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第83回選抜大会総括

2011.04.07

第83回選抜大会総括2011年04月07日

すべてにおいて高水準の東海大相模

第83回選抜大会総括 | 高校野球ドットコム

佐藤(東海大相模)

今年、頂点に立ったのは東海大相模(神奈川)であった。
大会新記録となる総合最多安打(74安打)を打ちたて、さらには史上初となる1試合2本の満塁本塁打を記録。この記録だけ見れば、“猛打の相模”と印象付けたと思われる。
だが、相模の野球は「アグレッシブ・ベースボール」だ。積極的な打撃、積極的な走塁が数々の好投手を攻略したカギとなった。4本塁打を記録したとはいえ、相模の打者に共通して見えるのは徹底としたセンター返しとライナー性の打球を打ち返すこと。

来た球を逆らわずにセンター方向に打ち返し、そして不用意に振り回さずにゴロ、ライナーを意識したレベルスイングで速い打球が次々と内野の間に抜けていった。
そして積極的な走塁。昨秋の神奈川県大会からもすでに走塁においては、高校生のレベルではないと感じたほど。
まず膨らみが少ない走塁、一塁のハーフウェイから外野手のエラーで一気にホームへ還れるベースランニングの速さ、盗塁能力の高さ。

すべてが高校生レベルを凌駕していた。そして守備も外野手だけではなく、内野手の守備力も格段に向上し、鉄壁の守備を築き上げた。
また、相模にとって弱点であった投手陣。これも捕手・佐藤の卓抜なリードセンスによって抑え込んだ。走攻守において高水準を誇る東海大相模。春夏連覇へ向けて更に強いチームに成長していくか楽しみである。


能力のある選手全員で敵を潰しにかかる恐怖感

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三好(九州国際大付)

九州国際大付はタレント性ならば東海大相模を上回るチーム。
最速145キロに多彩な変化球を織り交ぜ、完成度の高い投球を披露した三好 匠、プロ注目の捕手・高城 俊人、長打力に磨きがかかった花田 駿、そして龍 幸之介。センスの高さが光る平原 優太と高い素材の選手が揃った。指揮官を務める若生監督は投手によって打席の立ち位置を指示。それを全員が実行し、本塁打を量産した。
力を備えた各打者が監督の指示を忠実に実行し、相手を一気に崩しにかかりにいく――これほど怖い打線はなかった。高城と三好の打席を見ていると、決してやらされている印象は受けない。

とくに、高城は自分なりに配球を絞って打席に入っているように感じた。こういった選手が出てくるのは望ましいことだ。再び夏の甲子園を目指すには控え投手の台頭が鍵になってくるのではないだろうか。


今大会上位校の選手の共通点

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畔上(日大三)

まず、打者としては、
■ 軸がぶれずに振り抜くことができている(トップの形成が遅れない)
■ 両サイドを打ち返せる
■ 選球眼がよく、ファールで粘られる
高校野球をみてつくづく感じるのが、しっかりと形を作らずに小手先の打撃でヒットを打っている選手が多いことだ。いわゆる走り打ちである。軸がぶれてしまうので、高レベルの変化球に対応できていない。そういった選手は、高校野球で通用しても上では難しい。

甲子園出場校の左打者は上記の3点をこなしている選手が多い。トップの形成が遅れずに身体が突っ込まずに軸がぶれないので、強い打球を打てる。両方向に打ち返せるということは柔軟且つ無駄な動作がないことが求められる。今大会優勝の東海大相模、昨年春夏連覇を果たした興南などは打撃力が高かったが、多くの選手はバットが身体に入らずにトップを取って、懐を空けてインコースを綺麗に打ち返していた。これはあくまで基本的な動作。遠くへ飛ばす方法や、タイミングの取り方は様々な理論があると思うので、取捨選択をしながら練習を積み重ねていくことで、甲子園上位校の選手のようなバッティングに近づけるだろう。

また、守備・走塁のレベルの高いチームが、やはり今大会でも勝ち進んでいった。守備は内野手ならば確実に打球を処理する。外野手ならば一歩目を速くして打球を処理するのは勿論だが、「しっかりと投げる」ことを今回は強調しておきたい。高校野球を見ていつも感じるのはスローイングの形が悪い選手が多いこと。外野手であればダイレクトを狙って山なりの返球、内野手であればしっかりとしたフォームが出来ずに横にずれる、捕手ならば横振りで真っ直ぐいく送球が出来ないなど粗を探せばたくさんある。
だが、強いチームというのはそれが見えない。彼らの送球は正確無比な表現がぴったり。投げる動作は基本的な運動動作。投げることを重視するということは、それに付随して他の守備技術の意識も高まる。ぜひ上のステージで活躍したいと思っている選手は、速く正確に強く投げられるフォームを模索していってほしい。


Pick upゲーム「どんな強豪校も大差で敗れる怖さ」

第83回選抜大会総括 | 高校野球ドットコム

智弁和歌山バッテリー

強豪校の試合ならば絶対に大差で負けることは有り得ないと思うだろう。
しかし、どんな意識が高いチーム、強いチームでも流れ次第では一気にワンサイドゲームになる怖さを感じたのが、準々決勝の智弁和歌山対履正社の一戦である。
4回の裏を終わって1対0で履正社がリード。
ここまで、履正社のエース飯塚 孝史、智弁和歌山の青木 勇人の投げ合いで好カードらしい締まった試合展開となっていた。
しかし、一瞬のミスにより智弁和歌山の歯車が狂うことになる。

一死一、二塁でゲッツーを狙ったファーストが間違ってファーストベースを踏んでしまいゲッツーにならずに流れを悪くすると、さらにサインミスによる補逸で1失点。これで冷静さを欠いた智弁バッテリーは7点を失った。
頭脳明晰なリードができる道端にしても、迷いがあれば冷静な試合運びができないということを痛感させられた。
一瞬のミスを疎かにしてはいけないが、ミスを引きずってはいけない。それを痛感させられた試合であった。

(文=高校野球情報.com 編集部 )

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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