【甲子園】1回戦 明豊 vs 北海
140キロは脅威ではない…。両チーム合わせて30安打飛び出た北海、明豊のレギュラーが証言する全国トップレベルの打撃の基準
<第105回全国高校野球選手権記念大会:北海9ー8明豊(延長10回サヨナラ)>◇10日◇1回戦◇甲子園
北海(南北海道)が5対7で迎えた9回裏に追いつき、10回裏に9番・大石 広那捕手(2年)の適時打で明豊(大分)にサヨナラ勝ちを収めた。
今大会、1回戦17試合と2回戦1試合の計18試合が行われ、140キロ超えが34 人。140キロに行かなかった投手でも130キロ中盤〜130キロ後半を当たり前のように出している。140キロに達しただけでも「すごい」と言われていた時代と比べると、明らかにレベルが高くなっているが、それと同時に、確実に打者のレベルも上がっている。
140キロどころか140キロ中盤の速球を投げても打者には「脅威」にはならないことを、北海vs明豊の一戦が示したようだった。
北海は春の全道大会も優勝。この夏の南北海道を制した。明豊も3年連続で夏の甲子園出場を果たし、安定的に実力を発揮するまでになっている。お互い140キロを超える速球を投げる投手を有しているが、どちらも15安打を放った。
明豊の中山 敬斗投手(3年)が最速143キロ、森山 塁投手(3年)が141キロ、野田 皇志投手(3年)が142キロを出した。北海も大型右腕・熊谷 陽輝投手(3年)が143キロ、147キロ右腕・岡田 彗斗投手(3年)がリリーフで登場し、最速143キロをマークした。
ともに持ち味は発揮していたと思う。ただ、それ以上に両チームの打撃が良かった。さらに、どちらも守備力が高い選手を揃え、全国トップレベルの強豪校と思わせた。
野手は140キロ台の直球にどう感じているのか。9回裏に同点打を放った北海の3番・今北 孝晟内野手(3年)は「自分は速さは感じません。少し速いかなと感じるぐらいです。いつも速い球に対しての練習をしているので、慣れています。タイミングを少し早めて打っていって、変化球にも対応する形です」と答えた。
4番・熊谷も「自分も140キロぐらいだと速く感じません。自分は前のチームで広島ドラフト1位指名を受けた斉藤 優汰さん(苫小牧中央)の速球を見ているので、それ以降は脅威ではないです」と151キロ右腕の斉藤の速球を打席で見たことで速球に対する適応ができた。
先制打を放った明豊の木下 季音外野手(3年)は「自分は変化球を狙って、ストレートは反応で打っています。140キロぐらいならば、狙い球にしないと打てない速さではないので、変化球を待っている感じです」と答える。
勝利したものの、北海の岡田は投手としては悔しい内容に終わった。
「ストレートは140キロ中盤もでていて、勢いは悪くなかったと思います。でも甘く入ったところに行けばしっかりと打たれるし、南北海道大会では打ち取れた球も打たれたりして、やはり甲子園は甘くないなと感じました」
甲子園の厳しさを痛感したが、フォーム、制球力が大きく破綻していなかったので、立て直しは可能だろう。岡田は「今日の反省を生かして次の試合で結果を残したい」と意気込んだ。
サヨナラ打を放った大石は明豊に打たれたことに驚きはなく、あっさりとしていた。
「打たれた球は、やはり甘いコースで打たれても致し方ないというものでした。南北海道大会では甘くても抑えられたものはありますが、甲子園はそこを逃してくれないなと。でもしっかりとコースをつけていたり、変化球が低めに決まっていれば抑えられると思います」と、8失点しながらも、次戦へ向けてのヒントを探っていた。
明豊、北海の全国トップレベルの強豪校になると、140キロ台の速球を投げる投手を複数擁し、甘く入った球はしっかりと打ち返せる打撃があり、打てる根拠を持っている。新チームが始動している球児たちにとっては高いレベルかもしれないが、こういうレベルの学校もあることを知ってほしい。
戦った2チームに実力差はほとんどなかった。月並みの表現になるが、少しだけ北海の執念が上回ったのだと思う。