部員全員が広報担当

 しかし、杉並が安定して部員を確保できるようになった最も大きな要素は、新入生に奨励している「母校訪問」だ。

 これは、4月に入部してきた新入生が、5月の中間試験前の練習休日期間を

利用して、出身中学や出身クラブチームを訪ねて、「杉並高校野球部で頑張っています」「杉並高校の野球部で楽しくやっています」ということを伝えに行き、元気な姿を見せる行事である。


ノック中の様子

 この「母校訪問」によって中学生たちに杉並高校野球部の魅力を伝えることができる。また現役生が、生の声で話し、元気な姿を見せることによって、「杉並は良さそうだな」と思わせる効果は絶大である。さらには、中学の指導者たちも、教え子が高校で元気で楽しく野球をやっている姿を見たり、聞いたりすることで「送り出してよかった」と思えるのだ。

 この「母校訪問」により、「この子だったら杉並に送り出してあげよう」「この選手ならば、杉並で活躍できるだろう」と指導者たちは杉並を薦めることになる。また、選手のタテの繋がりもできていき、それが中学校のチームとのつながりにもなっていく。

 公立校の場合は、私立校のように「広報担当」などの肩書で、部員スカウト担当がいるわけではない。杉並では部員そのものが広報担当となって、その魅力を伝えているのである。

 また、杉並では野球部の「公式インスタグラム」を開設している。マネージャーたちが普段の練習や試合の様子などをまめに動画で撮って配信していている。こうした取り組みも今の時代としては大きな部員獲得要素となっている。

これらの動画は、夏休みに中学3年生を対象として実施される体験練習会でも紹介される。撮影するマネージャーたちも、「より魅力的な動画を配信していこう」という思いで、撮影にも熱が入るという。また、撮りながら「どうしたら、より魅力的に映るのか」工夫しているという。これもまた、大事な広報活動と言っていいであろう。

心をそろえる

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