投手必見!練習や試合後に意識したいクールダウン
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
甲子園ではセンバツ高校野球が開催され、皆さんの地域では春の公式戦が始まったところも多いことでしょう。それに伴って試合数が多くなると、疲労などによるコンディション不良なども見られるようになる時期です。小さな変化を見逃さず、ケガを予防するように心がけましょう。さて今回は練習や試合後に意識をしたい投手のクールダウンについてお話をしたいと思います。
投手(捕手も含む)は野手よりもより多く投球動作を繰り返すため、試合や練習後のクールダウンについても適切なコンディショニングが必要となってきます。投球練習や試合での登板が終わった後は「肩や肘にいつもとは違った感覚や痛みがあるかどうか」をチェックしましょう。特に気にならない程度であれば通常のクールダウンを行いますが、痛みや触ったときに熱っぽさを感じる熱感がある場合は、患部を氷などで冷やすアイシングを行うようにします。
アイシングの有無によるケアの違い
アイシングの有無に関わらずインナーマッスルのトレーニングは必ず行おう
●アイシングをした方がいい場合
すべての投手にアイシングが必要であるとは限りませんが、痛みや熱感、違和感が残る場合は患部に炎症症状が出ていることが考えられます。この炎症症状を抑えるために患部を冷やすようにします。ただし患部を冷やしてしまうと炎症はある程度抑えられますが、関節そのものの動きが悪くなってしまったり、患部付近の筋肉が冷やされることによって硬くなってしまうといったことも起こります。こうしたメリット・デメリットを理解した上で、アイシングを選択するようにしましょう。また普段からアイシング後のコンディションを把握しておき、アイシングをすると翌日の動きがよい場合は行うようにするといった指標を持っておくようにすると良いでしょう。
●アイシングをしない場合
特に痛みや違和感などがない場合は、必ずしもアイシングをする必要はありませんが、患部のケアはしっかりと行うようにしましょう。特に投球時には腕を前方に振り出す動作を繰り返すため、どうしても肩(上腕骨頭)が前方に移動し、胸筋が収縮して背中が丸まってしまう傾向にあります。まずはそこをエクササイズなどで改善させるようにしましょう。体前方にある大胸筋のストレッチとともに、チューブなどを柱にかけ、利き腕を使って引っ張る動作を行うと、投球動作の動きとは逆の筋肉を多く使うことになって筋バランスの改善につながります。ものを「押す」動作ではなく、軽負荷で「引く」動作のエクササイズを繰り返し行って、背中や肩の後ろを中心に刺激を入れるようにします。また肩関節を安定させるために肩のローテーターカフトレーニング(いわゆるインナーマッスル)も同時にトレーニングするようにします。
投球後のジョギングとストレッチ
投球後は肩や肘のケアだけではなく、下肢や体幹の動きなどもチェックしよう
●全身の血流改善を促すジョギング・ランニング
投球後や試合後には全身の血流を良くするためにジョギングやランニングを行い、疲労物質がより早く分解・代謝されるように体を動かすようにしましょう。このときは息が切れるほどの強い負荷ではなく、話ができる程度の軽いペースでゆっくりとジョギングを行い、体がほどよく温まったところでストレッチを行うようにします。肩や肘に痛みがある場合についても、アイシングによって局所の血流は抑え、疲労回復には全身の血流を促進させることが不可欠です。試合後にまとまった時間がとれない場合は、帰宅後にゆっくりお風呂に入り、湯船につかって全身を温めた上で入浴後のストレッチを入念に行いましょう。疲れたからといってそのまま寝てしまうと、体力的・精神的な疲労の影響が翌日以降も残ることが考えられるので、日々のコンディションを整える上でも毎日の習慣として行うようにしましょう。
●股関節と胸郭の動きをチェック
投球動作では肩や肘への負担だけではなく、下肢や体幹にも疲労が蓄積しやすいことが考えられます。ランニングやジョギング後、もしくは入浴後にストレッチを行う時に股関節や胸郭の動きをチェックしてみましょう。いつもと比べて股関節の動きが制限されていないか、左右差は見られるか、どういった動きの時に硬さを感じるかといったことを確認しながらストレッチを行うようにします。下肢や体幹の柔軟性が著しく低下していると、肩や肘にかかる負担が大きくなり、投球障害につながりやすくなります。ケガを未然に防ぐという点においても、下肢や体幹のチェックは必ず行うようにし、状態が良くない場合は投球動作を控えるようにして、柔軟性回復に努めるなど早め早めの対策を心がけましょう。
(文=西村 典子)
次回コラム公開は4月15日を予定しております。