寺岡 寛治投手(石川ミリオンスターズー楽天)「出会い」に感謝し、東北で羽ばたく豪腕へ【後編】
2015年夏、ある人の運命の言葉が高校時代から眠りにあった豪腕を再び目覚めさせ、2016年ドラフトでのある選手の指名が最後にルートインBCリーグへ進む決め手に。そして一年後、彼はついに夢への切符を勝ち取った……。東北楽天ゴールデンイーグルスから7位指名を受けた石川ミリオンスターズの最速155キロ右腕・寺岡 寛治・25歳。その壮大な野球ドラマの一端を、ぜひ聞いてほしい。
■寺岡 寛治投手(石川ミリオンスターズー楽天)5年の沈黙経て、再び動いた「投手」の時計【前編】から読む
石川ミリオンスターズでの濃密な1年間
――そして2017年はルートインBCリーグ・石川ミリオンスターズでのプレーを選択します。あえて「独立リーグ」という場所を選択した理由は?
寺岡:社会人2年目では最速155キロ・常時150キロを出せるようになり、カットボール・ツーシームなど変化球も使えるようになるなど投手としての手ごたえをつかんでいたのですが、社会人野球は一発勝負なので僕の登板はどうしても有吉さん、谷川(昌希・阪神タイガース5位指名)の2本柱が投げ抜いた後になってしまう。
僕としては投手としてもっと幅を広げたい、プロを目指したいと思っていたところに、独立リーグの存在を知ったことで、進んでみようと思いました。
――最終的に独立リーグ行きを決断した理由には、ある先輩選手のドラフト指名があると聞いています。
寺岡:九州三菱自動車で1年間一緒にバッテリーを組んでいた1学年上の大村 孟さんが石川ミリオンスターズから育成ドラフト1位で東京ヤクルトスワローズから指名を受けた時に「ああ、独立リーグからプロに行けるんだ」と思ったんです。
――そして、特別合格で石川ミリオンスターズに入団。独立リーグで感じたことはありますか?
寺岡:バス移動は長時間ですので、ストレッチポールを使ってアップで身体をほぐすことには気を遣いました。食事面も自分で気を遣いながら補えないものはサプリを使ったり、試合後には温泉を活用したり、身体のメンテナンスは大変でした。でも、そのハングリーさが僕の力になりました。毎日試合があるので、球数を少なくする方法も考えましたし、カラバイヨ(群馬ダイヤモンドペガサス・元オリックス・バファローズ)、ペゲロ(富山GRNサンダーバーズ・元MLBサンフランシスコ・ジャイアンツ)などの外国人強打者を抑えるために、カットボールには特に磨きをかけました。
前半戦は納得できない投球もありましたが、後半戦に入ると失投も少なく、思い通りのピッチングができるようになりました。カラバイヨからもカットボールで三振が取れるようになりましたし、千葉ロッテマリーンズ二軍相手にもカットボールは使えたので、もう一段階上に行きたいと思えるようになりました。
――かつ、石川ミリオンスターズでも指導者には恵まれていました。
寺岡:はい。特に総合コーチの武田 勝さん(北海道日本ハムファイターズから派遣)の話は勉強になりました。自分とは180度違うタイプの投球術をうかがうことで変化球の使い方を学びました。石川ミリオンスターズに行って本当によかったです。
東北の地で「勝ちを消さない」投手になる
――その努力が実って10月26日の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で東北楽天ゴールデンイーグルスから7位指名。指名の瞬間はどのような気持ちでしたか?
寺岡:ドラフト前は全然イメージがわかなかったんですが、指名された瞬間は「嬉しい」の一言でした。石川ミリオンスターズからは寺田 (光輝・横浜DeNAベイスターズ6位指名)さん、沼田(拓巳・東京ヤクルトスワローズ8位指名)の3名がドラフト指名を受けて、3人で喜べたこともよかったです。僕は1年でNPBに進めましたけど、寺田さん、沼田はルートインBCリーグで複数年やってきたので、それが実ったことも嬉しかったですね。
――石川ミリオンスターズのファンや石川県の皆さんが喜んでくれたことも嬉しさを倍増させたのでは?
寺岡:石川ではファンの皆さんから常に暖かい声援を頂きましたし、地域の皆さんの協力もすごく頂きました。それは本当にありがたかったですし、だからこそ球団初の本指名という看板は崩してはいけないと思っています。
――また、寺岡投手の指名は後に続く独立リーグの選手たちにもいい励みになったと思います。寺岡投手から一言アドバイスがあれば、教えてください。
寺岡:僕にもうまくいかない時期はありましたけど、その中でも自分の目標を見失わなかったことがドラフト指名につながったと思います。だから、どんな時期でも上・前を見ること、上に行きたい強い気持ちを持つことが大事だと思います。
――では、最後に東北楽天ゴールデンイーグルスでの抱負を聞かせてください。
寺岡:まずは一軍に定着し、「勝ちを消さない。絶対に負けを作らない」投手になること。1点差のゲームで1点差を守り切れる投手になりたいです。その結果としてホールド王のタイトルを狙っていきたい。
そして僕は新人でもチーム内では中堅の年齢になるので、投手陣を引っ張れる存在になりたいと思っています。寺田さんや沼田とも交流戦や日本シリーズで投げ合えるようにがんばりたいです。
(文・寺下 友徳)
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