ミレニアム世代のトッププロスペクトたち Vol.4「杉澤龍、知念大成、田中幹也」
23日から始まる沖縄大会を皮切りに第100回大会がスタートする。この大会で最後の夏を迎え多大な注目を浴びるミレニアム世代をトッププロスペクト方式で特集。今回は夏に大爆発したい3選手に注目だ。
杉澤龍(東北)春の東北大会で4本塁打 大爆発に期待がかかる東北ナンバーワンショート
杉澤龍(東北)
この春は勢いが止まらない。春季東北大会で計4本塁打を放ち、話題となった杉澤龍。大館リトルシニアから東北へ入学。1年夏にはショートとして甲子園に出場。
初戦で横浜に敗れたものの、エース・藤平尚真(現・東北楽天)と対戦したことが杉澤にとって大きな財産となった。2年生ではセンターに転向し、春の東北大会でベスト4、夏は準優勝といずれも仙台育英に敗れ、悔しさを味わった。打倒・仙台育英。杉澤を含めたこの世代はその言葉を胸に刻みながら練習を重ねてきた。杉澤は県大会から本塁打を重ね、そして東北大会の明桜戦ではサヨナラ本塁打、準決勝の八戸学院光星戦で3本塁打と大当たり。
杉澤の打撃に迫ると、無駄が全くない。体型的にはアベレージヒッターながら、小さく足を上げ、タイミングを測り、トップに入る動作を見ると、立ち遅れすることなくバックスイングができており、振り遅れがない。さらに肩口から振り出し、最短距離でボールを捉えることができる。
コンパクトな打撃フォームから最短距離でボールを捉えながら、しっかりと救い上げることを意識している。本塁打ゾーンはほとんどが高め。それを見逃さないところが本塁打量産につながった。ここまで打撃が目立ったが、遊撃守備も見逃せない。一歩目が早く、持ち替えが速い守備はスピーディだ。
目指すは2年ぶりの甲子園へ。この夏も春に続き、攻守で大暴れだ。
[page_break:知念 大成(沖縄尚学)投手 沖縄一の速球派左腕 今年は勝てる投手へ]知念 大成(沖縄尚学)投手 沖縄一の速球派左腕 今年は勝てる投手へ
知念 大成(沖縄尚学)
今年の沖縄県ナンバーワンサウスポー。左スリークォーター気味に腕を振っていくストレートは最速145キロを計測。特に右打者の外角に決まった時のストレートは威力抜群だ。
兄・知念大河に憧れて野球を始めた知念大成。玉城中では軟式野球部でプレー。県大会で優勝するなど、実績を上げ、沖縄尚学に入学した。1年秋からチームの主軸を任され、春の県大会優勝、夏はベスト8を経験。そしてエースとなった2年秋。
「とにかくがむしゃらに投げた」と勢いで投げ続け、県大会優勝を果たす。選抜出場を目指した九州大会では、準々決勝で選抜出場の創成館に敗退。ここで、制球力、ストレートの切れを向上させないといけないと痛感した。しかし、今年になってまだベストピッチングはできていない。首脳陣と課題にしているのは、恵まれたポテンシャルを生かす「体の使い方」を習得すること。秋の県大会から課題となっていた押し出すようなリリースがどれだけ改善できているか。
夏の初戦の相手は昨秋ベスト4の沖縄水産。これまでの成長を確かめる舞台となる。
田中幹也(東海大菅生)遊撃手 あきる野の牛若丸 この夏は一味違った姿を
田中幹也(東海大菅生)
あきる野の牛若丸が最後の夏を迎える。1年夏からベンチ入りし、東京都内では守備力の高さが知れ渡っていたが、その守備力が全国クラスだと証明したのは昨夏の甲子園だ。
抜群の出足からヒットになりそうな打球を何度も阻止。三遊間へ深い打球に対しても、追いついて、そのままダイレクトスローでアウトにするなど、次々と美技を演出し甲子園のファンを沸かせた。
その田中がベストプレーと振り返ったのが、昨夏の甲子園準々決勝の三本松戦の6回表。三塁・奥村治がはじいた打球をすぐにカバーし、アウトにしたプレーだ。
「三本松の多田 祐汰選手は初回に左方向へ二塁打を打っていたので、三遊間へ来るのではと予測していました。実際にその打球がきて、奥村治さんは捕れなかったので、すぐに僕がカバーに入ってアウトにすることができました。そのプレーは大きかったですね」と会心のプレ―を振り返る。
こうして、夏の甲子園ベスト4まで勝ち進み、全国区のショートへ成長した田中。選抜は逃し、春の都大会でもベスト8止まりだった。最後の夏は、一味違った田中幹也を見せる。
文=河嶋宗一