2019年沖縄の高校野球は『燃』えるような試合ばかり!漢字一文字で1年間を総括!
たくさんのドラマがあった2019年沖縄の高校野球。それらのシーンを振り返って、漢字一文字で表してみた。
― 燃 ―
興南と沖縄尚学
本当は「雪辱」の二文字にしたかったのですが(苦笑)。「雪辱に燃える」から一文字取りました。沖縄を代表する二強といえば興南高校と沖縄尚学高校です。
その二強と互角の戦いを演じたのが、北山高校。この3校が2019年を彩りましたが、各校ともに同じような雪辱に「燃」えていました。まずは興南高校から。
― 北山高校に雪辱!興南高校 ―
試合に勝利してあいさつに向かう興南ナイン
現在の三年生たちが高校野球駆け出しの約二年前、一年生中央大会に出場したのが各地区を勝ち抜いてきた16校。その一回戦で興南高校と対戦したのが北山高校でした。
2点を先制した興南高校。しかし3回、北山高校は4番仲村のタイムリーで追い上げると、4回、5回には7番宮里の2打席連続タイムリーなどで2点ずつを奪い逆転。6回にも玻名城と上間栄にタイムリーが出て7対3とリードを広げました。
追う興南高校は7回に嘉数のタイムリーや相手のワイルドピッチなどで反撃。追い詰められた9回裏、西江と仲本のタイムリーで1点差としましたが、最後は併殺打に倒れ8対9で敗れました。勝った北山高校は勢いを増し、決勝へ進出。創部初の準優勝を成し遂げました。
その興南高校が、再び北山高校と合い間みえたのが、三年生に上がる直前の春季県大会準決勝。先発は北山高校が金城和、興南高校が又吉で、エース金城洸と宮城大弥は試合展開を見据えてのスタートでした。
興南高校は1番の西里が2打席連続安打、2番根路銘は3打線連続安打をマークするなど、前半の5回を終えて北山高校にプレッシャーをかけ続けましたが、得点することが出来ません。
一方の北山打線は、興南高校先発の又吉の前に6回を終えてノーヒット。エラーも四球もないパーフェクトピッチングでした。
その中、二番手に新城を挟んだ北山高校が先に動きます。6回二死からエース金城洸がマウンドへ。代打の比屋根をセカンドフライに斬ります。その直後の7回、今度は名将が動きます。スタンドが少しざわめく中、センターから宮城大弥がマウンドへ。
北山・金城洸汰
まるで日本シリーズの、中日ドラゴンズ山井投手から岩瀬投手へ変えた落合監督のような、パーフェクト投手を変えるのは我喜屋監督だからこそ出来る継投でした。
宮城大弥は7回と8回にヒット1本ずつを打たれるも、3人ずつで締めます。金城洸も味方のエラー1つのみで、7回、8回、9回と3人ずつ。お互い一歩も譲らない投手戦で、延長へと突入していきました。
10回、北山高校は二死満塁とチャンスを作りましたが、宮城大弥が貫禄の三振斬り。その裏興南高校も一死二・三塁とサヨナラの機会を作りましたが、金城洸が併殺に斬る互角の展開。
13回に入りタイブレークを開始しましたが、そこでも両投手が粘りのピッチングを見せて1点しか許しません。しかし14回裏、興南高校が犠打をきっちりと決め、1番西里がサヨナラ犠飛を上げて辛勝。3時間20分の熱戦に終止符を打ちました。
試合後、宮城大弥の女房役である捕手の遠矢が「やっと北山高校にリベンジ出来ました。」と語ったのが印象的でした。
その後、秋の決勝で敗れた沖縄水産高校に勝利した興南高校。九州大会に進み、福岡県の筑陽学園にもリベンジした執念は正に「雪辱に燃える興南」だったことでしょう。
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沖縄尚学・知念大成
一年生中央大会で興南高校に勝利した北山高校は、二回戦で嘉手納高校に6対1、準決勝の那覇商業高校には12対0という大差をつけて決勝へ進みます。相手は沖縄尚学高校でした。
