試合レポート

八王子vs早稲田実業

2018.07.17

八王子がベスト16へ!野村大樹の高校野球、ここに終幕

 早稲田実vs八王子

 2015年から4年連続で実現した。ここまで1勝2敗で2年前は八王子が勝利し甲子園への切符を掴んだ。今回はどちらが勝利を手にするのか。大注目の一戦を見逃すまいと多くの観客が詰めかけるなか、試合は初回から動く。

 先攻・早稲田実の攻撃を八王子先発・津吹ヒカルが無失点に抑えると、直後の攻撃で1番・越村周が四球で出塁。すると続く2番・芝山武尊はショートゴロに倒れるも、ランナーがエンドランでスタートを切っていたため、一死二塁の先制のチャンスとなる。

 ここで八王子は、3番・初鹿野滉平が抑えられ二死になる。だが、4番・高橋優介が浮いてきた真っ直ぐを左中間に運ぶ三塁打で八王子が先制点をもぎ取る。

 初回から八王子はプレッシャーのかけ方は絶妙だった。早稲田実の先発・伊藤大征が1番・越村の時に初球と2球目を投げた際にイーガルピッチを宣告されている。自分の思い通りの投球フォームで投げられない。伊藤には動揺があったはずだ。その動揺を突き、大事な先制点を取った。

 リードをもらった八王子先発の津吹は、コントロール抜群のサウスポー。ストレートと縦に落ちる変化球を軸に、内と外の出し入れのピッチングで初回、そして3回それぞれで2番・野田優人と3番・野村大樹にヒットを許したが、後続を抑えてリードを守る。

 3回には、1番・越村が右中間を破る三塁打と、早稲田実バッテリーのエラーで2対0とリードをさらに広げた八王子。だがしかし、4回の早稲田実の攻撃。一死から6番・川原崚が甘い変化球をセンターに弾き返すと、続く7番・毛塚悠伸は高めの真っ直ぐをレフトに運ばれ無死一、ニ塁。さらに8番・長谷川航大にセンター前ヒットを打たれ、これで無死満塁とする。

 このピンチで打席の9番・伊藤に投じた初球がバッテリーエラー。急いでボールを拾ったキャッチャー・越村が津吹に返球。
 津吹はそのボールを掴みサードを見ると、ランナーが中途半端な場所まで飛び出していた。これを見た津吹はサードへ送球。だがこれがまさかの悪送球となり、ランナーが生還。1点差に縮められる。

 1点差に詰め寄られ、何とか中押しの1点が欲しい八王子は4回、5回とランナーを三塁まで進めるも、早稲田実から最後の一本が出ず、前半は2対1で試合を折り返す。


 ここまで毎回ランナーを出すも、僅か2点に終わっていた八王子。しかし6回に打線が遂に爆発する。

 この回先頭の7番・安藤大斗がセンター前でチャンスメイクすると、続く8番・黒田将希、9番・武内寛斗が連続でバントヒット。無死満塁の大チャンスが八王子に訪れる。

 1番・越村が抑えられるが、2番・芝山が3球目をライトに弾き返す貴重なタイムリーヒットで1点を追加。続くチャンスに3番・初鹿野が、早稲田実の3番手でエース・雪山幹太の真っすぐを右中間に弾き返す三塁打でさらに3点を追加してこの回一挙4点。八王子早稲田実を一気に突き放す。

 だが、この4点が逆に早稲田実打線の火をつけてしまった。
 7回、右サイドハンドの八王子2番手・武内が二死からまたも2番・野田を四球で出塁させると、3番・野村が打席に入る。ここまでシングルヒット2本に抑えてきた八王子だったが、4球目を捉えられると、打球はグングン伸びて両翼91mある[stadium]八王子市民球場[/stadium]のレフトフェンスを軽々越える高校通算67号本塁打で2点を返される。

 早稲田実の反撃はこれで終わらない。ここまでノーヒットだった4番・生沼弥真人には初球をレフトに弾き返させると、まさかのフェンスオーバー。二者連続のホームランを浴びてたちまち2点差。着実に八王子の背中を早稲田実が追ってきた。

 こうなってくると何としてもダメ押しで試合を決定づけたい八王子。そのチャンスは8回の攻撃にやってきた。
 4番・高橋が四球でチャンスを作ると、5番・松野海舟がキッチリ送りバントを決めて一死二塁を作る。6番・宇田川己夢が三振に倒れるも、続く代打・荒川優生がピッチャー強襲のヒットと8番・黒田の四球で後ろに繋いで二死満塁。

 ここで9番・武内が2球目を一、二塁間へ打ち返す。その打球をセカンドの江本達彦が何とかキャッチするも一塁がセーフとなり、これを見ていた三塁ランナーが一気にホームイン。7対4として試合を決定づける。

 最終回は1番から攻撃だったが、残すアウトは3つ。八王子のベスト16進出はすぐそこに迫っていたが、早稲田実の意地の反撃が待っていた。
 2番・野田がこの試合自身4つ目となる四球を選び、野村が打席に入る。3点差あるが、一発をもらえば点差はたちまち1点。大事な場面で八王子・武内が野村に投じた2球目はレフトの頭上をはるかに越える高校通算68号ホームラン。まさかの2打席連続のホームランで1点差まで縮められる。

 続く4番・生沼にもヒットを許し、早稲田実の勢いに飲み込まれるかと思った。だが、5番・江本を三振に打ち取り二死。そして6番・川原が捉えた5球目はサードへのファールフライでゲームセット。八王子が2年前と同様、早稲田実を破って5回戦進出を決めた。

 試合後、勝利が決まり歓喜に沸く八王子サイドに対して、早稲田実サイドは悲しみに包まれる。その中でも野村は最後まで主将として毅然とグラウンドに立ち続けた。まるでこれこそが主将の立ち振る舞いだと言わんばかりだった。果たして次ステージで野村がどんなプレーを見せてくれるのか、楽しみしておきたい。

 一方勝利した八王子は次戦、専大付との対戦。この勝利の勢いでどこまで勝ち上がるのか。ありんこ軍団の快進撃に今後も注目したい。

(レポート=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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