Column

アジリティとコーディネーショントレーニング【後編】

2015.12.12

 前回に引き続き、アジリティとコーディネーションについてお話ししたい。
今回は実際のトレーニングプランを紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

まずは準備運動と動かす「意識」

ウォームアップからしっかり行おう!

(1)準備運動
深部体温上昇、動的な筋の伸張、神経系、固有受容器、スタビリティマッスル、動作確認、専門的ドリル、最大可動域、正しい姿勢、バランス、コーディネーションを意識する

 まずは、ウォームアップ、ジョグ、サイドステップ、キャリオカ、スピンなどの動作をブラジル体操のようにリズミカルに行い体を温める。
次に関節をほぐす。この時は各関節の可動性、特に股関節、肩関節の3面の動きを意識して行うことが大切である。最初は寝た状態から、その後、立位でのコアの回旋、対角パターンを行う。
そしてムーヴメント。前、後、側方へのハンドウォーク、ランジ、ハードルエクササイズなど、動的柔軟性、加速を付けてマーチ、スキップ、シャッフルとどんどん動作を大きく速くしていく。

(2)バイオメカニクス運動
すべてのエクササイズにおいて、足首背屈、ポジティヴアングルアーム、姿勢、コア、地面反力の利用を意識させる。

(3)神経系とSSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル=伸長反射)
a.急反応ドリル:ハイスピードで行われるフットワークエクササイズである。ミシン針のイメージで行っていく。オーバラインジャンプ、ホップ、ラダー、コーディネーションパターン。

b.短反応ドリル:スピードは急反応ドリル程ではなく、しかし出力は高くなる。例えば硬質のゴムボールが地面に当たった時のリバウンドである。短時間で高い出力を出すことが目標になる。「弾性」を意識して、タックジャンプ、デプスジャンプなどがある。

c.長反応ドリル:より出力を高めて。これは太いバネを一気に圧縮し離した時に、ビヨーンとバネが伸びるイメージに似ている。最大関節をローディングさせて、一気に爆発的に力を発揮させることがポイントになる。これにより、スピードストレングスを発達させる。スクワットジャンプ、スプリットジャンプがこれにあたる。

d.超反応ドリル:最大出力でスピードは最も落ちる。アジステッドジャンプ、メディシンボール、パワーリフティングなど。

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(4)ムーヴメントドリル
A.クローズドスキル
動きの内容はあらかじめ決められていて、量・休息・負荷・閉眼・裸足・不安定でプログレッションを上げていく。中でもコンプレックストレーニングは大切であり、高いレベルの神経活動をもたらすトレーニングを組み合わせていく。運動単位の加重と同期を改善する。高重量のウエイトトレーニング、レジステッドラン、ジャンプ、スロー、プライオを組み合わせていく。

1)レジステッドトレーニング
1RMの5~15%の抵抗をかけて、運動単位の加重と同期を高めて、特定のスキルを向上させる。
例:ゴムチューブを腰に付けてサイドステップをすることで、足首を背屈により地面反力をもらい、この時母指球上にポジティヴアングルで荷重して、プッシュを意識して行って加速を強くできる。加速を意識できるトレーニングである。

2)アシステッドトレーニング
アシステッドトレーニングは、パフォーマンスが高いゆえに今以上パフォーマンス改善する余地があまり残されていない場合に有効な手段となる。補助なしの5~15%を超えないのがポイントである。坂は3~5%の下り坂もある。

B.オープンスキル
オープンスキルは、感覚入力システムによって受けた外的刺激に反応する為のスキルである。
ランダムアジリティ(ボール・相手・障害物へ反応するアジリティ)を含むオープンスキルはほとんどのスポーツで必須である。最初は手による指示で始めて、そこにアシスト、レジストを加える。
流れはクローズドスキル(コンプレックストレ・レジステッドトレ・アシステッドトレ)からオープンスキルあるいはランダムスキルへとプログレションを組む。

野球の専門アジリティ

【内野手】
効果的なスタンスを基本に、パワフルファーストステップ、クロスオーバー、減速、起き上がりのスキルを連動する

【外野手】
視覚刺激に頼って正しい動き(ファーストクイックステップ、クロスオーバー、ドロップステップ)を選択する必要がある。またドロップステップ、クロスオーバーラン、加速・絶対スピードが必要とされる。この動きをスムースにすることで外野手のパフォーマンスは向上する。

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重心の移動を意識しながら加速する

【捕手】
コンセントリック筋収縮に頼るので、ベースの筋力が大切であり、素早い反応でブロックスキルを使う。また、バランストレーニング、クロスオーバーステップ、加速、減速を行うことが必要である。閉眼でこのスキルを行っていく。

【投手】
投げた後、片脚でバランスを取りながら減速して着地したら、クロスオーバーなどで素早く加速してボールを取りに行く。

【打者】
振り切ってから減速して素早くファーストベースに加速

【ランナー】
盗塁ではバランスよくパワーポジションフォームを作り、重心を真ん中に置き徐々に右脚に体重を移しながらポジティヴアングルを作り、トリプルエクステンションでスタートする。ベースランニングはベースと反対側に身体を傾けて、ストライドパターンで走ること。反対周りのベースランも、バランス作りには大切である。

実際のトレーニングプラン

ラテラルドリル
(1)5mのマーカーを置く
(2)正しいパワーポジションとバランス(骨盤と肩と目を平行)・ポジティヴアングル・筋の弾性の意識
(3)外側の脚でプッシュ
(4)初級:フォーム・バランスを意識してフォームを作っていく
  中級:スタートの加速と切り返しドリル
  上級:レジストトレーニング→オープンスキルで反応スピードトレーニング

クロスオーバー
動作とバランス、弾性、減速を意識。
(1)5mの巾のマーカー
(2)骨盤・肩・目線平行のバランス→パーフェクトポスチャーの維持
(3)後脚を前脚前にもってきてクロス。前脚でトリプルエクステンションで加速
(4)骨盤をトリプルエクステンションと同時に回転させて加速の向上と腕を逆に動かしバランスキープ

4コーンドリル・3コーンドリル
4つコーンを四角形に並べて、前後、サイド、ドロップステップ
3つのコーンでクロス、オープンのカットドリル

ボールドロップ&キャッチ
スタンス、リアクション、スタートを変えてワンステップでの加速
(1)4m以上離れて前脚部に体重
(2)ボールが離れた瞬間に爆発的スタート。トリプルエクステンションと腕のふり「ハック&ハック」
(3)ワンバウンドでキャッチ
(4)成功したら1mずつ伸ばす
(5)後方に投げることでフライに反応するドリル
(6)リアクションボールを使う事でより負荷を上げることもできる

 以上のトレーニングを行うことで、プレーの「第1歩」が素早く出せることを実感し、パフォーマンスはグッと高まると思う。
少し難しかったかもしれないが、コツコツと取り組んでいこう!


注目記事
・【12月特集】冬のトレーニングで生まれ変わる

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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