試合レポート

汎愛vs関西大倉

2011.07.11

汎愛vs関西大倉 | 高校野球ドットコム

関西大倉の井上も奮闘!

汎愛、苦しみながらも初戦突破

 「ホント、勝てて良かったです」。

試合後、汎愛・井上大輔監督、紙谷主将はそろって同じ言葉を口にした。

それほど、今春府大会準優勝校・汎愛の初戦は厳しいものだった。

初回に1点を先制するも、追加点を挙げられないでいると、重苦しい雰囲気が漂う。6回表に5番・中村の左翼スタンドへの本塁打で1点をもぎ取ったが、すぐさま1点を返された。7回に1点を追加し、突き放しに掛かるが、8、9回の好機を相手の好守備や連続三振で潰すと、最終回、関西大倉の反撃にあったのだ。

 9回裏、先頭を失策による出塁を許すと、右翼前安打で無死・1、2塁のピンチ。ここで、汎愛ベンチは好投を見せてきた背番号「10」糸川を降板させ、エースの鈴木にスイッチしたが、悪い流れは断ち切れず。

二死・二、三塁の局面を作られると、7番・蒲田に中堅へぽとりと落ちる適時打を打たれ、2者が生還。同点となった。さらに、ミスで招いた2死満塁のピンチはなんとか踏ん張ったものの、一時は敗戦がよぎる窮地まで追い込まれた。

 「同点で終わってくれれば、延長になれば持ち直せるだろうと思っていました。なんとか、抑えてくれと、そう思うだけでしたね」

 指揮官の言葉通り、延長に入ると、先頭の中村が出塁、二死・2塁から7番・紙谷が右翼前適時打を放ち、勝ち越し。そのまま試合を制した。

 何とか勝利はもぎ取ったものの、やはり、思うのは夏の大会初戦の怖さである。どれだけ、練習を積み重ねたと言っても、彼らは高校生。あらゆる要素で、心が揺れ、いつもどうりのプレーができなくなってしまう。

それが高校野球なのだ。


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勝ち越しホーム

 「正直、もうちょっと打てると思っていたんですけど、得点が入らなかったのが苦しんだ要因だと思います」と井上監督は言う。6回表に出た5番・中村の本塁打は見事な当たりだったが、特に主軸のバットが湿り、チームは波に乗れなかった。「いつもなら打てるはず」という想いが、やがてプレッシャーになり、彼らは苦しんだ。

  汎愛ナインにとって、今年の夏は例年とは違う。
チームとして初となる決勝進出を果たしたこの春の成績でいろんなものが変わったのだ。『やれる』という自信は、時に、慢心に変わるし、何より、周囲の期待が大会が近付くにつれて肥大化していった。本人らがそう思ってはいなくても、浮つかされてしまうのだ。

 「いつもと違うのは感じていましたね。『汎愛は1回戦では負けへんやろう』っていうのは感じていました。その分のプレッシャーは確かにありました」。

 組み合わせも、彼らを苦しめた要因だ。
 初戦の関西大倉に勝つと、2回戦では今春センバツベスト4の、優勝候補・履正社と当たることになっていた。甲子園出場を狙うなら、倒さなければいけない相手が、一つ先で待っている。意識するなということの方が、難しい話である。

 紙谷はいう。

「抽選が決まってから、みんなが、『履正社倒すぞ、履正社や』っていう気持ちになっていました。その気持ちがあったのが、今日、苦しんだ理由だと思います」

かくして、彼らは苦しんだ。

といっても、負けたわけではない。苦しみながらも、勝ちとったこの1勝が大きな光になる。


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大喜びのスタンドが苦戦を物語る

 「9回裏の守備、あと一打で負けてしまうというプレッシャーはなかなか体験できるものでありません。それを乗り越えたのは大きい。うちは1戦を戦っていますが、履正社は次が初戦です。この経験を生かしたいと思います」

 井上監督は「プラス思考で」と何度も口にし、次戦へ気合を入れた。

 紙谷も続ける。

 「これで気楽に戦える。履正社を倒すことを目標にやってきたので、全力でぶつかっていきたい」

  春季大会準優勝校という結果から、今までは体験したことがなかった「受けてたつ」立場を体験し、苦しんだ汎愛

「挑戦者」へと戻る次戦は、悲願の「打倒・履正社」は果たすつもりでいる。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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