試合レポート

高松商vs大阪桐蔭

2015.11.16

 

細かく得点重ねた高松商が、大阪桐蔭の長打攻勢を辛くもかわす

高松商vs大阪桐蔭 | 高校野球ドットコム

150キロを計測した高山優希(大阪桐蔭)

 2回に四球の走者を失策で帰すという形で高松商が先制したが、その裏大阪桐蔭もすぐに一死満塁から右犠飛で同点とする。
高松商は11番の右サイドスローの多田 宗太郎君、大阪桐蔭は背番号10の左腕岩本 悠生君で、いずれも控え投手の先発ということもあり、ある程度は点の取り合いが予想されたが、序盤からまず1点ずつ奪い合う展開となった。

 高松商は3回にも1番からの好打順で、安西 翼君が左中間に三塁打で出ると吉田 啓瑚君の中犠飛で帰す。さらに、4回も右前打の美濃 晃成君をバントで送り盗塁もあって三塁まで進めると、相手失策で追加点。5回にも安西 翼君が今度は右へ再び三塁打すると、吉田 啓瑚君が右前打して帰し、なおも三塁まで進めた後、美濃 晃成君の右線二塁打でこの回2点。

 これで、さすがに大阪桐蔭西谷 浩一監督もこの回で岩本 悠生君を諦め、6回以降は細かく投手をつないでいくこととなった。
それでも、高松商はなおも攻めて、7回には安西 翼君の中前打など単打ばかり5本を重ねて2点を追加した。これで、7対1となり、さすがの大阪桐蔭も意気消沈かと思われた。

 しかし、昨年夏の優勝校で今春もベスト4の大阪桐蔭である。その爆発力はすさまじかった。
7回は簡単に二死となった後、中山 遥斗君が三振捕逸で出ると、永廣 知紀君が左前打で続き、吉澤 一翔君が一塁線を強烈に破る二塁打で2点を返す。そして、8回にも簡単に二死となってから、栗林 佑磨君が左前打で出ると、松山 心君の2ラン、さらに代打島野 凌多君も起用に応えて左越二塁打すると、中山 遥斗君も強烈に三塁手を襲ってついに1点差。

 こうなると、やはり大阪桐蔭の迫力はすさまじい。永廣 知紀君も左前打で続いてプレッシャーをかけるが、ここで高松商多田 宗太郎君を諦め、二塁手の美濃 晃成君を急遽マウンドに送り出した。美濃 晃成君は、気持ちを前面に出して何とかここをしのいだが、1点差である。

 序盤から中盤までの展開とは、全く別の試合のようになった終盤、勝負9回の攻防となった。
9回、大阪桐蔭はエースの高山 優希君が登板し、最速150キロを表示しながらあっさり3人で退けだが、2三振の内容もあっぱれだった。そして、その裏1点差、一発もある大阪桐蔭打線だったが、美濃 晃成君は何とかこらえて、1点差を守り切った。


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勝利を決めガッツポーズの美濃晃成(高松商)

 1点が届かなかった大阪桐蔭だったが、試合後の西谷監督は淡々としていた。
「5人の投手が投げましたけれども、それぞれが抑えたことも打たれたことも、来年につながっていくのだと思います。高松商さんは足を絡めて叩きつける打球も鋭く、伝統校らしさと、そこに新しいものも加わっていいチームだなぁという印象でした」と相手を称えていた。

 とはいえ、2012年の連覇に、08年夏14年夏の全国制覇と、近年は高校野球をリードする存在の王者である。来春のセンバツを十分に意識しての余裕も感じられた。

 その大阪桐蔭を何とか下した高松商長尾 健司監督は、「10回いや20回やって、勝てるかどうかという相手です。向こうが高山君できていたら、こうはなっていないでしょうね」と言うが、いずれにしても強力打線を相手に1点差で勝てたことは自信になったといっていいであろう。

 伝統の高松商第1回中等学校選抜野球大会の優勝校であり、春2回、夏2回という全国制覇の歴史を背負い、ストッキングにもその歴史と伝統が刻まれている。
また、第1回中等学校選抜野球大会の優勝メンバーの志摩 定一三塁手が、その後胸の病で倒れ、「俺が死んでも魂が高松商の三塁を守る」の言葉を残して他界する。
その供養のために、高松商は初回の守りに就く前に、三塁ベースに集まり、主将が口に含んだ水を吹きかけて全員で声をかけて供養するという儀式が行われていた。

 甲子園出場の際にも行われ1977(昭和52)年の出場まで続けられていたが、「宗教的な儀式に見える」「遅延行為になる」というような理由で中止された。
それでも、高松商の歴史と伝統は多くの高校野球ファンの脳裏に刻まれている。

 その高松商四国大会を制して、96年以来のセンバツ出場が有望視されるだけに、伝統の「TAKAMATSU」のユニホームを待ち望んでいる人も多いであろう。長尾監督も、「伝統に関しての話は、しょっちゅう言っています。やはり、このユニホーム、このバッグを持っていたら、背負うものは大きいし、責任があります」と、高松商という名の伝統の重さを今の生徒たちにも熱く伝えている。その思いも重なっての、この秋の四国大会制覇だったのではないだろうか。

 そして、四国4商の一角として75年の徳島商、77年の高知商以来の明治神宮大会の決勝進出である。
忘れかけていた“四国4商”を思い出させてくれただけでも、今大会の高松商の存在意義は大きい。

(文=手束 仁

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・第46回明治神宮野球大会 特設サイト

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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