実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4
沖縄県の名門校・興南を率いる我喜屋優監督に「人間力」をテーマに語ってもらった連載企画。今回は第4弾で実際に練習に落とし込んだ際に、我喜屋監督はどんな方法で選手たちに接するのか、迫ります。
今までの連載記事
第1回:自分自身の基準を持つ「人間力」
第2回:「根っこ」を育てるには
第3回:人間力は掛け算
基準が自分で作れない時はどうするのか?
練習風景
野球における基準を作れるようにするには?言い換えると、「人間力(野球力)」をつけさせるためにはどうしたら良いのか?
「これは、練習中でも何回もタイムをかけるんです。「今のプレーはおかしいぞ、もう一回やってごらん」と「行けたのに、たぶんファーストが取ると思っていたから行けなかったんだろ」と。失敗その瞬間に直してあげるんですよ。
紅白ゲームをやっていても、僕がすぐに(グランドに)降りていく、「今のはおかしいじゃないか、なんで見過ごすんだよ」と、やっぱり失敗を見過ごさないで、その場で修正する・注意をする、その繰り返しです。
もちろん、その場をみんな見ているから、それが伝統として、あるいは3年生が注意されているのを、2年生が、2年生が注意されているのを1年生がと2度と同じ失敗はしないはずですから。自分で経験してもらう、人の経験を自分が見て学ぶということですね」
「人間力」を作るための極意である。失敗の瞬間に、基準を教えてあげるのが大事だと話してくれた。
野球ノートの活用法を我喜屋監督に伺うと、
「「自分がやったこと、監督が言ったことすぐメモしとけよ」人間はすぐ忘れるので、動物だから。これいつも左手にあれば、あのときこう言われたなぁとか。頭の中だけでは限界があるから、これも学校のノート移すのと一緒ですよ」
と話してくれた。
「失敗の瞬間に教える・学ぶ」これも基準を教えて覚えさせるための効率的なやり方である。
[page_break:指導者もしっかりした人間力・根っこが必要]指導者もしっかりした人間力・根っこが必要
興南高校校舎
野球から「人間力」を上げるためには、指導者が基準をきちんと持っている必要がある。そしてその基準を選手に伝えることで、選手の根っこが育つのである。
ここで我喜屋監督が話してくれた野球におけるいくつかの例を紹介したい。
「走塁においては第2リード大きくとって今までのリードより1m先に行けば、ホームでのクロスプレーは50センチの差だからね、「1メートルでもリードしておけばセーフになったでしょ」とかね。走塁の大切さもいまやっています。
バッティングにおいては、逆打ちとかね。
逆打ちに関しては、ランナーがセカンドにいる時は、右方向に流せば、大きなスイングをすれば、ライトフライでもタッチアップできるし、もちろん抜ければホームまで行けるし、ゴロでも行けるし。出るランナーをいかに進めるかというのをアウトカウントを増やさないで、たとえアウトカウントを増えても、必ず送っている、「出る、進める、返す」という事が大事だと言っています。
守備に関しても、打球の方向を見て、お互い声を掛け合うとか、「内野外野の間なら外野優先だぞ」とか、ライトセンター間ならセンター中心だぞとか、きめ細かなことも普段練習のときから取り組んでおけば、必ず役に立つから。無駄な練習はないから。無駄な努力がないのと一緒で、必ずやっておけば、そこから反省も出てくるし、チェックもでてくるし、それこそ次の目安も出来てくるしと、小さな成功体験、小さな気づきを沢山積み重ねることによって、気がついたらすごいチームになっている」
「野球は取り組んだあとに、気が付かないとだめなんですよ。あっこれだ!というそれが小さな成功体験なんですね」
皆さんは、もうお気づきだろう。野球の話をしているが、大事なポイントは「人間力」と「PDCA」なのである。始めは指導者が「根っこ」作りを手伝うが、最終的には選手が「自分自身の基準」を身に付けて、自分でPDCAを回せるようにするのが、我喜屋監督の考える指導者の役割なのだろう。
文=田中 実
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第1回:自分自身の基準を持つ「人間力」
第2回:「根っこ」を育てるには
第3回:人間力は掛け算