Column

身体を整えるためのフィジカルトレーニング

2014.07.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 この時期、各地で甲子園を目指す暑い戦いが繰り広げられていることと思います。頂点を目指して勝ち進んでいるチーム、そして残念ながら負けてしまい、新チームのスタートを切ったチームとそれぞれの夏を過ごしていることでしょう。試合や練習が続く中、コンディションを調整し、良い状態を保つことは簡単そうに見えて意外とむずかしいもの。
今回はこうした試合期のコンディションを整えるためのフィジカルトレーニングについて、お話をしたいと思います。

試合期にあったトレーニング内容を選ぶ

トレーニングの負荷はやや重め、回数は少なめで

 フィジカルトレーニングとは身体を使ったトレーニング全般を指します。重りを使ったウエイトトレーニングだけではなく、自重を使ったバランストレーニング、敏捷性を高めるためのステップドリル、ランニングストレッチにいたるまでさまざまなものが含まれます。

 特にウエイトトレーニングについては「オフシーズン限定」と考えている人が多いかもしれませんが、トレーニングの内容によっては試合期でも十分に行うことができます。もちろん試合を控えていますので、オフシーズンのように大きな負荷をかけてじっくり身体を鍛えるというよりは、身体に刺激を与え、瞬発力やパワーが最大限発揮できるようなものがよいでしょう。

 特に今までトレーニングを継続して行ってきた場合、試合の時期だからといってトレーニングをやめてしまうと、身体の動きが鈍ってしまったり、思わぬケガにつながってしまうこともあるので注意が必要です。トレーニングは「続けること」が大切です。今までどおり、そして時期にあったトレーニング内容を選択して行うようにしましょう。

試合期のウエイトトレーニングでは

●頻度は週1回~2回程度(ただし週1回では筋力維持レベル)
●トレーニング後の筋肉痛を考慮し、試合前日は避けるもしくは軽い負荷にとどめる
●技術練習・試合での疲労を考えて、オーバートレーニングにならないように配慮する
●トレーニングの種目数を少なくし(3~4種類程度)、新しい種目は行わない(フォームが安定していない)
●扱う負荷は今までどおりかやや重く。回数を少なく設定し、爆発的なパワーを養う
●トレーニングにかける時間は短くする

 といったことに注意して行うとよいでしょう。また疲労回復を目的としたアクティブレストも積極的に取り入れるようにしてみてください(参考ページ:アクティブレストで疲労回復)。

[page_break: 腰背部のトレーニングは短時間でコツコツと]

腰背部のトレーニングは短時間でコツコツと

 体幹を鍛えるために腹筋・背筋のトレーニングを行っている人は多いと思います。体幹が弱まってくると身体の中心軸がブレ、フォームを崩す原因にもなりますので、日々の練習の合間や練習後などにコツコツと続けるようにしましょう。このとき気をつけたいのは腹筋と背筋のバランスです。背筋は立っているだけでも姿勢を維持するために常に緊張し、大きな力を発揮します。

 一方で腹筋は意識してトレーニングを行わないと鍛えられず、姿勢が崩れる原因にもなります。腹筋は背筋よりもやや多めに行うようにしましょう。回数でも構いませんし、負荷をつけても構いません。メディシンボールやバランスボールなどを使ってのトレーニングなども体幹強化には有効ですので、こうした道具が準備できる場合は利用することも一つです。またトレーニングを行った後は使った筋肉をほぐし、ゆるめるよう、ストレッチを行いましょう。腹筋・背筋のストレッチは意外と忘れがちですので「トレーニングした後はストレッチをする」とセットにして習慣づけるようにしましょう。

ランニングは短い距離を数多く

身体の軸を作るためにも腹背筋は重要

 オフシーズン期は心肺機能を高めるための長距離走やインターバル走などを行ったところが多いと思います。試合期はオフシーズンとは違って、試合で活かせるような瞬発的な動きや反応を高めるようなランニングを行うようにしましょう。

 短いダッシュを多く行って身体のキレを作るだけではなく、手を使っての合図でスタートを切る反応系のダッシュ、頭を使って判断力を上げる計算を取り入れたもの(偶数・奇数でスタートを変える、左右にスタートを切る等)、実際の盗塁練習(頭の位置が浮き上がらないように注意してスタートを切る、タイミングを計る等)と、短いダッシュの中にもさまざまなバリエーションが考えられるでしょう。

 こうしたランニングドリルは、技術練習前のウォームアップ時間に組み込んで行ってもよいと思います。短い時間で汗をかいて身体の中を温め、そこから技術練習へと入っていくことはケガ予防の観点からもオススメしたいところです。

 試合前だから強度の高いトレーニングをするのはちょっと・・・と思う場合でも、試合にあわせたフィジカルトレーニングを行うことによって、身体のコンディションを整え、競技パフォーマンスを良くすることは可能です。オーバートレーニングには十分に気をつけて、それぞれのチームで工夫してみると試合にも活かせるのではないでしょうか。皆さんの健闘を祈ってます!

身体を整えるためのフィジカルトレーニング

●フィジカルトレーニングとは身体を使ったトレーニング全般のこと
●試合期にあったトレーニング内容を選択して行う
●トレーニング負荷はやや重め、回数は少なめで
●身体の軸がぶれないように体幹を鍛えることも忘れずに
ランニングは短いダッシュを多く行って身体のキレを作る
オーバートレーニングには十分注意して行う

(文=西村 典子

次回、第97回公開は7月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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