大阪産大附vs吹田
堅守の中心にいたキャプテン
飛んできた打球は7個。うち、ピンチでは3度もあった。
だが、どの打球も完璧にアウトに仕留めた。
「夏の大会は独特の緊張感があることは去年の経験から分かっていたのですけれど、相手は私学(私立高校)のチームだし、とにかく自分の力を出し切りたかった。結果は悔しいですが、自分の思うようなプレーはー出来たと思います」。
キャプテンでショートを守る大坪優介は、涙を浮かべながらもそう言って胸を張った。
結果は、5対1。
8回に4点を奪われ突き放されたが、毎回のようにランナーを背負い、再三のピンチでの堅守で何度もチームを救った大坪の姿に、勝利をおさめた大産大付の小田洋一監督は「チャンスでショートの硬い守りに何度も阻まれた」と大坪のプレーに脱帽していた。
大坪には原点になる試合がある。昨夏の大阪大会の2回戦。門真なみはやとの戦いで、自らのエラーの走者を置いて、2ラン本塁打を浴びた。
「先輩が“気にするな”と声を掛けてくれたのですが、結局その２点が決勝点になってしまって…。しばらく、前向きな気持ちになれませんでした」。
新チームではキャプテンに任命された。もう、下を向いていられない。
ノックでは、1球目から果敢にボールに飛びつくことを心掛けるようにした。自主練習も重ね、体からしっかりボールに向き合えるよう、心身ともに鍛えてきた。
自分がプレーで乗っていけば、チームにも勢いがつく。そして、周りの野手が好プレーを見せれば、笑顔で声を掛けた。
「良い守備をしたヤツに声を掛けるのはうちのチームの伝統。ピンチでも積極的に声を掛け合って、コミュニケーションを取るようにしているんです」（大坪）。
今日の試合でもそうだった。5回を除いて毎回のように先頭打者が出塁した。塁がすべて埋まるシーンは3度もあった。それでも、全員で声を掛け合い、果敢に相手に立ち向かっていった。
突き放されるまでは、相手に食らいつき引き離されるまいと全員で守り抜いた。
「最近の練習試合ではエラーが少なかったので、とにかくきちんと守れたらと思っていましたが、ゲームプラン通りの試合でした。あれだけ攻められながら、よく守ってくれました」と、大枝聖也監督もナインを称えた。
無失策の守備で、何度も崩れそうになったピッチャーを支えてきた吹田。
その中心にいた大坪の姿は、勝者よりも大きく見えたような気がした。
スターティングメンバー
【吹田】
4山脇潤也
9中村貴信
8田邊恭介
2水野雅博
3赤松翼
7菱刈蓮斗
6大坪優介 (主将)
1原大貴
5岡村徹太
【大産大付】
4辻直樹
7小町亮太
5前田隼汰
3荒木日向 (主将)
9蒲池竜也
2松下智拓
6森安徹成
8桧潤
1平島和弥
(文＝沢井史)
