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投手優勢の時代がやってくるか 過去10年に見た高校野球の傾向

2023.05.03

投手優勢の時代がやってくるか 過去10年に見た高校野球の傾向 | 高校野球ドットコム
大谷 翔平、佐々木 朗希

 高校野球において、春と夏の甲子園の戦い方が変わる。春の甲子園は3月下旬から開幕で気候が良く、地方予選もなく、各チームの投手に疲労がない状態だ。一方で打者は12月から2月まで、実戦を通した練習から離れ、生きた投手の球を見慣れていないので状態が良いとは言えない。そのため、春の甲子園は投手が有利なので投手力が求められる。

 夏の甲子園は、近年改善されているとはいえ、激戦の予選を勝ち抜いてから、甲子園でも体力の消耗するため各チームの投手は良い状態とは言えない。打者は地方予選から生きた投手の球を見慣れて状態が上がっている。夏の甲子園は打者が有利なので打力が求められる。

 ここ10大会の打撃に関するデータは下記になる。

2012年
春、228点 7.35点
夏、400点 8.33点

2013年
春、258点 7.37点
夏、396点 8.25点

2014年
春、262点 8.18点
夏、420点 8.75点

2015年
春、211点 6.80点
夏、466点 9.70点

2016年
春、213点 6.87点
夏、438点 9.12点

2017年
春、333点 10.09点
夏、528点 11.00点

2018年
春、331点 9.45点
夏、504点 9.18点

2019年
春、246点 7.93点
夏、492点 10.25点

2021年
春、242点 7.80点
夏、362点 7.54点

2022年
春、263点 8.48点
夏、480点 10.00点

 上記のデータを見ると、記念大会で出場校の母数が増えた2018年や、新型コロナウイルスの影響があった2021年は、センバツの方が得点率は高い。春の得点率が2017年を機に上昇した要因で考えられるのは、近年の高校野球におけるトレーニングで必須になっている食事だ。実践的な練習が難しい冬の時期は、この食事のトレーニングとウエートトレーニングで身体を大きくする傾向がある。さらに、練習量が多くなるにつれて、摂取カロリーも増えるため、体重も増量できるのだ。

 投手の平均球速が上がっている中で、全体的に見ると夏は約10点になっている。特に2022年の夏の甲子園は、投手の平均球速が134.8キロを記録したにもかかわらず、最高球速は148キロだった。つまり、150キロ台がいなかった大会となった。これは2点考えられる。1点目は新型コロナウイルスによる投げ込み不足だ。2点目は球数制限により、エースピッチャーの育成が変わってきているのだろう。

 爆発的に速い投手がいないことや金属バットのため、夏の場合は多少振り遅れても当たればヒットになっていたのだろう。低反発バットは2022年から2年間の移行期間を経て2024年より導入される。夏は打高の時代は続くが、低反発バットの導入や現在のオリックスやヤクルトのような、ポストシーズンに近い継投策をするチームが増えれば春夏通して打力が下がる確率は高くなると予測される。

 さらに高校野球の場合は、外角球に対して、多少外れていてもストライク判定されることもある。これは定量的には表せない部分ではあるが、打者にとっては大きな要因だろう。来年の春夏の甲子園を見る際に注目してほしいポイントだ。

 新型コロナウイルスに関する練習や実戦が緩和されれば、2019年のように150キロを軽々超える投手が量産されていくだろう。エンゼルス・大谷 翔平投手(花巻東出身)やロッテ・佐々木 朗希投手(大船渡高出身)ぐらいの速球派は、10年に1度ぐらいだが、ヤクルト・奥川 恭伸投手(星稜出身)、中日・髙橋 宏斗投手(中京大中京)レベルは1年に1人は出てくるだろう。そのことも見越して考えると、プロ野球と同様に高校野球も春夏を通して、投高の時代が来る可能性もあるだろう。

(記事=ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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