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1、2番コンビが打線をけん引した智辯和歌山の優勝には必然性があった

2021.08.30

1、2番コンビが打線をけん引した智辯和歌山の優勝には必然性があった | 高校野球ドットコム
宮坂厚希、大仲勝海(智辯和歌山)

 何事もスタートが肝心だとはいうけれど、この日ばかりは納得してしまった。智辯和歌山が「智辯対決」を制して優勝を決めたが、まさに「先制パンチ」が効いたおかげだった。

 試合開始を告げるサイレンが甲子園に鳴り響くとほぼ同時に、智辯和歌山の1番打者、宮坂 厚希主将(3年)がバットで快音を響かせ、中越え二塁打を放った。いきなり無死二塁のチャンスを作ると、続く2番大仲 勝海(3年)はファウルで2球粘った後の7球目を右前打にした。無死一、三塁。智辯学園先発の西村の外角に制球された直球とスライダーを、1、2番の左打者がヒットにしてみせた。その姿は一塁側ベンチの仲間を勇気づけるのに十分な結果だった。この回は4得点。完全にゲームの主導権を握った。

 この二人はここまでの3試合で当たりに当たっていた。宮坂は15打数8安打で打率.533、大仲は13打数6安打で打率.462。智辯和歌山の強力打線を引っ張る役目は、決勝戦でも元気いっぱいだった。宮坂は5打数2安打、大仲に至っては4打数4安打。2打席目以降も、かならずどちらかが出塁した。ともに凡退することなく、打線をつなげた。この日を含めた「1、2番コンビ」での今大会通算打率は.541。決勝戦を含め、この二人の快音なくして、智辯和歌山の優勝はなかった。

 智辯学園の1、2番も遜色なかった。1番のスラッガー前川 右京は準決勝まで打率.389、2番森田 空は全6試合で安打を放ち打率.476をマークしていた。森田は1回戦こそ7番打者だったが、大会中に調子を上げ、2回戦6番、3回戦5番と打順が上がり、準々決勝、準決勝は2番だった。準決勝は4打数3安打と絶好調で決勝を迎えていた。

 しかし、1回裏、前川が安打で出塁後、森田は2球連続でバントに失敗した。ヒッティングに切り替え、うまく三遊間に転がし、内野安打かと思いきや、智辯和歌山大西 拓磨の好フィールディングに阻まれ二塁封殺。3番岡島の当たりも、またも大西にうまくさばかれた。1回の攻防で明暗が分かれる結果となってしまった。

 その後、森田のバットから快音は聞かれず、反撃の大チャンスだった7回二死二、三塁ではフルカウントからフォークボールを空振り三振。智辯和歌山のバッテリー、守備の前に、森田の力が封じ込められた。

 智辯学園はこの日で6試合目だった。森田を含め、選手の疲れもピークだったのだろう。2番手で登板した小畠 一心は6回から4イニングを投げて毎回の5失点(4自責点)。準決勝までは2点しか取られていなかった右腕が力尽きた。小畠は6試合、すべてでマウンドに上がった。324球を投げ、打者95人と対戦した。この日がチーム4試合目で、自身3試合目の登板だった中西 聖輝と投げ合えるほど、力は残ってなかったのかもしれない。試合後の整列に、一番最後に加わった背番号10。小畠は心身共に燃え尽きていた。

 元気いっぱいの1、2番に引っ張られ、打線がピークの状態だった智辯和歌山と、横浜明徳義塾など強豪と戦い、目に見えない疲労とも戦った智辯学園との決勝戦。非情にも答えは明確だったのかもしれない。

(記事:浦田 由紀夫

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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