運動学・解剖学的観点から考えた投球フォーム、真っ直ぐ立つ(2)
運動学・解剖学的観点から考えた投球フォーム、真っ直ぐ立つ②2011年09月10日
夏の甲子園が終わりました。私は今夏、3日間、決勝戦を含め7試合を観戦することができましたが、目的はもちろん、投手の投球フォームを見ることです。日大三の吉永 健太朗投手はやはり素晴らしいフォームで投げます。あれだけ連投しても安定した投球ができたのは、やはり投球フォームが安定しているからなんですよね。この辺も後に説明できればと思います。
では『真っ直ぐ立つ』について話を進めていきたいと思います。前回真っ直ぐ立つために自分はどれくらい膝を上げるべきなのか?という話をさせて頂きました。まずは自分自身のことを知ることが第一となります。
今回は、横から見たときに真っ直ぐ立てているのか、というポイントについて説明させて頂きます。ワインドアップやセットポジションからの投球において、この真っ直ぐ立つことの重要なポイントに、以降の重心移動に影響を与えるということがあります。
重心移動については後に詳しく説明させて頂きますが、正しい重心移動を行うためには、この『真っ直ぐ立つ』ことが非常に重要になるのです。 まず、理想の立ち方ではない方を紹介しましょう。
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※詳しい解説イメージはPCからご覧ください。
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【写真①】 |
【写真②】 |
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写真①は真っ直ぐ立てず、骨盤が前方(キャッチャー方向)へ流れています。これではいわゆる『スタート地点』が分かりにくい状態となってします。真っ直ぐ立つことは、重心移動の『スタート地点』です。このスタート地点がバラバラとなれば、その後の重心移動もバラバラになることは間違いありません。またスタート地点が早ければ、開きが早い原因にも繋がります。
写真②のように、しっかりと真っ直ぐ立ってから重心移動を開始することが重要となります。これであれば毎回同じ『スタート地点』から安定した重心移動を行うことができます。
最近では日本ハムのダルビッシュ投手が真っ直ぐ立つ際にサード側を見ながら真っ直ぐ立つのですが、これは自分自身が真っ直ぐ立っているかをどこかを見ながらチェックしているのではないかと推測しています。ソフトバンクホークスの斉藤和美投手も同じことをやっていましたね。
とにかく自分自身の重心移動に対する『スタート地点』を自分で理解するようにしましょう!続けてこの『真っ直ぐ立つ』ができない原因の1つについて説明します。
前回、膝をどれくらい上げるのか、という話をしましたが、投球の際には膝は上げるだけではなく、やや後方(センター方向)へ捻るようにして投げる場合があります。この『捻り』を自分の持ち得る能力以上してしまうと、真っ直ぐ立つことはできず、自然と前方(キャッチャー方向)に重心が移動してしまい、『スタート地点』がバラバラになることがあるのです。
だから自分自身がどのくらいまでなら捻ることができるのか?これを知ることが重要になるのです。
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※詳しい解説イメージはPCからご覧ください。
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【写真③】 |
【写真④】 |
【写真⑤】 |
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そのチェックは簡単にできます。まずは踏み出し脚の膝を上げます。もちろんこれは自分がどのくらいの高さまで上げることができるのかチェックした高さまで上げて下さいね。(写真③)
その状態から膝を後方に回していきます。ゆっくり回していって下さい。するとどのような状態になるのか?1つは軸足の小指側に体重がかかり、後方へバランスを崩す。もう1つは軸足の親指側に体重がかかり前方へバランスを崩す、のどちらかになる場合がほとんどです。
これは自分の持ち得る能力以上の捻りをしているからこのような状況になってしまうのです。 もし、バランスが悪くならない方は、軸足の股関節の捻りで膝を後方にもっていっているのではなく、上げた脚の股関節の動きのみで後方にやっているからです。これはこれでいいので、自分はどちらの股関節を使って膝を後方にやっているのか、これを知ることも重要になります。どちらがいいということはありません。どちらが自分の理想のピッチングができるかです。
写真④ 上げた脚の股関節のみで捻っている場合
写真⑤ 軸足の股関節を捻っている場合
実際の投球動作では、後方にバランスを崩す、ということは有り得ませんので(前に重心移動をしようとするため)捻り過ぎると親指側に体重がかかり、前方へバランスを崩しながら重心移動に移行してしまう、ということになるのです。ですから先ほどのチェックにて、自分がバランスよく捻り動作をできるには、どのくらいの捻りであれば大丈夫なのかをチェックする必要があるのです。
これで自分自身が膝をどのくらい高く上げればいいのか、どれくらい膝を捻ればいいのか、これが分かれば自分が真っ直ぐ立つことができるようになるはずです。!
(文・久保田 正一)
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