試合レポート

川薩清修館vs沖永良部

2014.07.08

「伝統の灯」絶やさず・沖永良部

 序盤から好機をそつなくものにした川薩清修館が競り勝った。
初回は相手のエラーで先制、2回は9番・内田 誠義(2年)のセンター前タイムリー、3回は6番・永田 周人(1年)の犠牲フライと序盤で主導権を握った。中盤同点に追いつかれ、相手に流れが傾きかけた苦しい展開だったが、エース眞崎 凱世(2年)を中心に勝ち越しは許さなかった。9回に押し出しと7番・田上 和磨(1年)の犠牲フライで2点を勝ち越し、その裏を3人で打ち取って、白星を手にした。

 スタメン4人の背番号とレギュラーポジションが一致していないところに、沖永良部の苦しいチーム事情がうかがえた。エース榮 大志(3年)は春の大会以降、右脇腹の疲労骨折で投球練習がほとんどできていない。加えて攻守の要・福井 富和主将(3年)が約1カ月前の練習試合で右のハムストリングスを肉離れして、試合に出られなくなった。将棋でいえば「飛車・角」抜きで迎えた夏だった。

 初回、2回とエラーが失点に絡んだ。「1、2年生主体の若いチームの不安要素」(前田直紹監督)だった守備のミスが序盤に出て、重苦しい雰囲気だった。4回以降、1年生左腕・奥間 卓斗が立ち直り、打線も6回に同点に追いつく粘りをみせたが「あそこで一気にひっくり返せるほど、走塁面など細かい野球を仕込めていなかった」(前田監督)。9回、好投を続けていた奥間卓も肩が限界を超えており、榮をマウンドに送らざるを得なかった。表に奪われた2点を、裏の攻撃でひっくり返す力は残っていなかった。

 悔しい負け方だったが、故障者続出の苦しいチーム事情の「現有戦力」で、精一杯のことはやり切った。エラーはあったが「取り返せないほどの点差にならず、食らいついて粘り強く戦えた」と前田監督は評価する。福井主将も「ベンチも、スタンドも、一丸となって戦えた」ことは実感できた。

 昨夏の3年生が抜けてからは1、2年生7人になり、単独出場ができなくなった。古仁屋との連合チームでの県大会には出場したが、一緒に練習する時間は皆無に等しく、1勝も挙げられなかった。試合に出られないかもしれない不安との戦いの中で「大会出場を途絶えさせず、伝統の灯を絶やさなかった」4人の3年生の頑張りを前田監督はたたえていた。

(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【北信越】富山県勢4校が12年ぶりの県勢V狙う、茨木擁する帝京長岡にも注目<地区大会>

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.26

【春季関東大会】白鷗大足利が初優勝!最後はタイブレークの末サヨナラ死球で幕切れ!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】エース頼み脱却を目指してきた京都国際。「素質はプロ入り左腕と同等」の2年生左腕の台頭と打線強化で京都の大本命に成長!

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