通算17本塁打誇る天理のスラッガー・内藤大翔「目指している部分は一緒」元Jリーガーの父は目標の存在【後編】
3年連続のセンバツ出場が有力な天理で不動の4番に座っている内藤 大翔内野手(2年)。昨年のセンバツでは全試合で3番スタメン出場を果たし、昨秋の公式戦では8試合で打率.433、2本塁打、10打点の活躍を見せた。その結果の裏には、様々な努力が隠されていた。
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チャンスで打てる打者へ
内藤 大翔(天理)
戸井 零士が主将となった新チームは中村 良二監督の言葉を借りれば、「力のないチーム」で、「最初は思い通りいかない部分もあった」と内藤自身も感じていたという。それでも、「日が経つにつれて、自分たちでも分かるくらい力がついてきたので、キツいとか思い通りいかないということよりも、上手くいった時の楽しさの方がよく感じました」とやりがいを感じながら取り組んでいた。
さらに新チームでは4番に定着。中学時代からの先輩である瀨を目標にしてきたと話す。
「自分の中では瀨さんのようなチャンスで一本打てる打者を目標にしてずっとやっています。チャンスで回ってきたり、他の投手からも人一倍警戒されるので、そういうところでプレッシャーを感じる部分もあったんですけど、その中でも天理の4番を打たせてもらっていることの面白さを感じました」
秋の公式戦では長打力と勝負強さを発揮し、チーム一の打点を稼いだ。2本塁打も戸井と並んでチームトップの数字である。実力を発揮した秋を内藤はこう振り返る。
「確率の部分ではまだまだ課題は残るんですけど、チャンスで一本打つというか、打点を挙げるというところでは、しっかりと役割を果たせていた方かなと思っているので、自分の中では打つべきところで打てたということは良かったと思います」
近畿大会で4強入りしたことで、センバツの出場は確実となった。今年は昨年と違って、怪我もなく練習を積めている。冬場のテーマについては次のように語っている。
「自分の中では広角に逆方向にもホームランを打てるような打者になりたいという目標があります。それを実現するためにフィジカルを今までよりも一回りも二回りも大きくすることを目指しています。また、この時期はどうしても個人の目標に行きがちなので、その中でチーム力をどう高めていくかであったり、チームのこともしっかり考えながら今年の冬はやっていけていると思います」
打撃では、「遠くに飛ばそうと力が入ってしまっている部分があるので、自分が一番楽な姿勢からしっかり振るような、力を抜くことを一番大事にしています」と中村 剛也(西武)の動画を参考にしながら脱力を意識して取り組んでいるという。
就寝前の「読書タイム」でメンタル強化
内藤 大翔(天理)
また、内藤は4番打者だけでなく、ムードメーカーとしての一面も持つ。マネジャーから「チーム一のポジティブ」と称される内藤は守備中やベンチ内で人一倍声を出している。無安打に終わった昨秋の近畿大会準々決勝の市立和歌山戦では、「俺のために勝ってくれ」と発言して、周囲を和ませた。こうした発言は意図的に行っていると話す。
「元々はネガティブだったので、そういうふうに考え込んでいたら、自分がダメな時にどんどんダメになってしまうのですが、それだとチームがいい方向に向かないと思ったので、ポジティブになる本とかを読んで、自分の思考を変えていこうと思って、今はポジティブな発言を意識して言うようにしています」
就寝1時間前には読書の時間を設け、野球にプラスになると思ったものはどんどんグラウンド上で還元している。実力だけでなく、精神的な面でも内藤はチームに欠かせない存在だ。
元Jリーガーの父・就行さんからは、「人と一緒ではダメ。何事も一番を目指せ」と言われて育ってきた。プロ野球選手を目指している内藤にとって、「やっている種目が違う中でも目指しているプロという部分は一緒」と父は目標の存在になっている。
中学時代までは父に試合を観にもらうことは少なかったそうだが、高校で試合に出るようになってからは観に来てくれる機会も増え、試合後にはほぼ毎日のように電話をしてくれるまで応援してもらえるようになったという。今年のセンバツは家族をはじめ、日頃からお世話になっている人に感謝の気持ちを伝える場所にするつもりだ。
「春のセンバツに出場できると思うので、そこで必ず去年の先輩方のベスト4以上の成績、日本一を獲って、今まで支えてもらった人に感謝の気持ちを結果として表せるように頑張ります」
高校通算17本塁打の強打者が力を発揮すれば、昨年以上の結果も十分に狙えるはずだ。センバツでは内藤のバットから目が離せない。
(記事:馬場 遼)