試合レポート

専大松戸vs作新学院

2022.10.25

剛速球だけではない!必殺カーブで強力打線・作新学院を翻弄した151キロ右腕、専大松戸・平野の凄み

専大松戸vs作新学院 | 高校野球ドットコム
平野 大地(専大松戸)

<第75回秋季関東地区高校野球大会:専大松戸4-3作新学院>◇25日◇準々決勝◇県営大宮公園

 今大会準々決勝の注目度は他の地域と比べても群を抜いている。専大松戸(千葉)vs作新学院(栃木)と県内を代表する実力校同士の対決は1点差の好試合となった。

 1回表、作新学院は4番・武藤 匠海内野手(2年)の適時打で1点先制。専大松戸も3回裏、4番・吉田 慶剛捕手(2年)の適時打で同点に追いつく。

 5回表、作新学院は1番・高森 風我外野手(2年)の適時三塁打と、3番・磯 圭太内野手(2年)の犠飛で3対1と勝ち越す。

 反撃したい専大松戸は、7回1死一塁から持丸監督が「上位打線につなぐに欠かせない9番打者」と高く評価する9番・宮尾 日向内野手(2年)がつないで安打を放ち、2死となったが、「非常に良い打者」と評価する2番・清水 友惺外野手(1年)が同点適時三塁打。そして3番・中山 凱内野手(1年)の勝ち越し適時打で逆転に成功する。この1点を守りきり、専大松戸がベスト4入りを決めた。

 専大松戸のエース・平野 大地投手(2年)の投球ぶりが光った。秋の県大会準決勝では最速151キロをマークし、延長11回、173球を投げた影響により、調整が遅れた。まだ完全に仕上がっていないながら、この試合に標準を合わせて調整をしてきた成果を結果に結びつけた。

先発マウンドに登ったのは大型左腕・渡邊 翼投手(2年)。持丸監督は「相手打者は左打者が5人いるので、いけるところまでいければ」と送り出された渡邊は3回途中まで1失点。その後を受けて平野が登板する。

 直球の状態が県大会準決勝が10であれば、この試合は半分程度。常時137キロ〜144キロと控え目で、平野も「まだ仕上がり途中」だという。

 作新学院打線の初戦の戦いぶりを分析し、「ストレートに強い打線だと思ったので、変化球で勝負することを決めました」と語るように、直球が本調子ではなくても、変化球中心で組み立てができるのが平野の強みでもある。120キロ前半の縦横のスライダーの切れ味が良く、容易にカウントが取れて、追い込んでからもスライダーで三振を奪っていった。さらに「打ち取るために投げに行った」と140キロ前後の回転の良い直球で勝負していくこともあった。さらに平野自身も良かったと振り返るのが、90キロ〜100キロ台のカーブだ。

 打者の手元で大きく落ちていくカーブで、ミート力の高い打者が揃う作新学院打線を手玉に取った。平野は「今日はカーブが本当に良かったです。だから作新学院打線を抑えることができたと思います」と手応えを実感していた。

 変化球主体の投球を組み立てをするには、しっかりとコントロールできる術が必要となる。平野は「この秋からストレートが強い打者、ストレートを狙っている打線に対して、変化球で勝負できる組み立てができるようになりました」と勝てる投球ができるようになっていた。

 もちろん変化球ばかりではなく、9回表には「ストレート中心でいけると思った」と常時140キロ前後・最速144キロの直球で圧倒。結局、6.2回を投げて6奪三振、3四死球、2失点の力投で、チームを関東大会ベスト4に導いた。

「目の前の1勝を勝ち取ることを目標にしています」と目標を語った平野。

 平野の持ち味や、相手打者の傾向をつかんで粘り強くリードした正捕手の吉田に対しても「うまくリードしてくれたと思います」と女房役に感謝していた。

「配球に関してはバッテリーに任せています。だから本人たちに聞いてください」と選手の自主性を委ねているところも、平野の「野球脳」の高さを発揮させているのだろう。

 ただの剛速球投手ではないテクニシャンぶりをみせた平野。あとは剛速球を投げられる体の状態に戻ることを願うだけだ。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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