目次

[1]わずか1か月半で7キロのスピードアップ
[2]150キロ到達。そして夏の甲子園へ



 遠くからキャッチボールの様子を見ていると、すらっとしたシルエットから鋭いボールを投げ込む大型投手が1人。「今年の3年生は良い投手が沢山入学してきた」と愛工大名電・倉野監督は語っていたが、この大型投手・寺嶋 大希はその筆頭だろう。

 最速147キロを計測する真っすぐを軸に、三振を奪う力投派投手である寺嶋。甲子園は未経験だが、その能力の高さはプロのスカウトからも注目されている。そんな寺嶋はいかにしてプロ注目投手へ成長を遂げたのか。

わずか1か月半で7キロのスピードアップ


 「去年から副部長先生が寮の厨房に入ったので食事がおいしくて、おかげで入学してから体重が5キロ増えました」

 愛工大名電では身長は月1回、体重は毎日計測しており、自分のスペックは把握済み。寺嶋のサラリとした受け答えから取材は始まった。

 寺嶋の野球人生の始まりは小学3年生。「長野は軟式野球が少なくて、逆にリトルの方が人気で人も沢山いたので」ということから安曇野穂高リトルに入団。この時からピッチャーとしての第一歩も踏み出した。

 中学生になるとそのまま安曇野穂高シニアへ硬式を継続。中学2年生の時には、全国大会を経験するなど、徐々に力を付けてきた。しかし「変化球やコントロールは駄目で、レベルの高い選手には打たれていました」と当時を振り返った。

 ただ、この時に愛知や三重のチームとの練習試合をすることが増えたことで、愛工大名電の関係者に寺嶋の投球が目に留まり、入学へと繋がっていた。寺嶋も「元々県外志向は強かった」ということもあり、迷いなく愛工大名電へ入学を決めた。

 135キロを計測する速球派投手として愛工大名電の門を叩いた寺嶋。練習を積み重ねるなかで、わずか1か月半で寺嶋の最速は142キロまで急上昇。このスピードボールが首脳陣に評価され、1年生ながら寺嶋はベンチ入り。入学時から大きな期待を寄せられることになった。

 「ケガ防止という意味でも、愛工大名電ではチューブを使ってストレッチをやりますが、そのおかげで自然とインナーマッスルが鍛えられてきたことが大きいと思います。
 あとはボールの使い分けです。重たいボールや軽いボールなど、色んな道具を使ったことで、速く腕を振る感覚が身についたことで、球速が上がってきたと思っています」

 愛工大名電では投手陣に、チューブを使って十分に肩回りのストレッチを終わらせたのち、キャッチボールの最初に3種類のボールを使わせる。使っているのはソフトボール、160グラムの通常よりも重いボール。そして110グラムの通常より軽いボールの3つだ。

 ソフトボールを投げるのは距離にして10メートルほどだが、握力やリリースの力など強化するためにも使用。そこから距離を離しながら160グラム、110グラムの順番でボールを使って、ある程度投げ込んだら普通のボールを使ってキャッチボールに入っていく。この練習を取り入れることで、腕を速く振る感覚を養うとともに、腕を速く振るために必要な筋肉の強化もしている。