<第74回全日本大学野球選手権大会:中京大5-0近畿大>◇11日◇2回戦◇東京ドーム

 中京大(愛知大学)が近畿大(関西学生)に完勝。2年連続の8強入りを決めた。

 中京大はエースの最速153キロ右腕・髙木 快大投手(4年=栄徳)がコンディション不良でここまで登板がない。しかし、それを感じさせない選手層の厚さでここまで無失点で勝ち進んでいる。

 近畿大戦の先発を任されたのは大矢 琉晟投手(4年=中京大中京)。これまでにリーグ戦での勝利はなく、今春のリーグ戦も4試合にリリーフ登板しただけと実績は少ない投手だが、ブルペンでは155キロを計測したこともある速球派右腕だ。

 この日も最速152キロを計測するなど、スリークォーターから威力のある速球を投げ込み、近畿大の強力打線をねじ伏せる。追い込んでからフォークで空振りを取る場面も目立った。

 7回を投げて3安打無四球8奪三振で無失点。大学での公式戦初勝利が全国大会となった。

「ここで勝つために練習してきたので、リーグ戦では勝つことができなかったですけど、大きな舞台でまず1勝を挙げられてよかったです」と語った大矢。一世一代の投球でチームに勝利をもたらした。

 高校時代は畔柳 亨丞(日本ハム)と同級生。3年春には甲子園4強入りして、大矢も背番号18でベンチ入りしていたが、登板機会はなかった。

 大矢がプロ入りを意識したのは高校3年時に畔柳がドラフト5位で日本ハムから指名された時。「高校の時は全然だったんですけど、同級生が指名されたことで刺激になりました」と大学からプロを目指すことにした。

 大学でも2年生の7月に右肘の手術を経験。その間に投げるためのメカニクスを研究し、地道な努力を重ねたことで高校時代よりも球速を14キロアップさせた。進路はプロ志望を明言しており、この試合で評価を大きく上げたことは間違いない。

 8回から登板した磯部 祐吉投手(2年=享栄)の印象も強烈だった。サイド気味のフォームから自己最速を3キロ更新する153キロをマーク。2三振を奪い、打者4人を完璧に抑え込んだ。

「YouTubeで大勢投手(巨人)が東京ドームで投げている姿をよく見ていて、それをイメージして投げることができました」という磯部。このまま順調に伸びていけば、大勢のような投手をイメージできる。

 高校時代は東松 快征投手(オリックス)がエースとして君臨。「高校の時は東松が絶対的なエースで、僕もそれに負けじと『いつかは背番号1を奪ってやる』と思っていましたし、コーチからも発破をかけられてやってきたので、ここまで成長できたのも、東松のおかげでもあると思います」と語る。

 試合を締めた左腕の沢田 涼太投手(4年=享栄)も高校時代は竹山 日向投手(ヤクルト)の控え。高校時代は日の目を浴びなかった投手が実力を伸ばして、全国トップクラスの投手陣を形成している。

 打線も2試合で12得点と好調。プロ注目の打者である3番中堅の秋山 俊外野手(4年=仙台育英)は5回裏に適時三塁打を放つなど、3打数2安打1打点と結果を残した。

 今大会は6打数5安打3打点と大当たり。「バッテリー中心に0で抑えてくれているのが中京の野球で一番良いことだと思うので、その結果、打線も良いリズムで入れていると思います」と秋山は言う。

 エースが投げない中でも投打が噛み合っている中京大。55年ぶりの優勝も現実味を帯びている。