Interview

「前田悠伍(ソフトバンク1位)には負けない!」東松快征(オリックス3位)がこの1年で紡いできた「熱すぎる言葉」「一流への準備」<年末特別企画・ドラフト指名5投手の成長物語①>

2023.12.28


ドラフト前インタビューに応じた東松快征(享栄)

パ・リーグ3連覇を達成し、強力若手投手陣を誇るオリックスに、将来性豊かなサウスポーが加わった。ドラフト3位で指名された東松 快征投手(享栄)である。

今年のドラフトでは50名の高校生が指名された。その中でも東松はトップクラス能力の持ち主だ。最速152キロの速球は、同世代高校生左腕では最速。さらにチェンジアップ、フォーク、カーブ、カットボールを操り、器用な一面も持ち合わせている。

これまで多くのNPB入りした選手を取材してきたが、東松は確実に一軍で活躍できる能力と意識の高さを持った投手だ。高校ラストイヤーでの彼の成長する姿と発した言葉の数々は、将来のオリックスのエースとしてマウンドに立つ姿を夢想させてくれた。

「前田のことは尊敬している」

東松快征(享栄)

昨年冬。当時のドラフト戦線で東松と共に評価が高かったのは、同じ左腕の前田 悠伍投手(大阪桐蔭-ソフトバンク1位)だった。私の前で東松は前田へのライバル心をいっさい隠そうとしなかった。
「この世代は良い投手が本当に多いと思います。その中でも1番を目指してやっています。『誰にも負けない』ということを意識して、最終的に大阪桐蔭の前田投手と甲子園で投げ合って勝ちたいです」

きっぱりと言い切った東松。目標実現のためにまず、フォームのモデルチェンジを行った。入学から2年夏まで高々と上げていたが、足の上げ幅を抑えるようにした。
「これまでは力強く投げることを目指していましたが、それだと打たれやすいと言いますか、変化球と真っ直ぐでフォームが変わってしまい、球種がわかりやすくなっていたので、フォームをゆったりにして変化球と真っ直ぐのフォームの差をわかりにくくしました」

続いてパワーアップのために、食事量を増やし、2年夏の体重83キロから8キロ増量の91キロへ。練習には体幹や柔軟性を高めるために水泳を取り入れた。ストイックにレベルアップを目指す姿が見られた。

4月。東松は高校日本代表候補入りし、強化合宿に参加した。ライバル・前田もメンバーに選ばれていた。
「自分が思っていたより柔らかくて話しやすいなと思いました。自分にはなくて、前田にあるもの。前田になくて、自分にあるものを共有し合いました」

東松が前田より上回るものはスピード、体に秘めるパワー。前田が東松より上回るものといえば、マウンド捌き、制球力の高さだ。
「前田はマウンドでの冷静さや試合作りやコントロールなど、投げること以外でも冷静にいられる。学ぶところがたくさんあります。尊敬もしています。」

東松はこの合宿の紅白戦で登板。3回1失点、参加した左腕では最速で、全体では2位タイとなる145キロを計測し、スカウト陣へアピールに成功する。
「自分の真っ直ぐは自信あって、アピールできましたし、良かったと思っています」

新たな武器・フォークとカットボールを身につける

東松快征(享栄)

6月。享栄大阪桐蔭と練習試合を行った。学校行事の一環としてナゴヤドームで行われたこの一戦はスカウトだけではなく、多数のメディア関係者も集まった。
東松は5回無失点の好投を演じる。フォークを武器に大阪桐蔭の強打者から三振を奪う投球は見事だった。
「自分はストレートが得意なんですけど、フォークはストレートに近い振りで投げられる変化球なので、自分にとって投げやすいですし、真っ直ぐの軌道で沈む変化球なので、自分に向いているなと思いました。フォークは春から練習し始めました」

東松はフォークを投げる際、深く挟んでそのままベースに落とすことをイメージしているという。さらにベース手前で鋭く曲がるカットボールもマスターした。本人によると、最速136キロも計測したこともあるという。
「自分のスライダーは、ベストボールを投げても当てられてしまうんです。いろいろ試してみてカットボールは投げやすかった。スライダーよりも打たれずに投げることができて、空振りが取れています」

実は東松のスライダーはスカウト陣からの評価は芳しくなかった。そのことは自分でもわかっていたため、スライダーに代わる武器としてフォーク、カットボールを極めようとしたのだ。

カットボールは夏の大会でも東松の大きな武器となった。
「基本的に真っ直ぐの握りから少しずらすイメージです。それでも真っ直ぐと同じ腕の振りで投げていくんです」

夏では東松とバッテリーを組むことが多かった杉本 純也捕手(2年)の2球種についてこう評する。
「フォークは今まで見たことない軌道でした。通常、フォークはすっと落ちていく感覚なんですけど、東松さんはボールが伸びてくる感覚で、落ちるんです。フォークなのに、速くて、落ちも鋭くて、これは打てないなと思いました。カットボールは本当に速くて、途中までストレートにしか見えなくて、手元で曲がっていきます。捕りづらいほど良いボールでした」

