目次

[1]打撃重視から守備重視に転換した理由
[2]強みを出すならば守備しかなかった

 東東京を代表する名門・帝京。夏の甲子園出場12回、センバツ14回、春夏の合計優勝回数は3回と輝かしい実績を残している。そんな帝京といえば、高校生離れした体格から投手は140キロ連発、野手は本塁打連発なスラッガーがいるイメージが強いのではないだろうか。そんな今年の帝京は従来のイメージとは違う。「守備の帝京」として2011年夏以来の甲子園を目指している。

打撃重視から守備重視に転換した理由


 4月8日・東京都大会3回戦
 江戸川区野球場に登場した帝京ナインは組織的だった。内野手がそれぞれ声をかけあい、次のプレーを意識する意識が見られる。フライが上がれば、カバーする選手が落下地点を指示する。また内野手1人1人の動きが緻密で、無駄がなく、安定した守備を見せていた。どちらかといえば、帝京は個々のタレント力が目立っていたが、組織として勝とうとする気概が見えたのだ。

 粘り強い試合運びで早大学院を下し、4回戦へ駒を進めた帝京。試合後、帝京の前田監督は「今年は選手それぞれ守備を大事にしているんですよ」と答えていた。

 守備に力を入れているのは今年の選手は一発長打を打てる選手がいないため。何で勝つしかないといえば、守備を鍛えるしかないと割り切ったのがきっかけだ。

 守備を重視する今年の帝京の試合運びは、組織的で、団結して勝つ雰囲気が見られ、近年にはない雰囲気を感じられ、前田監督も「これまでとは違う帝京です。組織力で勝っているというところを皆様に感じ取っていただければ嬉しい限りです」と語る。

 これまでずっといろいろな学校、大会を取材してきて、勝ち上がるチームというのは組織力が高いチームだった。個々の力は突出していなくても組織力が高いチームをいつでも自分の力を発揮し、最終的には勝ち上がっているケースを何度も見てきた。



ノックを打つ直原 大典コーチ

 そういう意味で、今年の帝京は例年以上に気になるチームだ。いかにしてその守備力を築き上げたのか。その秘密を探るべく、帝京グラウンドに足を運ぶと、今年の帝京はこう形作られたのかと納得できるものがあった。

 ノックはただのシートノックではなく、走者を置いて行う。守る選手たちは「バントあるぞ!次はこういうプレーがあるぞ!」という声が飛び交う。判断ミスがあれば、前田監督から内野守備強化を一任されている直原 大典コーチから厳しい指摘が飛ぶ。
 守備練習中、常に状況を設定しているので、選手は常に考えなければならない。

 センターを守る大内 智貴主将は「直原コーチが専門的に教えてくれるので、本当に大きいです」と語れば、一塁ベンチ近くで見守る前田監督も「彼は情熱的ですし、早稲田大の野球部出身なので、指摘する声も良いですから、引き締まる」と直原コーチの手腕をたたえ、守備練習の雰囲気について「選手たちは声がよく回ってますよね。次のプレーを想定した声をかけることで、いろいろなケースを頭の中で想定できます。選手が自発的にものを言うようにしているのは、とても良いことです」と目を細める。

 今年の帝京が守備重視の野球に転換した時期は昨秋の都大会が終了してから。前田監督は「一発長打を打てる選手がいないぶん、余分な点数をやれないから、そういう点では守りの練習を例年に比べて多く取り入れました」

 二塁・小松 涼馬は「昨年と比べて打撃練習よりも守備練習の割合がかなり増えました。その守備練習もただノックするだけではなくて、投内連携や挟殺プレーなど細かいプレーの練習がかなり多くなりました」と内容面も大きく変わった。

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