試合レポート

浦和実vs浦和学院

2019.07.21

浦和実業・豆田泰志、浦和学院を2安打完封

 2年生エース豆田泰志を擁するAシード・浦和実業対今大会ノーシードながらも優勝候補の一角である浦和学院、奇しくも両者は昨秋の市内大会決勝で対戦しており、その時は浦和学院が豆田を攻略し5対2で勝利しているのだが、豆田も一冬を越し別人のように成長している。今回はどうか。4回戦屈指の好カードは前評判通りの壮絶な試合となった。

 まず今大会の浦和学院だが、今春早期敗退したことを受け、打順やメンバーが大きく変わった。まず1番ピッチャーだった下薗咲也(3年)を9番にし、投球に専念させ、1番には今春6番だった2年生の里飛鳥を入れ、小櫻耕介(2年)を6番に上げる。また、昨夏の甲子園組である中前祐也(3年)を3番から2番に、後藤陸人(3年)を2番から3番に変更し、7番に石谷、8番には水戸部を入れる。一方の浦和実業は、今春から不動のスタメンで試合に臨む。

 そして、先発は浦和学院・下薗、浦和実業・豆田と両エースが登板し試合が始まる。下薗は直球のスピードはそれほどないが、制球が良く特に右打者の外角へやや沈む球を武器とする投手だ。一方の豆田は、対照的にまるで吉田輝星のように、回転数の多い直球が武器の投手だ。その直球をこの日は特に徹底的に相手インコースへ投げ込む姿勢を見せた。

 浦和学院・下薗は無難な立ち上がりを見せたのに対し、浦和実業・豆田は序盤、強打の浦和学院打線を抑えてはいるが、フルカウントになることが多く、かなり神経質な立ち上がりとなり、スタミナが最後まで持つのかという懸念が生じる。


 最初のチャンスは、2回表であった。

 浦和実業はこの回先頭の竹内琉生(3年)が、センター前ヒットを放ち出塁すると、さらに、相手の2度にわたるキャッチャーのファンブルで、竹田は一気に三塁まで進む。続く水谷優希(3年)も四球を選び、無死一、三塁と絶好の先制機を迎えるが、後続が倒れ得点を奪えない。

 対する浦和学院は3回裏、この回先頭の水戸部が死球で出塁すると、続く下薗がきっちりと送り一死二塁とする。さらに1番・里もセンター前ヒットを放ち一死一、三塁とチャンスを広げるが、こちらも後続が倒れ無得点に終わる。

 すると浦和実業は4回表、一死から4番・竹内が外角のやや沈む球を完璧に捉えると、打球はレフトスタンドへ飛び込むソロ本塁打となり、1点を先制する。

 先制し勢いに乗る浦和実業は、5回表にも、チャンスを掴む。この回先頭の吉田浩隆(2年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、一死後、浦和学院ベンチは相手打線が三巡目を迎えた所で、タイミングが合ってきたと判断したか継投に入る。2番手・左腕伊藤に対し、代わり端、浦和実業ベンチは2番・松村裕大(2年)にエンドランを仕掛けるがショートゴロに倒れる。6-6-3の併殺かと思われたが、ショートの一塁送球が悪送球となり走者は一気に三塁を陥れ二死三塁とする。ここで3番・長谷川俊大(3年)がライト前タイムリーを放ち貴重な追加点をもぎ取る。

 この2点で少し余裕ができたのか、浦和実業・豆田は5回あたりから、これまでのコースや高さぎりぎりを狙う投球ではなく、ややアバウトに投げたことが功を奏し、前の回から3者連続三振を奪うなどピッチを上げていく。

 対する浦和学院も7回表、無死一、二塁のピンチも美又王寿(2年)、永島竜弥(3年)と必死の継投で凌ぎ、何とか2点差のまま終盤勝負へと持ち込む。

 迎えた最終回、浦和学院に最後のチャンスが訪れる。この回先頭の徳弘渉(3年)が死球で出塁すると、一死後、代打・三奈木もレフト前ヒットを放ち、一死一、二塁とチャンスが広がる。二死後、9番・下薗のカウントはフルカウントとなり、長打が出れば同点の状況を作る。ここで下薗はライト線へあわやの大飛球を放つが、無情にもファールとなり、最終的に凡退し万事休す。

 結局豆田が最後まで浦和学院打線を力でねじ伏せ、2安打完封に封じた浦和実業が、5回戦へ駒を進めた。

 まず浦和学院だが、今春に比べ今大会は打線も力強さを増し、投手陣も絶対的なエースこそ不在だが、頭数は揃いつつある中、あまりに早過ぎる最後を迎えた。何よりオーソドックスな本格派にめっぽう強かった浦和学院打線がこんな姿を見せるとは、と未だ驚きを隠せない。それだけ豆田という投手が特殊なのかもしれないが、そもそも今年のチームは夏だけに限らず苦戦の連続であり、この1年間の成績は燦燦たる結果となった。幸い140km右腕美又は残るだけに、浦和学院ブランドを守るべく、新チームは猛練習を課し、巻き返しを図ってくるに違いない。

 一方の浦和実業は、公式戦で浦和学院に勝った記憶が私にはない。これまでそれぐらい負け続けた相性の悪い相手であったが、ついに殻を破った記念すべき1勝となった。この日はとにかく豆田に尽きる。試合を通してバッテリーは徹底したインコース攻めを見せた結果、4死球、四死球7と多くなったが、それでもバッテリーは最後までブレなかった。何よりこういうビックマッチで豆田が完投したことが収穫であろう。これまで割と大事に使われてきた豆田だが、ここからはフルスロットルであろう。次の相手も好投手和田擁する市立川越と難敵だが、相手にとって自信をつけた浦和実業・豆田ほど怖いものはない。本家・吉田輝星の域まで達することができるであろうか。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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