試合レポート

山村国際vs東農大三

2019.07.22

守乱でMAX145km右腕・飯島一徹の夏が終わる

 やはりというか守備に安定感のないチームはトーナメントでは勝ち上がれない。それはMAX145kmの右腕・飯島一徹擁する東農大三を持ってしても例外ではなかった。

 Bシード・東農大三対打線が好調の山村国際との一戦は意外な展開となる。

 先発は東農大三がMAX145km右腕・エース飯島、一方の山村国際は背番号11の右腕・森田尋也(3年)が登板し試合が始まる。

 山村国際は初回、東農大三・飯島の立ち上がりを攻めたて、先頭の武者が四球で出塁すると、続く羽根田優也(3年)はファーストゴロを放つ。ファーストはまず一塁を踏み(どう見ても一塁ベースは踏んでいた)二塁へ送球したのだが、なぜか一塁はアウトにならず、さらに二塁送球が悪送球となり、オールセーフで無死二、三塁とチャンスが広がり、山村国際にとって願ってもない先制機を迎える。ここで、3番・波田野幹太(1年)がセンターへ犠飛を放ち、あっさりと1点を先制する。さらに、二死後、5番・鈴木也起(3年)はピッチャーへの内野安打を放つ。ピッチャーはボールを捕った時点でセーフのタイミングであったが、間に合わない一塁へ送球すると、その間に二走・羽根田が一気に本塁へ突入する。これがセーフとなり早くも山村国際に2点目が入る。

 対する東農大三もその裏、山村国際・森田の立ち上がりを攻め、一死から2番・堀大翔(3年)、3番・井口真之介(3年)が連続四死球を選び一死一、二塁とチャンスを迎えるが、後続が倒れ無得点に終わる。

 その後は両者凌ぎ合いの様相を呈す。

 山村国際は2回表にも二死から9番・森田、1番・武者の連打で二死一、二塁と追加点のチャンスを得るが、後続が倒れ無得点に終わる。

 一方の東農大三も、山村国際・森田が毎回四死球を出していたこともあり、2回以降、2回裏・一死二塁、3回裏・二死一、二塁、4回裏・一死一、二塁と毎回のようにスコアリングポジションへ走者を進める。だが、ことごとく後続が倒れ無得点に終える。

 山村国際は5回表、一死から1番・武者がライト前ヒットを放つと、すぐさま二盗を試みる。その際キャッチャーの二塁送球が悪送球となり、一死三塁と追加点のチャンスを得るが、ここは東農大三・飯島が踏ん張り後続を抑え無失点で切り抜ける。

 すると今度は山村国際の守備に綻びが生じる。

 5回裏、東農大三は一死から2番・堀がセカンドゴロエラーで出塁すると、続く井口のセカンドゴロも併殺を狙ったセカンドが二塁へ悪送球を放り、一死二、三塁と思わぬチャンスを得る。4番・小島大毅(3年)も四球を選び一死満塁とチャンスが広がると、続く飯島のセカンドゴロの間に1点を返す。


 だが、1点差に迫り、さあこれからという6回表、東農大三守備陣が再び乱れる。

 6回表、山村国際は一死から5番・鈴木がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く馬橋優輝(3年)はセーフティーバントを試みる。すると今度はピッチャーが一塁へ悪送球を放る。ボールが転々とする間に一走・鈴木が長躯ホームインし山村国際に貴重な追加点が入る。

 7回以降は東農大三・飯島が悪い流れを断ち切るべく4者連続三振を奪うなど、意地の投球を見せるが、山村国際・森田も6回以降は与四死球も減り、東農大三打線を1安打に抑えるなど無失点で抑え3対1のまま最終回を迎える。

 迎えた9回裏、東農大三打線が猛反撃を見せる。一死から1番・加納陸(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、二死後3番・井口もレフト前ヒットを放ち、二死一、二塁とチャンスを広げる。ここで続く小島はサードゴロに倒れ万事休すかと思われたが、サードがトンネルをし、二走・加納が本塁生還し1点差となる。尚、二死一、二塁で5番・飯島と絶好の同点機を迎えると、飯島は直球をジャストミートしレフトへあわや逆転サヨナラという大飛球を放つ。飛距離は十分であったが、これがファールとなり万事休す。三振に倒れ試合が終わる。

 結局1点差で逃げ切った山村国際東農大三を制し5回戦へ駒を進めた。

 まず山村国際だが、この日はとにかく森田に尽きる。8四死球を出したこともあり、投球数は150球を超えたが、最後まで変化球のキレもあり、球威が落ちることもなく、東農大三打線を5安打に抑えた。これまで好調であった打線も、好投手飯島から9安打を放つなど、好調を維持している。ただ、この日3失策の内野守備は今後への反省材料であろう。山村国際は今後も森田が軸になるであろうが、元々、毎年同等の投手を数多く有する高校であるだけに、彼に頼り切りになるようなことはしない。対戦相手からすれば、先発投手が誰で来るのか読みづらく、厄介な高校が勝ち上がってきたと思われているのではなかろうか。

 一方の東農大三だが、とにかく秋・春と言われ続けてきたウィークポイントである守備が、夏までに改善されなかったのがすべてだ。本庄東戦でも触れたが、今春終了後の内野コンバートは、それを受けての措置であろうが、即効性があったとは言い難い。いくら飯島、井口と強力二枚看板を持っていても、内野が乱れてしまっては守り切れない。結局この日も4失策と乱れ、敗れた。今大会飯島は決して絶好調とは言えない状態であったが、それでもこの日、タイムリーらしいタイムリーは一本も浴びていない。

 だが敗れた。今大会は、打線が一度も爆発することなく、ここまで来てしまったのも誤算であろう。とにかく、埼玉でトップクラスの二枚を有するBシード・東農大三が早くもここで消えた。これは今大会全体の流れにも大きく影響を及ぼしかねない敗戦となったのは事実だ。守乱は致命的である。これは他のチームにも教訓となる一戦となったのではなかろうか。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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