試合レポート

川越東vs与野

2013.07.18

苦しんだスローカーブ

 与野は、エースの村上省吾(3年)、川越東は左腕の渡部遥介(2年)が先発する。
村上は制球力、特にスローカーブが持ち味の技巧派右腕で渡部はオーソドックスな左腕である。

試合序盤は川越東ペースであった。初回一死から2番・中村航大(3年)がライト前ヒットで出塁すると、続く高梨公輔(3年)がエンドランを決め一死一、三塁とする。ここで4番・小寺直樹(3年)がセンターへ犠飛を放ち川越東が幸先良く1点を先制する。さらに、4回表にも小寺がショートへの強襲ヒットで出塁すると、続く正木義人(3年)が送り一死二塁とする。二死後、7番・渡部がセンター前へタイムリーを放ち2点目を奪うなど序盤は順調だった。

 だが、その裏、川越東・渡部が与野打線につかまる。この回先頭の大塚忠寛(3年)がレフト前ヒットで二塁を奪う好走塁を見せる。続く小山優貴(3年)の犠打は三塁封殺となるが、その後6番・井上峻介(3年)四球に与えると続く佐々木多聞(1年)にレフト前ヒットを浴び一死満塁とする。ここで、8番・村上にレフト前2点タイムリーを浴び同点とされる。この日の渡部は初回こそうまく立ち上がったが、あまり直球が走らず制球も、もう1つ決まらない。

その後の一死一、三塁ピンチで川越東ベンチはたまらずサードの山本誠也(3年)をマウンドへ送る。だが、山本はこの日一球も投球練習をしていない。元々肩が出来るのが早い方だが、前回同様立ち上がりが不安であった。ところが、ここで与野9番・高橋恭介(2年)は左打席へ移動し2球連続セーフティースクイズを敢行するが、2球とも失敗すると右打席に戻り結局三振。続く加藤大介(3年)もセーフティーバントを狙うが失敗に終わり勝ち越し点は奪えない。


 一方の川越東打線に対し流れを変えたい与野・村上もここでさらに変化をつける。それまで90km台のスローカーブにスライダー、カーブ、チェンジアップといった球種だったが、これにもう一つ70km台のスローカーブを追加する。この球が有効だった。本来スローカーブはストライクゾーンに投げるのが難しいボールだが、彼は7、8割ストライクが入り、さらにそれを高め低めそして内外角に投げ分ける。これはもちろん、高低が広いこの日の審判との相性もあったが、これだけスローカーブが決まると厄介だ。遅い球は飛ばない。このタイプは浦学打線であっても苦労したであろう。そして相手に打ち気がないとみるや120km台の直球をポンと取って来る配球も素晴らしかった。これで川越東打線はパタッと止まってしまう。もちろんそのスローカーブを引き付けて打ちにいっているのだが、焦りもありなかなかうまく捕らえきれない。5回以降1安打、7回から11回まで4イニング連続三者凡退に抑え込まれ防戦一方になる。

だが、そこに立ちはだかったのが山本だった。山本はリリースが小さいいわゆる野手投げからMAX130km中盤を投げる直球が武器だ。しかも、7回以降はテンポも上がり相手に考える間を与えず凡打の山を築く。

試合は川越東・山本、与野・村上両投手の好投もあり延長戦となる。

10回裏を迎え川越東は一人づつ外野守備を動かす。山本はこの回先頭の加藤から三振を奪う。だが、この三振を奪った直後も再び守備変更をする。これで、結果テンポ良く投げていた山本に変な間が出来る。その直後だった。一死から2番・日野玖仁広(2年)にレフト線へ二塁打を浴びる。いよいよ川越東は追い込まれた。続く齋藤将(3年)の打球はセンター前へ抜けそうなセカンド左への打球だった。これを正木が飛びついて止めアウトにし得点を与えない。ビックプレーだった。


 中盤以降村上に完全に抑え込まれていた川越東だが、12回表チャンスが訪れる。一死から渡部がレフト前ヒットで出塁すると続く眞水が送り二死二塁とする。ここで、1番・山本がレフト前へ値千金のタイムリーを放ち1点を勝ち越す。これで吹っ切れた川越東は続く中村もレフト前タイムリーで続きこの回2点を追加。これで勝負あった。

 与野はバックもファインプレーが3つと素晴らしい守備だったが、今日は何といっても村上のピッチングに尽きるであろう。とにかく良く投げた。前の2試合でスローカーブを使っていなかったことを考えても、振り切ってくる川越東のような打線のためにとっておいた秘策であったのであろう。とにかくスローカーブをスタンドまで運ぶのは難しい。だが、12回になり疲れから微妙に制球が乱れた。とはいえ、そこまでの投球は立派だった。あと一歩まで追い込んでいただけに悔しいとは思うが出し切れたのではなかろうか。

 一方の川越東だが、終盤以降はヒットすら出ず防戦一方の中、山本が投打で踏ん張った。
そして守備もこの日ノーエラーと安定している。だが、課題は打撃だろう。昨秋の星野戦同様、スローカーブでバッティングを完全に崩された可能性がある。4番・小寺の状態も心配だ。ただ次戦まで中4日と修正の時間はある。打線の爆発はこのチームのカラーを考えても必須だ。

また今大会、主戦・高橋(尚)がまだ登板していない。彼がピッチングでリズムを作り打線を引っ張っぱるゲームを夏も見ることを期待したい。

(文=南 英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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