Column

地に足をつけて戦おう

2015.08.31

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 夏の甲子園も終わり、早くも秋の地区大会を迎える学校も多くなりました。新チームでの初めての公式戦となりますが、夏休みに積みかさねてきたものを発揮し、目標に向かってがんばってもらいたいと思います。
さて今回は野球をする上で、すべての動作の土台ともいえる足元について、いろいろな角度から考えてみたいと思います。

投げる動作の違いを考える

 野球といえば「打って・投げて・走って」という動作を基本としますが、特に肩や肘を使ってのスローイング動作は繰り返し行われるため、正しいフォームで行わないと、ケガの原因ともなってしまいます。ボールを肩より上から投げるオーバーハンドの動作は、バレーボールやハンドボールなどでも見られますが、たとえばバレーボールの場合、そのほとんどがジャンプして、体が宙に浮いた状態でスパイクを打つことになります。

足から手へと伝わった力で投げる

 一方、野球ではそのほとんどが足を地に着けた状態でスローイング動作を行うことになります(ジャンピングスローは例外)。こうしたスローイング動作一つをとっても野球は地面の反力を使い、下肢から上肢へと連動させることで、最終的に手からボールへと力を加える動作であるということがわかると思います。

 たまにウエイトトレーニングで「肩を強くしたい」といって上肢のトレーニングを中心に行う選手がいますが、野球の投球動作を考えてみると、より効果的なのは下肢のトレーニングであり、下肢から体幹へと力が伝わるため、それを支えるだけの体幹筋力、そして上肢のトレーニングというように優先順位を考えて行うことが大切です。

 ちなみに体が宙に浮かんだ状態でスパイクするバレーボール選手にとっても、下肢のトレーニングはもちろん必要です。この場合は地面の反力をいかすことでジャンプ力を高め、着地したときの衝撃をしっかり受け止められるだけの下肢筋力が必要となるわけです。オーバーハンドの動作そのものだけを見ると、野球と比較して下肢との関連性は低いということもいえるでしょう。

下肢のトレーニングはつらいけど

 野球の動作を考えるとどうしても下肢筋力は必要不可欠なものです。もちろん技術練習によっても鍛えられますが、より効率的・効果的に下肢筋力を鍛えるためにはウエイトトレーニングやグラウンドでのフィジカルトレーニングなども必要となってくるでしょう。トレーニングを経験したことのある選手なら実感できると思いますが、下肢のトレーニングはかなりの負荷を強いられるため、身体的にもそして精神的にもかなり大きな負担になります。

「ベンチプレスは好きだけれど、スクワットは苦手。パワークリーンって何ですか?」という選手もいるでしょう。ただ単に筋力をつけるためのトレーニングではなく、野球が上手くなるために行うものであり、ケガを未然に防ぐためのものであると考えて、技術練習と同様に積極的に取り組んでほしいと思います。


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・第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ特設ページ
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[page_break:サーフェスを意識する / その足元はアスリートにふさわしいもの?]

サーフェスを意識する

 グラウンドで練習する場合は基本的に土であることが多いと思いますが、ランニングの内容によってはアスファルトを走ったり、球場によっては人工芝のところもあったりとさまざまな場所で体を動かすことがあるでしょう。地面の表面のことをサーフェスといいますが(特にテニスのコートを表現するときに使われる)、硬さや使っている素材になどによって足への負担が変わってくることがあるので、注意が必要です。

 特に慣れない場所や初めて行く場所での練習や試合は、思いがけず足元に負担がかかっていることも多いので、プレー後はジョギングやストレッチなどで筋肉をほぐす等のクールダウンを行うようにしましょう。アスファルト舗装された地面は、シューズとサーフェスとの摩擦力が高いために滑りにくく、地面からの反発力が高いため、足首やふくらはぎ、膝、腰など体重を支える荷重(かじゅう)関節に負担がかかりやすいといわれています。

その足元はアスリートにふさわしいもの?

地面やシューズの状態は常に確認しよう

 野球の練習ではスパイクを履き、ウォームアップやランニングなどはランニングシューズに履き替えるというチームも多いと思います。さてそのスパイクやランニングシューズですが自分の足に合ったものですか?
長期間の使用によって足底や側面がすり減ったり、破れたりしていませんか?自分に適したランニングシューズの選び方・履き方については以前にもコラムで書きました(参考ページ:ランニングシューズの選び方、履き方)。

 意外と足元は見落とされやすく、少々破れていてもそのまま履いている選手が少なくありません。破れたり、すり減ったりしたシューズは地面の反力をうまく伝達できないだけではなく、側面が破れている場合は力が横流れしてしまいますし、何より足底がすり減った状態でプレーを続けると、足底アーチに悪影響を及ぼし、ケガを引き起こすもとにもなります。足元のシューズについては「消耗品」と考え、機能のしっかりした、破損のないものを使用するように心がけましょう。

 野球は足元が土台となるプレーが多い競技です。足関節の硬さやゆるさといった機能不全はケガの原因ともなりますし、逆に足元がしっかりしていればパワーを生み出すもとにもなるものです。「地に足をつけて」戦うことの重要性を理解して、野球のプレーやトレーニングに活かしてもらえればと思います。

(文=西村 典子

次回コラム公開は9月15日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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