夏は誰もが絶賛する投球を見せる!全国クラスのポテンシャルを秘める144キロ左腕・石澤大和(網走南ヶ丘)
北北海道に全国クラスの左腕がいる。その名は石澤大和(3年)。スペックを説明すれば、こんな左腕が網走にいるのか?と驚くはず。
・左腕から最速144キロ
・決め球のスライダーは手元で鋭く落ちて、球速は130キロ前半に達することも
・完成度の高い下半身主導の投球フォーム
・肩、肘が柔らかく、なで肩で、投手として理想的な体型
こう聞いただけで、どんな左腕なのかワクワクするはずだ。そんな石澤はどんな球歴を辿ってきたのか。成長の歩みに迫る。
小学校で全国、中学校で全道を経験。網走の仲間と一緒に甲子園を目指す道を選んだ
石澤大和
5月11日。北見支部予選が行われた北見北陵野球場は極寒だった。
気温9度で小雨が降り、投手にとっては最悪なコンディション。そんな中、網走桂陽戦で先発マウンドに登った石澤の投球は素晴らしいものがあった。
ストレートは常時130キロ後半~140キロを計測。そして120キロ後半のスライダーは低めに決まる。しかし、立ち上がりはストレートが高めに浮いてしまい、いきなり2失点。「最初はボールが浮いて焦ってしまいましたが、その後は落ち着いて投げようと思いました」と切り替えた石澤は、4番池森 勇太(3年)から1番打田連まで7者連続三振を奪う快投。その後も三振を奪い続け、3失点、17奪三振の完投勝利を挙げた。
大きなインパクトを与えた石澤は全国的には無名だが、道内のライバル球児からすれば、小学校時代から凄い選手だったと絶賛する。
網走つくしマスターズ時代、エースとして2013年に開催された全日本学童軟式野球大会マクドナルドトーナメントに出場し、3回戦まで導く活躍。さらにこの年、北海道日本ハムファイターズジュニアに選出され、NPBジュニアトーナメントに出場。
そして中学時代は全道大会にも出場し、130キロ前半の速球を投げ込む左腕として活躍。多くの道内の強豪校からの誘いがあった。それでも地元の網走南ヶ丘に進んだのは網走の仲間の存在があった。
「仲間や知り合いと一緒にやりたかったからです」
こうして、気心知れた仲間とともに甲子園を目指してスタートした石澤は、この3年間でも確かな成長を見せていく。
遠軽戦に打ち込まれた経験を夏に生かして
試合に勝利し笑顔を見せる石澤大和
石澤にとって幸運だったのは、網走南ヶ丘の環境は、ポテンシャルを大きく伸ばす上で最適な環境だった。トレーニングに力を入れており、シーズン中でも週2回のウエイトトレーニングや体幹トレーニングを導入。また、食事トレーニングでは多いときにご飯を1日に2合から2合半を食べる。
「食べないと筋肉もつきませんから」
入学当時59キロだった体重は、3年春には71キロまで増量。今春、帯広農との練習試合で最速144キロを計測。1年秋から習得したスライダーも感覚を大事にして、高速スライダーへと昇華した。
1回戦の網走桂陽戦が終わり、2回戦の遠軽戦へ向けて、「強敵で気が抜けない相手です」と警戒していた石澤だったが、厳しい結果が待ち受けていた。
4回まで8失点を喫し、途中降板。その後、外野や一塁を守っていた石澤は8回途中からマウンドに登ったが、勢いに乗った遠軽打線を止めることができず、コールド負け。悔しい結果となった。石澤は「この試合では全て高めに浮いてしまい、全く修正できないままに終わってしまいました。低め低めに投げていれば…」と悔しさをにじませる。
夏まであと1ヶ月。石澤は「時間が本当にないので、投球練習では、ピッチングの幅を広げることにこだわりながら取り組みたい」と意気込んだ。
この春はストレート、スライダーの球速も上がり、「レベルアップは実感できた」と語る石澤。あとは強豪校の打者にも通用するコントロールを身に付けること。
憧れの投手は古谷 優人(江陵-福岡ソフトバンク)。細身の体型から150キロ台の速球を投げ込む古谷の存在は刺激となっている。
「最終的には古谷さんのような投手になりたいですが、今の自分にとっては程遠い方です」
それでも…。自分の課題に向き合って、一歩ずつ成長を果たせば、この夏、全道大会に出場すれば…誰もが絶賛する投球を見せてくれるはずだ。
文=河嶋 宗一