて、「夏は、イケるんじゃないの」という気にはなりました。

――それで、夏の大会へ向かう準備が整ってきたのだけれども…、どうでしたか。

横田:組み合わせ抽選のクジの後、中祖の顔は明らかに引きつっていました。

中祖:浦和学院と随分近いなという気がしたんですよ(浦和学院が1番、市立川越が8番)。元々、そんなにクジ運はそんなによくなかったですから、春なんかは別のヤツに頼んだくらいでした。ただ、どうせ浦和学院と当るのなら、早いところでもいいかなとは思っていたんですけれども。

佐藤:周りの人たちからは、クジ運悪いよね、なんていうことも言われていました。

石井:その前に当たる所沢商もそうですけれども、どこも気の抜けないところでした。

中祖:本当言うと、[stadium]川越初雁球場[/stadium]以外のところでやりたかったんです。というのは、それまで公式戦は[stadium]初雁球場[/stadium]以外でやったことなかったですから…。

佐藤:勝っていないですからね。

 まだまだ、3年生部員たちのトークは続きます!後編をお楽しみに!

(取材・写真=手束 仁


今年も大好評!
【僕らの熱い夏2016 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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