1回に先制した北山高校でしたが2回、沖縄尚学高校3番奥原にランニング満塁ホームランを見舞われるなど大量5失点。その後も中盤に小刻みに点を奪われ8対2で敗れました。
その後、北山高校が沖縄尚学高校と合い間みえたのは第100回記念大会の選手権沖縄大会。一年生大会とは違い、一つ上の選手がいる夏。沖縄尚学高校には注目の知念大成がおり、圧倒的沖縄尚学高校有利でした。
先制したのは北山高校でしたが3回、その知念大成にライトスタンドへの満塁弾を浴び逆転を許します。まるで一年生中央大会の決勝のような展開でしたが、北山ナインはあのときとは違っていました。
4回に二者連続でスクイズを成功させると、6回には5番山埼のタイムリー三塁打などで逆転。7回、同点に追いつかれますが9回裏、9番島袋が二塁打で出塁すると3番大城龍のセンター前ヒットでサヨナラ勝ちしたのです。しかも、北山高校の燃える思いはこれだけに止まりません。
三年生に上がる直前の春季県大会。準々決勝戦で沖縄尚学高校と再び対戦することとなった北山高校。そう、一年生中央大会で顔を合わせた選手同士の再対決でした。
先制したのは沖縄尚学高校。あの時、ランニング満塁ホームランを打たれた奥原のタイムリーによるものでした。しかし北山高校はその裏、金城洸の2点タイムリーと、仲村のタイムリーで鮮やかに逆転します。
その後は2回から7回までゼロが並ぶスコアボードでしたが、8回と9回に1点ずつを失い、3対3のまま延長戦へと入っていきました。
勝敗の行方がやってきたのは11回。
北山高校は一死から3番金城輝がヒットで出塁すると盗塁を決めます。二死三塁と場面が変わり打席には1回に逆転打を放っている金城洸。しかし終わりは予想だにしないワイルドピッチ。三塁から金城輝が生還し北山高校が再びサヨナラ。
あの雪辱を、燃え続ける思いで果たした、二度のサヨナラゲームでした。
― 沖縄水産高校に雪辱!沖縄尚学高校 ―
沖縄水産・國吉吹
第68回沖縄県高校野球秋季大会でノーヒットノーランが生まれました。主役は沖縄水産高校の國吉吹。
沖縄尚学高校先発の左腕仲村渠も、8回まで5安打無失点に抑える好投だったのですが、國吉は8回を終えて3つの四球と2つの味方のエラーのみ。
9回表、沖縄尚学高校は、流れを少しでも変えようとピッチャーを右の比嘉にスイッチします。無難に抑えたものの、國吉は少しも動じることがありませんでした。
レフトフライ、サードゴロ、ショートゴロで試合終了。甲子園二度の優勝を誇る名門にとって、屈辱の敗退となったのでした。
チームにとって雪辱を期するはずの春季県大会でしたが、準々決勝で北山高校にサヨナラ負け。最後の夏はノーシードで勝ち上がらなければならなくなりました。
そして迎えた夏。組み合わせ抽選で沖縄水産高校ブロックに入った沖縄尚学高校。試合巧者のコザ高校を8対1の7回コールドで下すと、二回戦の沖縄南部工業高校戦は10対0の5回コールドと、最高の状態で三回戦へとコマを進めます。
対する沖縄水産高校も2試合で25得点。勝った方が興南への挑戦権を手にすると思われた試合が開始されました。
内容は(當山が選ぶ、2019年沖縄県高校野球ベストゲームからどうぞ)
ノーヒットノーランを喰らった國吉から4点を奪い勝利。見事な雪辱を果たした沖縄尚学高校は、本当の自信と燃える闘志を手に入れました。その後決勝へ進むとライバル興南高校を撃破。
2014年に制した夏の選手権沖縄大会。しかしその後はベスト4、ベスト16、ベスト8、ベスト8と負け続けていた沖縄尚学高校。5年振りの優勝は、雪辱に燃える名門のプライドが果たした沖縄水産高校戦が、昇華させたものだったのでしょう。
(文=當山 雅通)
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