試合レポート

大宮東vs市立川越

2019.07.26

今年は守備型のノーシード大宮東が準決勝へ!

 前の試合で豆田泰志(2年)擁するAシード・浦和実業を下し、勢いに乗るDシード・市立川越と、同じく最終回あと1球まで追い込まれながら、そこからの4連打でDシード・上尾に逆転サヨナラで勝ち上がってきたノーシード大宮東との一戦は、ロースコアの接戦となる。

 まず、大宮東は前の試合を全く同じスタメン、一方の市立川越もほぼ同じだが、前の試合5番に入った左の二井谷賢人(3年)に代え、右の谷島大稀(3年)を起用する。このあたりは、大宮東が頭からエース島村は来ないと読んでの起用であろう。

 実際先発は、市立川越はエース左腕の和田光(3年)、一方の大宮東はエース島村ではなく、左腕の河内瞬(2年)が登板し試合が始まる。

 初回、市立川越は今大会初先発、大宮東・河内の立ち上がりを攻め、先頭の高橋龍之介(3年)が四球を選び出塁する。続く杉晴斗(3年)の所で市立川越ベンチは、ランエンドヒットのような形を取るが、結果は最悪の三振併殺となり、河内を助けてしまう。

 先制したのは大宮東であった。

 2回裏、この回先頭の島村がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く尾島翔也(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。二死後、8番・河内が右中間を破るタイムリー二塁打を放ち1点を先制すると、さらに続く橋本詞温(3年)もレフト前ヒットを放ち二死一、三塁とチャンスを広げる。ここで、1番・佐藤亮太(2年)がレフト前タイムリーを放つなど、大宮東が幸先良く2点を先制する。

 対する市立川越も3回表、すぐに反撃を開始する。二死から1番・高倒れ無得点に終わ橋が四球を選ぶと、続く杉もセンター前ヒットを放ち、二死一、三塁とチャンスを広げる。だが、後続かず。

 すると、大宮東は3回で河内を早くも諦め、同じく左腕の澤田凌太郎(3年)にスイッチする。

 市立川越は4回表も、大宮東・澤田の代わり端を攻め、この回先頭の瀬良潤平(3年)が、ライトフェンス直撃のヒットを放つ。瀬良は当然二塁を狙うのだが、元々ライト島村が後ろに守っていたこと、打球がきれいに跳ね返り、島村の正面に転がってきたこと、島村がピッチャーであり強肩でコントロールも良いこと、この三つが相重なり、瀬良は二塁で封殺される。それでも二死から6番・米永大基(2年)、7番・髭大史(2年)が連続四死球で出塁し、二死一、二塁と再度チャンスを得るのだが、後続が倒れまたも無得点に終わる。


 その後も市立川越の拙攻は続く。

 5回表も一死から1番・高橋がライト前ヒットを放ち出塁するが、牽制で刺されチャンスを逸する。6回表も、一死から、5番・谷島がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く米永も四球を選び一死一、二塁とチャンスを迎える。ここで6番・髭はきっちりと送り二死二、三塁とチャンスを広げるが、後続が倒れこの回も無得点に終わる。

 市立川越打線がこれだけの拙攻をしていれば、相手に流れが行きそうなものだが、大宮東打線もお付き合いをしてしまう。5回から代わった2番手・右サイドの鈴木優作(3年)を攻め、5回、6回と共に先頭打者を出すのだが、送りバントが決まらず、それでも走者を進めるがチャンスにあと一本が出ない。試合は2対0のまま終盤を迎える。

 
 迎えた7回表、大宮東は満を持してエース島村をマウンドへ送る。一方、前の浦和実業戦で同タイプ三田隼輔(3年)や豆田と対戦してきた市立川越打線は島村を全く苦にしない。この回先頭の鈴木がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く高橋もライト前ヒットを放ち、無死一、二塁と絶好の同点機を迎える。だが、2番・杉が 三振に倒れると、続く原田洸斗(3年)も併殺以外であれば、チャンスで当たっている瀬良という場面は続いた。だが、結果は最悪のショートゴロ併殺に倒れるなど、どうしても打線がつながらない。

 皮肉にも8回表、市立川越はその瀬良が左中間を破る二塁打を放ち、無死二塁とチャンスメイクするが、続く谷島が走者を進められず三振に倒れると、後続も倒れ無得点に終わる。

 これだけチャンスを潰していると流れは大宮東に傾く。

 
 8回裏、この回先頭の小河原凱(2年)があわやホームランというレフトフェンス直撃の二塁打を放つと、続く島村がきっちりと送り一死三塁のチャンスを迎える。二死後、7番・鈴木琉聖(3年)が左中間へタイムリー二塁打を放ち3点差をつけ試合を決めた。

 投げてはエース島村が、最終回をきっちりと三者凡退に抑えた大宮東が、再三の市立川越の反撃を凌ぎ切り、結局完封リレーで勝利し準決勝へ駒を進めた。

 まずは、市立川越だが、和田、鈴木の投手陣は3失点とまずまずの結果であり責められない。この日はとにかくこの試合12残塁と打線がつながらなかった。三者凡退は最終回のみであり、初回から毎回のようにチャンスを迎えながら、走塁ミスが出たり、なかなか走者を進められなかったりと1点が遠かった。技巧派左腕2枚をなかなか捉えられず、エース島村を7回まで引っ張り出せなかったのも大きい。これだけチャンスを逃せば勝てるものも勝てない。昨夏のクリーンアップを打っていた高橋・原田・瀬良がそのまま残り、さらに昨夏覇者・浦和学院を一昨年秋に抑えた左腕・和田と投打の柱を多く残した今年のメンバーは、前評判は高くなかったが、元々の経験値は高かっただけに新井監督も密かに上位進出を狙っていたであろう。それだけにこの日の敗戦は痛恨であるが、米永、髭など投打の柱になれる可能性がある選手は残る。市立川越というと代々投手陣は強いが、打線が・・・ということが多いだけに、新チームでは新たに打線の強化に取り組んでもらいたい。

 一方の大宮東はこの日、相手の拙攻にも助けられた部分もあるが、とにかく投手陣が粘り強く投げていた。実はその状態が今大会ずっと続いている。劣勢でも特にエース島村以外の投手たちが良く投げている。本来大宮東というと打のチームという印象が強い。だが、今春からの大宮東は投高打低の状態が続いている。しかもほとんどが継投でそういうゲームに持ち込んでおり、その点は河西監督の継投術ありきなのだがが、唯一、打撃戦となった埼玉栄戦は満を持してエース島村が先発した試合であり、9点も奪っているが、実はチームとして放った安打は7である。少ないチャンスで島村がことごとく満塁本塁打を放つが、島村自体はかなり打たれた試合であった。つまり、今年の大宮東の打線は決して強力ではないが、集中打が出るといったイメージであろうか。とにもかくにも、ノーシードから準決勝まで勝ち上がった大宮東だが、次の相手は強打のBシード・山村学園だ。しかも、前の試合でエース和田朋也(3年)は一切登板していない。島村のようなタイプは山村学園打線が最も得意とするタイプであり、この試合も継投は必須であろう。大宮東としては序盤から島村以外の投手がどれだけ最少失点で抑え、ゲームを作り、好投手・和田に対し、少ないチャンスで長打など集中打が出るか。苦戦が予想されるが、大宮東が勝つとすればこのパターンであろう。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

【広島】広陵は瀬戸内と、広島商は崇徳と夏のシードをかけて激突<春季県大会>

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

【三重】津田学園-菰野、5年ぶりの決勝対決<春季県大会>

2024.04.27

【滋賀】シードの滋賀学園、彦根総合が登場<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!