第659回 ZETT『ネオステイタス』開発者に聞く「理想のスパイク選び」2018年03月19日

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【目次】
[1]姿を現した「進化の最先端」
[2]「重量」と「耐久性」と「見た目」がスパイク選びの3大要素+α
[3]ハイスペックなスパイク機能をフルに引き出すために

 2018年2月21日。革新的な野球スパイクが発売された。これまでの野球スパイクの印象を一変させるビジュアル。そして軽さと瞬発性能と履き心地。いったい、どのような発想からこのスパイクは生まれたのか。現場を重視し続けた開発者が語る製作秘話、そして「理想のスパイク」に出会うためにすべきこととは――?

姿を現した「進化の最先端」


ZETT『ネオステイタス』開発者の廣畑健一郎氏

 「『なんすかこれ!?』『やばっ』。実際にモニタリングをした際にそういう声がよく聞かれました。実際、店頭に並んだ時に目立たないとまず手に取ってもらえません。そういう意味では、今までにないスパイクのビジュアルがまずあって、さらに今までにない設計が施されている今回のスパイクに対して『やばっ』という声は嬉しい反応でした」

 そう語るのは『ZETT』ブランドでおなじみのゼット株式会社ベースボール事業部開発部の廣畑健一郎氏である。目の前に置かれているのは約2年の開発期間を経て、この2月より発売が開始された埋め込みスパイク『ネオステイタス』。ベロが短く、履き口も薄いそれは、ソールに埋め込まれている刃がなければランニングシューズと見間違うほど斬新なビジュアルである。テスト履きした選手が一目見て「やばっ」と驚くのも無理はない。

 「ネオステイタスシリーズは“進化の最先端”をコンセプトに開発されています。開発のきっかけはカジュアルな靴や他競技の靴を見たことです。以前アメフトの試合を個人的に見に行った際、靴が脱げないようにテーピングでぐるぐる巻きにしているている選手が多数いたのは、かなり衝撃的で選手にとって足とスパイクの一体感が如何に重要かということを改めて実感しました。また、サッカーのスパイクなどは最先端の技術が取り入れられていることが多く、野球にもプラスになる技術を取り入れようと発想したのです」

 廣畑氏はもともと営業だった。四国で13年、北陸で5年。長い営業経験を経て開発部に異動。営業時代は数多くの高校を回り、選手や監督から話を聞いた。そういった現場の希望と、他競技でも求められているニーズ、そして駆使されているテクノロジーが合致した。その結果生まれたのが今回のネオステイタスなのだ。

 「今回の最新作は、履き心地を普通のランニングシューズに近づける、つまり、あらゆる方向にダッシュ力をもたらすために足首の可動域を最大限広げられることを目指しました。見た目の新しさもそうですが、履き口が薄いのも、ベロが短いのもそういった意図が込められています。


ZETT『ネオステイタス』

 まず薄い履き口。実際は足首まわりのスポンジを薄くし、位置を下げているのですが、これが今回最も苦労した点でもあります。足首の可動域が広がっても、脱げやすくなっては意味がないので、スポンジの厚みと位置を微調整するとともに、かかと内側にマイクロファイバーを内蔵しシューズとの密着度を高めました。

 またベロの長さにしても動きやすさを求めるあまり、短かすぎれば足首部を保護できなくなり微妙なバランスが必要となります。最終的には試作をして検証する以外、解決策はなくこれまで何度も試行錯誤をくり返してきました」。

 さらに軽量化と耐久性も突き詰めた。野球のスパイクは本来、アッパーは素材をカットし、縫製して形成する。だが、今回のネオステイタスは1枚のメッシュがベースになっている。そこに軽く耐久性のあるTPU樹脂シートを融着することで、「これまでは片足300グラムで軽いと評価されていた」ところを260グラムにまで軽量化した(26.0cm 1/2足の平均重量)。

 「また、ネオステイタスでは『ArkFive』という高機能刃を採用しています。軽量で地面にかかりやすく、一方で抜けやすい構造になっているのはもちろんですが、スパイク刃としてアッパーの耐久力と最もバランスの取れた耐摩耗性を持たせた設計にしています」。

 廣畑さんは言う。「10グラムの違い、1ミリの違いまで突き詰めた」と。歯はひとつで12~13グラム。靴紐も太くすれば重さが増す。アッパーに融着する樹脂の量によっても重さが変わる。さらに、ベロの長さや履き口の厚み。重さと長さと薄さと…その最高のバランスを探るために、高校生からプロまで数百の声に耳を傾けてたどりついたネオステイタス。この完成形はもはや芸術の域だ。

【次のページ】 「重量」と「耐久性」と「見た目」がスパイク選びの3大要素+α

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