無名の県立校が興南に勝てた理由 九州大会出場・具志川商(沖縄)の成長【前編】
第147回九州地区高校野球大会で初出場ながら、東海大星翔(熊本県)を下し初勝利を収めた具志川商。過去秋の県大会ベスト8が最高位だった普通の県立校が、九州の猛者に勝てるほど成長したのは何故か。具志川商ナインと監督を取材してきた。
2020年。全国で唯一春季大会を開催した沖縄県だったが、準決勝戦を前に中止が決定。その後、コロナウイルスで全校が長期的な休校を余儀なくされる中、具志川商の三年生たちは誰一人として夏の大会を諦めていなかった。2020沖縄県高等学校野球夏季大会と銘打った最後の夏、具志川商はベスト8を目前に敗れてしまう。
その後、コロナウイルスの第二波で、新人大会の中止が決定。しかし、現粟國主将を中心に皆が連絡を取り合ってきた具志川商は、モチベーションが下がることなく秋の大会を迎えた。
過去4度阻まれていたベスト4の壁を打ち破る
具志川商ナイン
初戦の名護商工戦。具志川商は3回、狩俣 伊吹、比嘉 力太、伊波 勢加のタイムリーで4点を奪うなど、5回まで6-0と完璧な試合運びを見せ勝利。
続く八商宮工総の連合校戦では、1番上原 守凛の2本の長打をはじめ、伊波 勢加のホームラン、高良 琉空、新川 俊介の三塁打と計5本の長打を含む12安打9得点で快勝。三回戦の美来工科高校戦でも打線が爆発。序盤の3回までに8点を奪う猛攻をみせ7回コールドゲーム。秋通算5度目となるベスト8進出を決めた。
準々決勝の相手は宮古。初回、4番狩俣 伊吹のタイムリーで先制したものの、先発の粟国 陸斗が4回を投げ自責点ゼロながら2点を失い逆転され、この大会初めてリードを許す展開に。宮古の剛腕新里の前に中々加点出来なかった具志川商打線だったが5回、狩俣 伊吹のこの試合二度目のタイムリーや、比嘉 力太の2点タイムリー二塁打などで一挙4点を奪い試合をひっくり返す。
8回、9回にもダメ押し点を重ねた具志川商。粟國 陸斗を継いだ伊波 勢加も1失点と宮古打線を抑え快勝。
過去4度跳ね返されたベスト4進出の壁を、ついにこじ開けたのだった。
初めて興南を倒し決勝進出、そして九州大会の切符を獲得
粟国主将(#6)に駆け寄る具志川商ナイン(興南戦より)
「先発の陸斗も、リリーフの俊介も腕が振れていたからこそストレートが活きた。さらに膝元のスライダーの制球も良かった。」と、女房役の比嘉 力太が振り返った興南戦。
大会屈指の左腕、興南の山城 京平の前に2回以降チャンスらしいチャンスも掴めなかったが2人の投手が踏ん張った。先発の粟國 陸斗が5回を投げ6安打。最少失点で凌ぐと後を継いだ新川 俊介は3安打ピッチング。最終回、興南意地の攻撃を防いだ具志川商。秋季大会過去に2戦2敗していた興南からの初勝利は、初の決勝進出、そして初の九州大会の切符と嬉しい初ものづくしとなった。
組織力で勝負
喜舎場監督「準優勝出来たのは、うちに組織力があったから。それが発揮された秋だったと言えるでしょう。」
高校球児だった自らが白球を追った母校。あのときと変わらないグラウンドで、今度は指導者として立つことになった喜舎場監督。中学のトッププレイヤーが集まる沖縄尚学や興南をはじめとした私学や県立の雄たちに、個々の能力では太刀打ち出来ないことを知っている。それじゃどうするかといったところで、キーワードとしたのが組織力だった。
一人一人が同じ意識を持って束となれるのかどうか。一年生大会ではまだまだ出来なかったナインがその一年後にやってみせた、実りの秋だった。
(取材=當山 雅通)
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組織力+限界突破でNEW具志川商へ!九州大会出場・具志川商(沖縄)の課題【後編】