試合レポート

早稲田実業vs大成

2021.07.14

下級生4人が存在感示した早稲田実業が初戦でコールド発進

 西東京が誇る名門・早稲田実が初戦を迎えた。今大会はノーシードからの登場となり、シード校を脅かす存在として、例年以上に注目が集まっている。14日の初戦・大成戦でも多くのファンが詰めかけるなかで試合が開かれた。

 先攻の大成が2回、7番・河村 優輝の犠牲フライで1点を取ったところで試合が動いた。追いかける展開となった早稲田実だが、直後の攻撃で7番・國光 廣太のタイムリーで同点に追いつく。さらに相手バッテリーのエラーで2点目を奪い、勝ち越しに成功する。

 4回に早稲田実は2番手・齋藤 士龍が2点目を失ったものの、直後に3番・清宮 福太郎のタイムリーと6番・壽田 悠毅の犠牲フライなどで5対2と再び主導権を握った。

 5回には4番・辻村 征也のタイムリーなどで一挙4得点で9対2と早稲田実が試合を決めた。最後は、5回からマウンドに上がったエース・田和 廉が大成の反撃を許さずにゲームセット。9対2で早稲田実が勝利した。

 注目スラッガー・清宮は3打数2安打2打点2四球と結果を残した。エース・田和は3回無失点と投打の要が揃って活躍した。この2人と対戦した大成・三木 樂種は「清宮くんは身体が大きいですし、打席から凄いオーラを感じました。田和君も低めにボールが集まり、変化球でカウントを取ってくる。本当にいい投手だと思いました」と投手ならではの感性で2人の凄さを話してくれた。この2人に関しては指揮を執る和泉監督も「清宮、田和が落ち着いて機能すれば、チームも乗ってきます。だから2人がどんな結果でも受け入れて落ち着いていれば、チームも粘り強く最後まで諦めずに戦えると思います」と投打の柱へ期待を込めている。

 ただ、春季大会を終えてから、対外試合をあまり組めていないことから、あまり固定されたメンバーというわけではなく、「背番号に関係なく、調子のよい選手から使っていきたいと思います」とその時のベストメンバーで戦う。勝ち上がっていく中で、勝利に一番近づくメンバーを決めたい想いを口にした。


 事実、この試合では積極的に選手交代のカードを切り、多くの選手が試合に出場して、結果を残してきた。そのなかでも気になったのは、下級生4名だった。

 先発のマウンドを任された2年生右腕・石島 光騎は、身長178センチを活かすべく、角度を付けた投球が光る本格派投手だ。セットポジションから始動するが、あまり歩幅を広く取らずに少し突っ立つような形だが、上体を高くして右腕を振り下ろしていく。

 力強さすらあるフォームから速球にスライダーなどの落ちる系の変化球で大成のバッターから空振りを奪った。3回で降板したが、秋以降の中心となりうる投手だと予感させるボールを投げ込んでいた。今大会に限らず、新チーム以降もチェックしておきたい。

 その石島と同じ2年生で、6番サードでスタメンだった壽田 悠毅も注目したい選手だった。スクエアスタンスの構えから、逆方向へ巧いバッティングを見せる。あとはインコースへのボールの対応がポイントとなるだろうが、随所にポテンシャルの高さを感じさせており、今後も気になる選手だった。

 そして、この試合で1年生が2人スタメンに名を連ねた。

 1人目は1番・セカンドと切り込み隊長を任された箭原 裕太郎だ。中学時代は浦和シニアに所属した箭原は足の速さが光る。手動の計測だが、一塁駆け抜けは3.8秒前後の脚力がある。スクエアスタンスで構え、足をスッと上げてタイミングをとると、軸をぶらすことなく鋭くバットを振り抜く。1年生ながら積極的にバットを振っていける姿勢も素晴らしく、変化球を投げられても開きを我慢して上手く合わせるバットコントロールも印象に残った。名門・早稲田実の1年生1番打者は、この夏で一気にブレークするか楽しみだ。

 その箭原ともに二遊間を組み、9番打者としてスタメン出場した山本 蒼空が2人目の注目ルーキーだ。父は元プロ野球選手・山本省吾さんであることも知られているが、一番の魅力は和泉監督も評価しているバッティングだ。

 スイングの幅は小さいが、鋭くバットを振り抜いていく。また箭原同様に軸があまりブレないため、確実にボールを捉えている。パンチ力はこれから身につけていくことになるだろうが、バッティングの技術は光るものがある。

 加えて一塁駆け抜け3.7秒、盗塁時は3.3秒と手動での計測だが、足も兼ね備えている。早稲田実の将来を背負う野手として活躍が楽しみになった。

 次戦は佼成学園と激突する早稲田実だが、リベンジを果たすためには3年生はもちろん、下級生を含め総結集して挑まなければならないはずだ。そのなかに紹介した4選手が先頭を切って活躍するか、試合の行方とともに楽しみにしたい。

文=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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