大きな武器を持って迎えた高校最後の夏。自慢のストレートに加え、決め球を習得した東松は自信をもって大会に臨んだ。3回戦の旭野戦では5回8奪三振、無失点のスタート。4回戦の愛産大工戦では完封勝利。5回戦の名経大市邨戦では温存のため、登板はなかったが、準々決勝の愛工大名電戦に備え、投球に手応えを感じていた。しかし……。
「10割とまでは言えないものの、順調に調子は上がっていたんですが……」

この試合で東松は制球を乱し、2回途中、7失点。コールド負けで夏を終えてしまったのだ。東松の実力を発揮できなかったのには事情がある。実はこの試合、享栄の正捕手、控え捕手のほとんどが怪我で出場できなかったのだ。東松の速球と変化球をまともに捕れる捕手がいなければ、投球の組み立てができない。それでも東松は「自分はエースとして背番号1をつけています。捕手がアクシデントで代わっても、それでも動じずに投げていれば勝てたと思いますし、自分の実力不足だと思います」と敗戦の責任を背負った。

甲子園で前田と投げ合う、という目標は叶わなかった。しかし、世代屈指の左腕としての評価に変わりはなかった。
「2、3年目で2ケタ勝利、将来はメジャーに」

夏の大会が終わってすぐに、東松はドラフトに向けて始動した。
「落ち込んでいる暇はないので」

課題として取り組んだのは、
「コントロールをよくしていきたいと思いました。自分は抜け球、無駄球が目立つので、少ない球数で勝負できるようにしたいです」

東松快征(享栄)

東松は再びフォームの微調整を始めた。最後の夏まではセットポジションで投げていたが、ドラフト前にはワインドアップで投げていた。
「今は時間があるので、自分に合った投球フォームを探す時間なのかな、と思っています。ワインドアップのときは本当に良いときがあります。だけど、夏まで投げていたセットポジションだと制球が安定します。プロ入りするまでに正解を見つけていきたいです」
理想は圧倒できるボールをコントロールよく投げること。そこを突き詰めていた。

試しに取材で撮影した投球映像を見せてみた。東松にとって「良い感覚」とは何だろう。
「今日はあまり調子が良くなかったですね。なぜかといえば『肘が下がったな』とか、思っていたから。何かしら意識している時は良くないときなんです。調子が良いときは、何も思わず、体が勝手に前に進んでいく感じ。ハマったという感覚なんでしょうか」

体作りにも余念がない。東松の父・宏典さんは重量挙げの元日本チャンピオンで、家にはウエイトトレーニングができる器具が揃っている。高校に入ってから本格的に着手し、スクワットで150キロほど、デッドリフトは210キロ持ち上げる。正しいウエイトのやり方は父から学んだ。
「本当に難しくて、食らいついてやっている感じです。」

東松はウエイトを筋力アップだけではなく、故障を防ぐためにも大事なトレーニングだと考えていた。

「入寮するまでがしっかり下積みする時期だと思っている」

前田悠伍と東松快征

プロで活躍する準備をしっかり整えて、ドラフトに臨んだ東松。1位指名は叶わなかったが、それでも上位指名を勝ち取った。

目標を実現した東松に対し、3年間見守ってきた大藤 敏行監督は「課題に向かってしっかりと取り組める子」と評価する。18年8月から享栄の監督に就任して、上田 洸太朗投手(中日)、竹山 日向投手(ヤクルト)、菊田 翔友投手(中日育成)に次いで4人目となるが、他の3人と違ったのは絶対にプロになるという思いだ。
「なんとしてもプロに行きたい。絶対に行く。その気持ちは4人の中では一番でした。だから本人に言うんです。プロにいけなかったらどうするんだ?と聞いても、絶対にプロに行けます!と。」

確信が持てるだけのアピール、実力を身につけた証拠だろう。それを実現するだけの努力も重ねてきた。

ライバル・前田はソフトバンク1位。高校生投手唯一のドライチだ。9月に行われたU-18ワールドカップでの快投も東松はしっかりチェックした。
「流石だなと思います。自分以上の投球ができています。負けたくない思いが一層強くなりました。前田は素晴らしい投球をしますけど、自分も素晴らしい投球ができるようにしたい。前田は自分を高められる存在。プロにいっても、一生ライバルだと思っているので、ともに高めあっていきたい。そして試合で投げあっていきたいですね」

2人ともパ・リーグ。2軍も同じウエスタン・リーグ。1年目から投げ合う機会はあるだろう。

プロ入り後の目標も、明確だ。
「1年目から一軍登板、そして2、3年目で二桁勝利。将来的にはメジャーに行きたいです」
非常に高い目標だ。大藤監督は「プロに入れば、壁がぶつかる時期があると思います。今のようなプロに行きたいと思ってコツコツと取り組んできた気持ちは忘れてほしくないですね」と語る。
大藤監督が言う通り、東松は憧れを実現させられる意思の強さがあるはずだ。この1年の彼の取り組みと成長から私は確信を持っている。

取材・文/河嶋宗一(編集部主筆)

<年末特別企画・ドラフト指名5投手の成長物語>はこちら
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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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