試合レポート

東海大相模vs弥栄

2013.07.26

東海大相模・佐藤、7回2/3失点0の好投

 東海大相模の先発、佐藤雄偉知(2年・右投右打・190/85)の名前が大会誌のメンバー表20人の中にない。それが7回3分の2を投げ失点0と好投した。

 2回戦/慶応藤沢 7回、3安打、11三振、失点0
 3回戦/保土ヶ谷 5回、0安打、7三振、0失点

 過去2試合に先発して12回投げ被安打3、奪三振18、失点0と圧倒的な成績を見れば、もはやエースと言ってもいい。1年のときにストレートが140キロを超え、この試合で与えた四死球はゼロ。これほど安定感があるのに大会誌に名前がないということは、精神的な弱さをショック療法で立ち直らそうという首脳陣の配慮があったとしか思えない。そして、それは現在のところ成功している。

 1回表、高めに抜けたストレートを弥栄の2番古家和樹に右中間に三塁打されるが、後続を内野ゴロに仕留めピンチを切り抜けている。
 もっとも、弥栄の走塁に問題がなかったわけではない。1死三塁で3番西山義和がショートゴロを放ち、古家は本塁で憤死するのだが、この三本間の挟殺プレーで打者走者の西山は一塁から先に進めなかった。古家はできるだけ粘って最低でも西山を二進、あわよくば三塁まで進ませなければならなかった。
 また打者走者・西山の一塁走塁も全力疾走でなかった。古家が三本間に挟まれているのは打球を追っていれば自然とわかるのだから、もっと全力で走り、二塁をうかがう姿勢を見せてほしかった。
 この1回のピンチを切り抜けたあと、8回途中でマウンドを降りるまで佐藤が得点圏に走者を進められたのは3、5、8回の3度だけ。2対0と僅少差だった6回表の守りでは、1死一塁からヒットで出塁した古家が二盗を試みるが、捕手の鈴木篤人(3年・右投右打・168/68)が二塁送球1.96秒という見事な強肩で刺して、ピンチを未然に防いでいる。バッテリーのディフェンスは完璧だったと言っていいだろう。


 打線では小技が光った。3回の先制点こそ8番矢後颯太のソロホームランだが、4回は3番杉崎成輝の死球を皮きりに、相手投手の暴投、4番服部創太のバント安打、6番佐藤大志の右前打で2点加え、勝負を決めた。
 強豪の東海大相模に対し、弥栄は失点4と健闘した。先発した左腕・細川諒太郎は背番号9を背負う、本職は外野手という選手。それが野手投げに見えないほど完成度の高いピッチングをして驚かせた。
 何をもって完成度が高いかと言えば、前の肩が早く開かないというのが最高の長所だろう。この開かない肩が、腕を振ってから一拍遅れてボールが出てくるという第一級の武器をもたらした。6回投げて被安打7、失点4という成績は東海大相模の打撃力を考えればよく投げたというべきだろう。 

 個人技に話を移そう。この両校の中で「ドラフト候補」と呼ばれているのは東海大相模の1番打者、遠藤裕也(二塁手・右投右打・183/86)ただ1人である。外野手、三塁手、遊撃手とポジションを替え、現在の二塁が終の棲家になるかというと、そうはならない。
 古くは松井秀喜星稜)が一塁手から三塁手に、近年では高橋周平東海大甲府)が三塁手から遊撃手にコンバートされているが、これはプロ野球を見据えた配置転換である。プロでやるなら外国人が守ることの多い一塁手より三塁手、また松井のようなホームランバッターが他ポジションから緊急避難することの多い三塁手より遊撃手という具合に、プロボクサーが1つ階級を下げて有利に戦おうとするように高校生や大学生がポジションを替えることがある。この遠藤の二塁転向もそういう監督の配慮だと思う。

 バッティングはリストの強さがひと際目立つ。そのリストの強さが仇になっているときもある。バットを引いて打ちにいく前、バットを煽るような動きが入るのだ。この動きが振り遅れの原因になる半面、第3打席のセンターの頭を越える三塁打のように、長打の原因になることもある。長所と短所を相殺してどちらの要素が多く残されるのか、というのが現在の遠藤の置かれた状況だと思う。

(文:小関順二)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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