太成学院大高vs守口東
今村信貴(太成学院大)
09年夏には、春からウナギ昇りに評価を挙げて、注目を浴びた関大一の西田哲朗(楽天)が、その夏、初スイングで本塁打を叩きこむと、そのままサイクル安打を達成した。
当時の山田は「(初戦の大記録達成に)意外とフツーでした」といつもと変わらぬ戦えたと主張し、西田は「スカウトがたくさんこられるのを知っていたので、自分の力を見せつけよと思った」と話したものだ。相手が格下だったという風が吹いていたとはいえ、大会前から新星として注目されても、初戦から変わらぬポテンシャルを発揮できたことは、彼らの強さを示す一つのポイントだったといえる。
PL学園や大阪桐蔭などの強豪校のように、常日頃からプレッシャーを浴び続けているチームとは事情が違う。
いつもは平凡な日常を過ごしている彼らが、一時的に脚光を浴びる。その中で迎える夏というものが、どれほど、「いつもと違う」空気が漂うか、想像できるというものだ。
今村信貴(太成学院大)
2011年の夏、大阪、その位置にいるのが太成学院大・今村信貴である。
大阪、いや関西NO1左腕との呼び声のある今村は、昨秋の新チーム結成以降、注目されてきた逸材だ。左腕から投げおろす、内・外のストレートと低めに決まるスライダーなど数種の変化球は、プロのスカウトたちからの評価を受けてきた。
その今村が初戦を迎えたのだ。
山田や西田と同じような華やかな初戦を飾るのか。
今村の初戦は非常に興味深いものがあった。
結果は5回0安打10奪三振完封勝利。
四球を一つ出したとはいえ、参考記録ながらのノーヒット・ノーラン達成である。今村もまた、先人たちに続いたのである。
結果だけではなく、ピッチング内容もまた見事だった。
ストレートを多めに使った序盤は「チームに流れを持って来たかったので、自慢のストレートで押していきたかった」と強気に攻めた。
アウトコースのストレートを出し入れしながらカウントを稼ぎ、高めの勢いのあるボールで三振を奪う。格の違いを見せるピッチングとは、まさにこのことである。
今村信貴(太成学院大)
中辻監督も舌を巻く。
「初戦ということで、硬くなるかなというのも思いましたが、予想以上の出来でしたね。体調も、ストレートや変化球のキレも、コントロールも良かったんじゃないでしょうか」。
注目されながら、初戦からベストピッチを見せる。
これは彼の持つ一つの能力と言えるだろう。
今村自身の言葉が、なんともたくましい。
「注目されるようになっているなというのは感じています。今日も、スカウトの方が来られているのは分かっていましたが、そういうのは気にしないようにしています。ただ、夏の大会っていうと、いろんな人が応援してくれて、お客さんも多い。僕はその方が気合が入ります」
初戦を最高の形で飾った今村信貴。
この勝利がすべてを満たすというわけではないが、今後の彼の戦いが一層、楽しみになったのが確かである。
今村も気合を入れ、今後へ意気込む。
「昨年の秋は履正社に負けて、この春は大阪桐蔭に負けて、悔しかった。、この2チームにリベンジしたいと思っています」
関西随一の注目左腕は2つの壁を越えられるか。
太成学院大・今村信貴の挑戦が始まった。