[1]韓国戦から狂いだした歯車
[2]ビジョンを持った投手起用を
韓国戦から狂いだした歯車

勝ち越しに喜ぶチャイニーズタイペイと吉田輝星(金足農)
こんな吉田 輝星は見たくなかった…。
多くの高校野球ファンがそう思っただろう。
甲子園の吉田 輝星のピッチングはまさに投手の理想形だった。下半身主導のフォームからプロの投手に負けない回転数を誇るストレート、キレのある変化球、けん制のうまさ、間合いのうまさ、とっさの判断が利いたフィールディング。そして人を惹きつけるマウンド裁き。総合力の高さは日本のエースとして担うべき投手だろう。しかしそれは心技体が揃って実現するものである。
登板した宮崎県選抜までの調整はかなり慎重を期していた。吉田は甲子園での疲れを抜く意味で、完全別メニュー調整を行い、大学代表との試合も登板がなかった。万全の調整を行った結果、宮崎県選抜では最速149キロのストレートを投げ込み、吉田も「常時150キロ近く出ていたので良かったと思います」と語る姿は力強く、頼もしかった。
しかし韓国戦の負けから歯車は狂った。チャイニーズタイペイ戦の前の練習では、永田監督は「勝たないと決勝に行けない。スクランブル体制でいきます」と全投手を準備していた。そしてチャイニーズタイペイ戦で、4回表から登板した吉田は1週間前の宮崎県選抜、2日前の韓国戦とは程遠いピッチングだった。下半身から先行する動きではなく、上半身が突っ込む形で、吉田がこだわる「上半身、下半身が連動する動き」ではない。
吉田は「球速もフォームも全部だめでした。フォームは見ましたが、どこが悪いのかわからないまま試合で投げていました」と語るように、負けてはいけない試合で投げさせる状態ではなかったのだ。
吉田は登板した4回裏に決勝点となる失点を与えてしまった。吉田は8回まで投げ続けた。永田監督は「吉田が投げることで、チームに勢いが出る」とその狙いを考えての続投だった。しかし打線はチャイニーズタイペイの先発・王彥程に2安打負けとなった。