関東一vs健大高崎
関東一が健大高崎相手に予想外の5回コールド勝ち、冬場のトレーニング、打撃強化の成果を発揮
本塁打を打つ秋葉(関東一)
<春季関東地区高校野球大会:関東一10-0健大高崎(5回コールド)>◇22日◇準々決勝◇栃木県総合運動公園
関東一(東京)vs健大高崎(群馬)の一戦。両校は、ともに機動力野球で2010年代前半に全国で活躍した。2005年頃から練習試合で交流を深め、現在に至るが、お互いの野球スタイルを学んできたという。
今年はともに強打がウリのチームであったが、勝負は序盤で決まった。
1回表、1番・柳瀬 冬和外野手(3年)が左前安打で出塁。2番・須藤 彪内野手(3年)が鮮やかな犠打でチャンスを作ると、3番・井坪 陽生外野手(3年)が右中間を破る適時二塁打で1点を先制する。さらに、4番・増尾 己波内野手(3年)の中前適時打で1点を追加すると、5番・秋葉 皓介内野手(3年)の本塁打で、この回一気に4点を先制する。
2回も、1番・柳瀬の安打から2番須藤が右中間をあっという間に破る適時三塁打を放つと、プロ注目の井坪がレフトスタンド上段に飛び込む2ラン本塁打を打ちはなって、7対0とした。その後も、エラーや4番増尾の適時三塁打で10対0とした。
エース左腕・桝川 颯太投手(3年)は直球は130キロ前後ながら、スライダー、カーブ、チェンジアップなどを高低に投げ分け、健大高崎の強力打線を無失点に抑え、なんと5回コールド勝ちで勝利を収めた。
10対0。これは米澤監督にとっても驚きの試合展開だった。
「もっと少ない点数で競った試合展開になると思っていました。今回は左腕・加藤 達哉くんを予想して、右打者を並べました。予想と違ったのですが、初回の点のとり方は良い点のとり方だったと思います」
昨年秋、関東一は都大会ベスト4で敗退したが、当時と比べメンバーの体格も大きくなり、打球も鋭くなっていた。米澤監督は「選手たちは冬場に一生懸命練習をしていました」と目を細める。
2試合連続本塁打を放った秋葉は「秋の悔しさが大きく、あと少しで甲子園を逃しました。夏では絶対に甲子園に行くために、冬場のトレーニングを行ってきました」
本塁打を打つタイプではないと思った秋葉だが、別人のような打者になるため、筋力トレーニングに励み、技術力アップに努めた。その結果、スイングも鋭くなり、高校通算本塁打も10本に達した。さらに守備でも都内でハイレベルな遊撃手へと成長した。
これで2年連続の準決勝進出。米澤監督は1つでも多くの公式戦ができることは選手の成長につながると考えている。ハイレベルな選手を揃える山梨学院相手にも関東一の野球を発揮する。
関東一のドラフト候補スラッガーが高校通算27号。ポイントは「フルスイングをしなくても遠くへ飛ばすこと」
本塁打を打つ井坪陽生(関東一)
<春季関東地区高校野球大会:関東一10-0健大高崎(5回コールド)>◇22日◇準々決勝◇[stadium]栃木県総合運動公園[/stadium]
今年の関東一の顔といえば、スラッガーの井坪 陽生(ひなせ)外野手(3年)だ。
177センチ、85キロとガッシリした体型。特に下半身の太さが別格だ。八王子シニア時代はU-15代表に選ばれ、主軸打者として活躍した。関東一でも1年秋から4番打者として出場していた試合を見ていたが、長打力はあるものの、なにかもっさりした印象で、対応力が欠けるタイプだった。
約1年半で見違えるような打者に成長している。第1打席は右中間フェンス直撃の二塁打を放ち、さらに第2打席は内角を捌いて弾丸ライナーの2ランホームラン。一瞬、レフトライナーかと思われたが、そのまま伸びてスタンドインしていった。これで高校通算27本塁打となった。本塁打性の大ファウルもあったが、とにかく打球が速く、金属バットを持たせては危険と思わせるほどだ。
井坪はスイング軌道にこだわってきた。「スイングする時、内側から出すことを意識しています。1、2年生の時はそれが徹底できていませんでしたが、だいぶそれができつつあります」と手応えをつかんでいる。
スイング軌道を修正したことで「フルスイングをしなくても、効率的に力を伝えて、打球を飛ばす」ことができるようになった。フルスイングを意識するあまり、無駄な力が入ると、スイング軌道の乱れ、始動の遅れにつながる。軌道をコンパクトにし、無駄な力が入らないようにすることで、的確に球を捉え、打球を遠くへ飛ばすことができている。
また、井坪は引っ張りすぎず、逆方向中心の打撃を心がけ、右方向へ飛ばすことも意識している。この日の二塁打はそれが生きた結果で、本塁打はコンパクトスイングから生まれたものだった。近年、関東一から高卒プロ入りした選手は石橋 康太捕手(中日)がいるが、石橋の高校3年と比較しても負けていない。
投手としても140キロを超える速球を投げる井坪。攻守ともにパワフルなポテンシャルを秘める逸材は、準決勝以降でも更なるパフォーマンスを披露する。
(記事:河嶋 宗一)