試合レポート

國學院久我山vs創価

2019.07.28

国学院久我山、29歳尾崎監督の下で28年ぶりの甲子園出場!

 ノーシードながら5回戦を除き全てコールドで勝ち上がってきた創価と、早稲田実東海大菅生といった優勝候補を相次いで破ってきた国学院久我山が、西東京代表の座をかけて対戦した。
 朝降っていた雨も上がり、猛烈な暑さの中、日曜日の神宮球場は、2万1000人の観客の熱気に包まれていた。
 国学院久我山は長身の高下耀介創価は左腕の古川風勝とエースが先発のマウンドに立った。序盤は国学院久我山がそつのない攻撃で主導権を握った。

 1回表、国学院久我山は二死後、3番・神山福生が右前安打で出塁すると、すかさず盗塁。すると4番の宮崎恭輔が右前安打を放ち、神山が一気に生還して先取点を挙げた。
 さらに2回表、6番・坂口純哉が四球、7番・中澤知之の犠打、8番・伊藤佑真の中前安打で一死一、三塁とする。ここで9番・青木友宏は1ボール2ストライクからの4球目をスリーバント。打球を見て三塁走者がスタートするセーフティスクイズで国学院久我山が1点を追加した。果敢なスリーバントであることに関して尾崎直輝監督は、「失敗したら監督の責任ですから」と腹をくくる一方で、セーフティにしたのは、場合によっては、一塁走者に対する送りバントになってもいいという思いがあった。

 この2点を先制された後、創価のエース・古川は落ち着きを取り戻した。国学院久我山に高下は、3回まで走者を出しながら得点を与えない。
 4回裏創価は、4番・中山竜星が中前安打で出塁すると、5番・松田優斗が送り、6番・古川のバントは内野安打となり、7番・古林健太のスクイズで、創価が1点を返す。決勝戦だけに、創価も堅実な試合運びだ。
 とはいえ、創価の2点目は豪快に勝ち取る。6回裏、この回先頭の4番・中山が、初球をレフトスタンドに叩き込む本塁打で創価は同点に追いついた。

 7回表、国学院久我山の攻撃では、打球が全て遊撃手・谷藤大二郎のところに飛んだが、1本が内野安打になったものの、他の打球は軽快にさばき、試合の流れを創価の方に持っていく。
 一方国学院久我山の高下には、「しんどそうな雰囲気がった」と、尾崎監督が言うように、中盤やや苦しそうな投球になったが、粘り強い投球で得点を与えない。

 こうした緊迫した試合で怖いのは、失策と四球である。8回裏創価の先頭打者は当たっている中山。高下は中山を三ゴロに打ち取ったものの、三塁手が一塁に暴投し、無死一塁。中山は松田の犠打で二塁に進んだものの、高下が踏ん張り無失点で切り抜け、同点のまま、9回の攻防を迎える。

 9回表国学院久我山は8番・伊藤、9番・青木が続けて四球で出塁する。1番・西川新のバントで伊藤は三塁で刺され失敗に終わったが、2番・岡田和也は中前安打の中前安打で二塁走者・青木が還り勝ち越し。なおも一死一、二塁から西川は三盗に成功。4番・宮崎の中前安打で還り、2点差に広げた。

 9回裏創価の攻撃はあっさり二死。しかし猛暑の中で力投する高下にも疲れの色が伺える。創価の1番・大野匠の中前安打に続き、2番・島本康平は四球。それでも3番の宮原光夫の打球はセンターへ。国学院久我山の中堅手・西川が落ち着いて捕球して試合終了。国学院久我山が28年ぶり3回目の優勝を決めた。

 創価はノーシードながら投打に安定した力を発揮し、決勝戦まで勝ち上がったが、最後は力尽きた。それでも決勝戦でもリリーフのマウンドに立った森畑侑大や、再三好守をみせた遊撃手の谷藤、2番、3番を任された島本、宮原ら、力のある1、2年生がおり、新チームも楽しみなチームだ。

 一方、国学院久我山は強豪復活を告げる28年ぶりの夏の甲子園だ。「28年前って1歳の時ですからね」と29歳の尾崎監督は笑う。東京で20代の監督が優勝するのは珍しい。6年前に監督に就任したころは、生徒と雰囲気がほとんど変わらず、やや頼りなさも感じた。しかし、わずか6年の間であっても、いろいろな経験をして、指導者として成長していった。

 「監督の顔色をうかがうようなチームにはしたくない」という尾崎監督は、「好きこそものの上手なれ」という言葉を好み、自主性を重んじ、得意なところを伸ばす指導で選手の力を引き出していった。神宮球場で校歌を歌うのも今回が初めてであったが、目標は甲子園で校歌を歌うこと。甲子園での活躍を通して、東京の高校野球に新たな風を起こしてほしい。

(文=大島 裕史

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会西東京大会
■開催期間:2019年7月6~7月26日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会西東京大会】
■展望コラム【西東京を制すのは東海大菅生か日大三か?それとも新鋭が現るか?戦力を徹底分析!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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