Interview

わずか1年で40本塁打近く一気に増やした広陵・真鍋慧 ラストイヤーへ「がむしゃらに1本ずつ」【後編】

2023.01.07

 2023年の高校野球界の中心には、この男が必ずいるはずだ。

 広島広陵(広島)の真鍋 慧内野手(2年)。2年連続で明治神宮大会でホームランを放つなど、高校通算49本塁打まで積み重ねた世代屈指のスラッガーである。

 2021年の明治神宮大会では大阪桐蔭前田 悠伍投手(2年)や、花巻東佐々木 麟太郎内野手(2年)、九州国際大付佐倉 俠史朗内野手(2年)とともに「高校四天王」と称され、高い注目を集めた。

 後編では、2年生の1年間を振り返っていきたい。

5か月で20本塁打まで伸ばすも、チームは夏の甲子園に届かず

わずか1年で40本塁打近く一気に増やした広陵・真鍋慧 ラストイヤーへ「がむしゃらに1本ずつ」【後編】 | 高校野球ドットコム
真鍋 慧(広陵)

 高校通算10本塁打で1年目を終えた真鍋。「いま振り返れば、もう少し打てれば良かった」と後悔している様子だったが、当時も同じ思いだったようだ。オフシーズンの間に、より飛距離を出せるようにするために打撃フォームも微調整。大枠に変えることなく、バットのヘッドを立てて構えるようにした。

 「飛距離を出すため」という狙いで佐野 恵太外野手からアレンジしたフォームで、2年生の夏までで20本塁打。およそ5か月間で10本塁打を積み重ね、1年生の時に比べると、明らかにペースは早まった。

 ただチームの結果は悔しいものになった。

 センバツは2回戦・九州国際大付(福岡)に敗れ、春は中国大会で準優勝を飾るも、夏の広島大会では3回戦で英数学館に敗れた。

 「(センバツでは)小さいころからの夢だった甲子園に立てたのは嬉しいですが、内容については求めていた結果が出ていなかったので反省です。
 夏についても、負けてしまって3年生には申し訳なかったです。だからこそ、自分たちはどんな相手でも全力で戦うことを誓って、プレーするように意識しました」

 センバツは7打数4安打1打点。夏の広島大会では8打数2安打1打点と結果を残したが、ホームランは打てず、夏の甲子園を逃した。1年生の時に比べてホームランが出るペースは早まったものの、そうした結果があったことや、「日々良くなりたいと思っているので、色んなことを試しています」と現状に甘んじることなく、常にベストを探す姿勢もあり、真鍋はさらに飛距離を出すために、新たなフォームに挑戦した。

村上 宗隆で一気に量産態勢へ

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真鍋 慧(広陵)

 「同じ左の長距離ヒッターで、そのとき活躍されていた」と、ヤクルト・村上 宗隆内野手(九州学院出身)を参考にした。これが、新チーム時点で20本塁打だったところから、量産態勢に入った大きな鍵である。

 「これまでは佐野選手を参考にしていたので、肩の近くでトップを作る、コンパクトな構えで打つイメージでした。ただ村上選手を参考にするようになって、大きく構えたことでゆとりが生まれたので、バットを出しやすくなったのが良かったと思います」

 他にもあらかじめ、右腕を張った状態で壁を作ることで、左腕で押し込んだ時に、レベルスイングがしやすいというメリットもフィットした。無駄を減らしつつも、力強くレベルスイングをすることが、真鍋にとっての理想のスイング軌道だという。それに近い状態でスイングできたことで、一気にホームランが増え、上手くいくかと思われた。

 ただ、三冠王のフォームをマスターするのは簡単ではなかった。身体から離れた場所でトップを作るため、トップの位置が決まらないと、始動が遅れて差し込まれるケースが増えてくる。真鍋はそのデメリットに引っかかった。

 「トップの位置が決まらずに、差し込まれるケースが増えてしまったので、明治神宮大会直前に前のフォームに近い形に戻しました。飛距離を出す、強いスイングを求めすぎてしまったと思います」

[page_break:チャンスに強い4番として1本でもアーチを]

チャンスに強い4番として1本でもアーチを

わずか1年で40本塁打近く一気に増やした広陵・真鍋慧 ラストイヤーへ「がむしゃらに1本ずつ」【後編】 | 高校野球ドットコム
真鍋 慧(広陵)

 対応力と飛距離の相反する2つをスイングの中で確立のはやはり難しい。それでも村上を参考にしたフォームで40本以上を積み重ねていくと、最後の明治神宮大会では新たなフォームで2本のホームランを放ち、通算本塁打数を49本まで伸ばすことができた。

 「自分は腕が長いので、最初からあまりコンパクトになると振りにくいので、右腕を伸ばして、大きく構えます。
 すり足でタイミングをとると同時にバットを寝かせれば、右腕は自然に折りたたんで耳元にトップができます。そこからは左腕を脇腹に落としてあげて、グリップが身体の近くを通るようにしてレベルスイングをします」

 まさに佐野と村上の良いところを掛け合わせたような打撃フォームを見出した真鍋は、明治神宮大会に再び乗り込むと、11打数5安打で打率.455とチームトップタイ。2本塁打、3打点とチームの主砲、そしてドラフト注目スラッガーの期待値に恥じない成績を残した。

 高校2年生の1年間で40本塁打近く積み重ねて、ラストイヤーを迎える2023年も非常に楽しみだが、さらなる成長への鍵となるのが、左腕にあるようだ。
 「左腕の押し込みが現時点で弱いので、バットのヘッドも下がってしまい、インコースに詰まってしまうことが多いと感じています。そこが改善できれば、レベルスイングでスイングもできると思うので、スイング軌道も改善できると思います」

 目標のホームラン数はないが、「がむしゃらに1本ずつ出したい」と積み重ねていきたいときっぱり。そのうえで、「チャンスでランナーを返せる、1本欲しい時に打てるようにしたい」と話した。

 春までには長打力と対応力、ともに磨きをかけたいと話していたが、指揮官の中井監督も「飛ばす能力が元々素晴らしかったです。だからこそ求めるものがありますし、取り組み方といったあり方の部分についても、伸びしろが沢山あります」と期待値はかなり高い。

 そうした期待に応えられる選手こそ、真鍋が「最終的な目標です」といっていたプロ野球選手である。それだけの資質があるか、実力とともにこの1年で証明してほしいと強く願っている。

◆真鍋慧の打撃フォームまとめ

高校2年生:モデル・村上 宗隆の飛距離を重視した打撃フォーム
・体から離して大きく構えてトップを作ることで、ゆとりを作る
・右腕を張った状態で構えておき、壁を作る
・左腕で押し込んだ時に、右腕が壁になっているため自然にレベルスイングに入れる
⇒力強いフォームだが、トップが決まらないと差し込まれる

現在:佐野 恵太村上 宗隆の組み合わせ
・右腕を張って大きく構えておく
・耳元でトップを作ることで、右腕は自然と折りたたまれる
・左腕を脇腹に落とすことで、身体の近くをグリップが通せるようにしてスイングする
⇒バランスはいいが、左腕の押し込みが現在の課題となっている

(取材:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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