2023年の高校野球界の中心には、この男が必ずいるはずだ。
広陵(広島)の真鍋 慧内野手(2年)。2年連続で明治神宮大会でホームランを放つなど、高校通算49本塁打まで積み重ねた世代屈指のスラッガーである。
2021年の明治神宮大会では大阪桐蔭・前田 悠伍投手(2年)や、花巻東・佐々木 麟太郎内野手(2年)、九州国際大付・佐倉 侠史朗内野手(2年)とともに「高校四天王」と称され、高い注目を集めた。
後編では、2年生の1年間を振り返っていきたい。
5か月で20本塁打まで伸ばすも、チームは夏の甲子園に届かず

真鍋 慧(広陵)
高校通算10本塁打で1年目を終えた真鍋。「いま振り返れば、もう少し打てれば良かった」と後悔している様子だったが、当時も同じ思いだったようだ。オフシーズンの間に、より飛距離を出せるようにするために打撃フォームも微調整。大枠に変えることなく、バットのヘッドを立てて構えるようにした。
「飛距離を出すため」という狙いで佐野 恵太外野手からアレンジしたフォームで、2年生の夏までで20本塁打。およそ5か月間で10本塁打を積み重ね、1年生の時に比べると、明らかにペースは早まった。
ただチームの結果は悔しいものになった。
センバツは2回戦・九州国際大付(福岡)に敗れ、春は中国大会で準優勝を飾るも、夏の広島大会では3回戦で英数学館に敗れた。
「(センバツでは)小さいころからの夢だった甲子園に立てたのは嬉しいですが、内容については求めていた結果が出ていなかったので反省です。
夏についても、負けてしまって3年生には申し訳なかったです。だからこそ、自分たちはどんな相手でも全力で戦うことを誓って、プレーするように意識しました」
センバツは7打数4安打1打点。夏の広島大会では8打数2安打1打点と結果を残したが、ホームランは打てず、夏の甲子園を逃した。1年生の時に比べてホームランが出るペースは早まったものの、そうした結果があったことや、「日々良くなりたいと思っているので、色んなことを試しています」と現状に甘んじることなく、常にベストを探す姿勢もあり、真鍋はさらに飛距離を出すために、新たなフォームに挑戦した。
村上 宗隆で一気に量産態勢へ

真鍋 慧(広陵)
「同じ左の長距離ヒッターで、そのとき活躍されていた」と、ヤクルト・村上 宗隆内野手(九州学院出身)を参考にした。これが、新チーム時点で20本塁打だったところから、量産態勢に入った大きな鍵である。
「これまでは佐野選手を参考にしていたので、肩の近くでトップを作る、コンパクトな構えで打つイメージでした。ただ村上選手を参考にするようになって、大きく構えたことでゆとりが生まれたので、バットを出しやすくなったのが良かったと思います」
他にもあらかじめ、右腕を張った状態で壁を作ることで、左腕で押し込んだ時に、レベルスイングがしやすいというメリットもフィットした。無駄を減らしつつも、力強くレベルスイングをすることが、真鍋にとっての理想のスイング軌道だという。それに近い状態でスイングできたことで、一気にホームランが増え、上手くいくかと思われた。
ただ、三冠王のフォームをマスターするのは簡単ではなかった。身体から離れた場所でトップを作るため、トップの位置が決まらないと、始動が遅れて差し込まれるケースが増えてくる。真鍋はそのデメリットに引っかかった。
「トップの位置が決まらずに、差し込まれるケースが増えてしまったので、明治神宮大会直前に前のフォームに近い形に戻しました。飛距離を出す、強いスイングを求めすぎてしまったと思います」