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反復練習による疲労骨折を未然に防ぐ

2020.11.30

反復練習による疲労骨折を未然に防ぐ | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 本格的なオフシーズンに突入する時期となりました。体力強化のためのトレーニングやランニング、技術練習では基礎練習といった地道な反復動作が多くなることも想定できます。さて今回はこうした反復練習やランニング量などが増える時期に多く見られる疲労骨折について、その兆候や予防法、対応などについて特に下肢を中心としてお話をしたいと思います。

そもそも疲労骨折とは?

反復練習による疲労骨折を未然に防ぐ | 高校野球ドットコム
繰り返される外力だけではなく、身体的な特徴や走り方なども疲労骨折の要因となる

 疲労骨折とはどのような骨折のことを指すのでしょうか。体に疲労がたまったことで起こる骨折という意味ではなく、同じ動作を繰り返すことである特定の部位に外力が加わり、やがて骨の連続性を断つほどにまでに衝撃が加わり続けることで起こる骨折のことを指します。針金を同じところで何度も折り曲げていると、折り曲がった部分で針金が折れてしまうように、疲労骨折は「金属疲労」という言葉に由来しています。たとえばその人の持つ体力レベルを超えて素振りを続けていると、回旋で加わる大きな外力が引き金となって腰椎分離症を起こしたり、硬いアスファルトの上を毎日、長時間走り続けていると脛の骨が疲労骨折を起こしたり…といったことが考えられます。

 疲労骨折は体を支える骨を中心に起こりやすいことが知られています。すねの骨である腓骨(ひこつ)、脛骨(けいこつ)、足の骨である中足骨、膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨(二分膝蓋骨)などは特に成長期の選手に見られるものです。また回旋動作による腰椎分離症や、肋骨の疲労骨折などもありますし、繰り返されるバッティングの衝撃によって手の骨(有鉤骨、舟状骨など)に疲労骨折が見られることもあります。体が成長段階にある皆さんは大人に比べて骨が柔らかいため、繰り返される外力によって疲労骨折を起こしやすい特徴があるということも理解しておきましょう。

「痛くてもプレーができる」は要注意

 疲労骨折は一回の衝撃で骨折するものではなく、繰り返しかかる外力によって骨がダメージを受けるスポーツ障害です。最初のうちは軽い違和感や痛みなどを覚えますが、多少の痛みがあってもプレーを継続することができるため、非常に厄介なケガの一つと言えるでしょう。特に下肢への負担が大きくなるランニング動作やジャンプ動作は、たわみをもつ脛骨や中足骨などに大きな衝撃がかかりやすく、骨に微細損傷をもたらします。この状態でも痛みを感じるはずなのですが、我慢してプレーを続けているとやがて骨にヒビが入り、完全骨折へと移行します。RICEなど痛みに対する基本的なケアを行っても日を追うごとに痛みの度合いが強くなる、運動中や運動後に痛みが強くなる(運動痛)、圧痛(患部を押すと痛みを感じる)がある、痛みの部位が腫れたり、ボコッとしたと小さな隆起が見られたりする場合には運動を中止して、医療機関を受診するようにしましょう。疲労骨折は放置しておくと、競技復帰までに時間がかかってしまうものです。気合いや根性で乗り越えられるものではありませんので、体力レベルにあった練習量と疲労回復にかかる時間を考慮し、疲労骨折を防ぐように心がけましょう。

 また内反捻挫をすると、通常は外側の組織が損傷しますが、ときどき足首の内側も痛くなることがあります。これは、足首を内側に大きくひねることによって、内側にある靭帯などが軟部組織との挟み込みを起こしたり、骨との衝突などによって痛みを生じることなどがその原因として考えられますが、時間の経過とともに軽減していくケースが多いと考えられています。

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疲労骨折を予防しながら練習をする

反復練習による疲労骨折を未然に防ぐ | 高校野球ドットコム
偏平足改善のためのタオルギャザートレーニング

 疲労骨折の状態まで進行してしまうと競技復帰に時間がかかります(時には手術が必要となることもあります)。高校野球ができる期間(約2年半)という時間を考えると、疲労骨折を引き起こす要因を把握し、適切な対応をとってケガそのものを予防することが必要不可欠であると言えるでしょう。疲労骨折の要因について考えられるものを挙げてみます。

●体力レベルを超えて繰り返される単調な練習
●身体の構造上の問題(偏平足や脛骨の形状等)
●身体の使い方の問題(走り方、着地の仕方、筋力バランス等)
●シューズ等の問題(外的な要因:シューズの減り具合、アスファルトなど路面の問題等)

 基礎練習は反復することが多いため、どうしても体の弱い部分を中心に大きなストレスがかかりがちです。トレーニングなどで基礎筋力を上げることと並行しながら、体力レベルにあった練習内容になっているかどうかを確認するようにしましょう。ここに挙げたものは一例に過ぎませんが、こういった要因を一つ一つ確認し、当てはまるものがあれば改善しながら練習を行うことが大切です。特に偏平足による足底アーチの低下をトレーニングで改善する、走り方を見直して膝が内側に入らないようにする、普段使っているシューズがすり減っていないか、側面が破れていないかといったこと見直すといったことは、日々の練習の中でも取り入れやすいので、ぜひチェックしてみてください。あとは痛みがあるのに「これぐらいならプレー出来るから」といってガマンしすぎないこと。短い期間で競技復帰出来るレベルのケガが、そのままプレーを続けることによって2ヶ月、3ヶ月と時間がかかってしまうことも少なくありません。高校野球に打ち込める時間は限られています。今一度そのことを思い出しながら、早め早めに対応するように心がけましょう。

反復練習による疲労骨折を未然に防ぐ

●疲労骨折は同じ部位に外力が繰り返し加わることで起こる
●特に成長期の体は骨が柔らかく、疲労骨折を起こしやすい特徴がある
●「痛くてもプレーできる」と無理をし続けないこと
●運動中、運動後に強くなる痛みや、圧痛、骨の隆起などは疲労骨折のサインかも
●疲労骨折を起こす要因を一つ一つ確認し、改善しよう
●個人の持つフィジカル面の要因とともに環境などによる外的要因も確認しよう

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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