試合レポート

川越初雁vs久喜北陽

2019.07.12

川越初雁、齋藤降板も乱打戦の末、初戦突破!

 前の試合終盤から雨が降り出した川越初雁球場の第三試合、MAX137km右腕・齋藤眞之丞(3年)擁する川越初雁が初戦を迎えた。相手は粘りが持ち味の久喜北陽だ。試合は戦前の予想に反し、この日の天候同様に荒れ模様の展開となる。

 川越初雁がエース齋藤、久喜北陽は2年生左腕・長濱優心が先発したこの試合、まずは川越初雁・齋藤が落ち着いた立ち上がりを見せる。それに対し、久喜北陽・長濱は初回2四球を与え単打も浴びるなど、いきなり二死満塁のピンチを招くが、後続は何とか打ち取り無失点で切り抜ける。

 先制したのは川越初雁であった。3回裏、川越初雁は二死から齋藤が四球を選ぶと、続く泉谷章人(3年)がレフト越えのタイムリー二塁打を放ち幸先良く1点を先制する。だが、ここからゲームが激しく動き始める。

 まず、久喜北陽がすぐに反撃を開始する。

 4回表、この回先頭の久保田滉己(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、すぐさま二盗を決め無死二塁とチャンスを広げる。さらに続く秋本凌雅(3年)の犠打に対し、ファーストの一塁送球が悪送球となる間に労せず1対1の同点とする。さらに、一走・秋本はすぐさま二盗を決めると、5番・森腰快(3年)も四球を選び、無死一、二塁とチャンスを広げる。続く金丸悠太(3年)の所でのエンドランはセカンドゴロとなり一死二、三塁とすると、ここで7番・巣瀬翔太(3年)、8番・長濱が連続タイムリーを放ち久喜北陽が一気に3対1と試合をひっくり返して見せた。

 だが、川越初雁も5回裏、この回先頭の髙﨑瀬(3年)がライト前ヒットで出塁すると、1番・神木雄生(2年)、2番・土居野憧(1年)も連続四球を選び、無死満塁とチャンスを広げ、長濱をマウンドから引きずり降ろす。代わった島田基(3年)に対し、続く[player]笠井麟[/player](3年)も押し出し四球を選ぶと、さらに4番・齋藤がセンター越えの走者一掃となるタイムリー三塁打を放ち5対3と再度逆転する。さらに続く泉谷も3番手・エース久保田の代わり端でスクイズを決め一気に6対3とする。

 これで川越初雁・齋藤は立ち直るかと思われたが、この日の齊藤はその後も一向に立ち直りの気配が見られない。


 久喜北陽は6回表、二死から6番・金丸悠太(3年)が四球を選ぶと、続く巣瀬が左中間へタイムリー二塁打を放ちすぐに1点を返すと、7回表にはこの回先頭の鈴木啓太(2年)がライト前ヒットを放つと、一死後、死球とインターフェアで一死満塁とチャンスを広げる。ここで4番・秋本は内野ゴロを放ち併殺かと思われたが、一塁送球が悪送球となり6対6の同点とする。さらに、続く森腰が四球を選ぶと、6番・金丸がレフト前タイムリーを放ち、久喜北陽がまたしても7対6と逆転し、ついに川越初雁の大黒柱齋藤をこの回でマウンドから引きずり降ろすことに成功する。

 大黒柱齋藤の降板といよいよ追い詰められた川越初雁であったが、ここから他の選手達が奮起する。

 まずは代わった2番手左腕の福島魁人が8回表をきっちりと三人で抑えると、6回以降、エース久保田の前に沈黙していた打線もついに捉える。この回先頭の泉谷が頭部への死球で出塁すると、続く川名光希(3年)もレフト前ヒットを放ち無死一、二塁とチャンスを広げる。ここで臨時代走である二走・齋藤が相手の隙を突き三盗を狙うと、一走・川名もこれに呼応しダブルスチールを決め無死二、三塁とする。7番・松岡宏典(3年)はファーストゴロに倒れるが、打球が跳ね相手のエラーを誘う。この間に二者が生還し8対7とまたしても逆転に成功する。

 だが、このままでは終われない久喜北陽も9回表、2番手・福島を攻め、一死から3番・久保田、4番・秋本が連続四球を選び一死一、二塁とすると、続く森腰がセンター前タイムリーを放ち8対8の同点とする。

 こうして、もつれにもつれたゲームもいよいよ結末を迎える。

 9回裏、川越初雁は先頭の神木がレフト前ヒットを放つ。続く土居野には最初バントのサインが出ていたが、うまく送れずファール2つで追い込まれる。ベンチはここでヒッティングに切り替えると、土居野は期待に応えライト線へ二塁打を放ち、無死二、三塁とチャンスを広げる。最後は、3番・笠井がレフト越えのタイムリーを放ち粘る久喜北陽を振り切り、サヨナラで川越初雁が初戦を突破した。

 まず、久喜北陽だが、総力戦で好投手・齋藤を攻略し、途中2度逆転するなど持ち味である粘りは十二分に発揮できたであろう。エラーも1つと相手より少なかったが、皮肉にもその1失策が終盤の大事な場面で出てしまった。また、継投もやや後手を踏んだか。5回裏の継投は、その後久保田が一旦ゲームを落ち着かせたことを考えても、できれば無死満塁になる前にエースにつなぎたかった所であろう。だが、久保田はファーストで出場しており、投球練習はできず難しい選択であったことには違いない。新チームではまずは絶対的な柱となりうるエースを育てるべく投手力強化に励んでもらいたい。

 一方の川越初雁も最後に勝利したが決して褒められた内容ではない。タイムリーエラー2つを含む3失策と守備の不安定さは相変わらずであり、エースで4番そして主将の齊藤への依存度も高いままだ。だが、この日は齋藤が崩れた際、他の選手達皆でバックアップしようとする姿勢が見られ、結果勝ち切ったことは今後への収穫となるであろう。この日本来の出来ではなかった齋藤も次戦以降はまた違った投球を見せるはずだ。この日の反省点を洗い出し、修正し、勢いを武器に戦い、齋藤への負担を軽減することが、上位進出への鍵ではなかろうか。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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